令和5年度 秋期 応用情報技術者試験 午後問題 問11 コンティンジェンシー計画の実効性に関するシステム監査

マネジメントシステム監査

この問題は2023(R5)秋 応用情報技術者 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

学習ガイド

通信販売管理システムのコンティンジェンシー計画を題材に、その実効性を確かめるシステム監査の問題です。計画は策定した後も、定期的な訓練と環境変化に応じた見直しがなければ形骸化するという発想が全設問を貫きます。表1の空欄補充に始まり、監査手続の検討時に考慮すべきリスクを二つ挙げる記述、下線部に対応する監査手続の空欄まで、リスクの識別と手続立案の力が問われます。この記事では、計画の維持という観点から各空欄と記述の根拠を逆算して読み解きます。

この記事で押さえる論点

  • コンティンジェンシー計画の実効性を左右する要素を整理する
  • 監査手続の検討時に考慮すべきリスクを二つ挙げて記述する
  • リスクに対応する監査手続の空欄を目的から逆算して埋める
  • 計画の定期見直しと訓練が監査で確かめる観点になる理由を説明する

問題本文

情報システムに係るコンティンジェンシー計画の実効性の監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

Z社は,中堅の通信販売事業者である。ここ数年は,通信販売需要の増加を追い風に顧客数及び売上が増え,順調に業績が拡大しているが,その一方で,システム障害発生時の影響の拡大,サイバー攻撃の脅威の増大など,事業継続に関わる新たなリスクが増加してきている。そこで,Z社内部監査室では今年度,主要な業務システムである通信販売管理システム(以下,通販システムという)に係るコンティンジェンシー計画(以下,CPという)の実効性について監査を行うことにした。Z社内部監査室のリーダーX氏は,監査担当者のY氏と予備調査を実施した。予備調査の結果,把握した事項は次のとおりである。

〔通販システムの概要〕

通販システムは,Z社情報システム部が自社開発し,5年前に稼働したシステムであり,受注管理,出荷・配送管理,商品管理の各サブシステムから構成されている。稼働後,通販システムの機能には大きな変更はないが,近年の取引量の増加に伴い,昨年通販システムサーバの処理能力を増強している。

情報システム部は,通販システムの構築に際して可用性を確保するために,サーバの冗長構成については,費用対効果を考慮してウォームスタンバイ方式を採用した。Z社には東西2か所に配送センターがあり,通販システムサーバは,東センターに設置されている。東・西センターの現状のサーバ構成を図1に示す。

図1 東・西センターの現状のサーバ構成
図の説明テキスト

東センターと西センターの構成を示すブロック図。

【東センター】

  • 「通販システムサーバ」: 内部に「受注管理」「出荷・配送管理」「商品管理」のブロックを含む。
  • 「ファイルサーバ」: 内部で「日次バックアップ」から下向き矢印で円柱形の「バックアップデータ」を指している。

【西センター】

  • 「バックオフィス系サーバ」: 内部に破線枠で囲まれた「社内システム」があり、その中に「人事給与」「会計」「社内業務支援」のブロックを含む。
  • 下部に円柱形の「副バックアップデータ」がある。

【拠点間の通信】

  • 東センターの「ファイルサーバ」の枠から、西センターの「副バックアップデータ」に向けて矢印が引かれており、矢印の上に「日次でデータ伝送」と記載されている。

通販システムのデータバックアップは日次の夜間バッチ処理で行われており,取得したバックアップデータは東センターのファイルサーバに保管される。また,バックアップデータは西センターに日次でデータ伝送され,副バックアップデータとして,西センターのバックオフィス系サーバに保管されている。

バックオフィス系サーバは,通販システムの構築と同時に導入されたものである。緊急時の通販システムの待機系サーバであるとともに,通常時は人事給与システムと会計システムを稼働させるように設計された。Z社が社内の業務とコミュニケーションを円滑化するために,ここ2,3年の間に新しく導入したワークフローシステムやグループウェアなどの社内業務支援システムもバックオフィス系サーバで稼働させている。なお,Z社ではバックオフィス系サーバで稼働している人事給与システム,会計システム,社内業務支援システムを総称して社内システムと呼んでいる。

〔CPの概要〕

CPは,5年前に通販システムを構築した際に,情報システム部が策定したものである。CPのリスクシナリオとしては,大規模自然災害,システム障害,サイバー攻撃(併せて以下,危機事象という)によって東センターが使用できなくなった事態を想定している。その場合の代替策として,西センターのバックオフィス系サーバを利用して通販システムを暫定復旧することを計画している。

東センターで危機事象が発生し,通販システムの早期復旧が困難と判断された場合には,CPを発動し,西センターのバックオフィス系サーバ上のシステム負荷の高い社内システムを停止する。その後,通販システムの業務アプリケーションやデータベースなどの必要なソフトウェアをセットアップし,副バックアップデータからデータベースを復元する。さらに,ネットワークの切替えを含む必要な環境設定を行い,通販システムを暫定復旧する計画になっている。5年前の通販システム稼働後,CPを発動した実績はない。

〔CPの訓練状況〕

5年前の通販システム稼働直前に,西センターのバックオフィス系サーバにおいて,復旧テストを実施した。復旧テストでは,副バックアップデータからデータベースが正常に復元できること,バックオフィス系サーバで実際に通販システムを稼働させるのに必要最低限の処理能力が確保できていることを確認している。

通販システム稼働後のCPの訓練は,訓練計画に従いあらかじめ作成された訓練シナリオを基に,毎年実機訓練を実施している。具体的には,西センターで稼働中の社内システムが保守のために停止するタイミングで,バックオフィス系サーバに必要なソフトウェアをセットアップし,副バックアップデータを使用したデータベースの復元訓練まで行っている。CP策定以降の訓練結果では,大きな問題は見つかっておらず,CPの見直しは行われていない。

内部監査室は,予備調査の結果を基に本調査に向けた準備を開始した。

〔本調査に向けた準備〕

X氏は,Y氏に予備調査結果から想定されるリスクと監査手続を整理するように指示した。Y氏がまとめた想定されるリスクと監査手続を表1に示す。

表1 想定されるリスクと監査手続(抜粋)
図の説明テキスト
項番 項目 想定されるリスク 監査手続
1 通販システムの構成 ウォームスタンバイ方式なので, 暫定復旧までに時間が掛かる。 a について, 業務部門と合意していることを確かめる。
2 CPの発動 危機事象発生時に CP 発動が遅れる。 b が明確に定められていることを確かめる。
3 CPの訓練 CP 訓練の結果が適切に評価されず, 潜在的な問題が発見されない。 CP 訓練結果の c があらかじめ定められていることを確かめる。

X氏は表1の内容についてレビューを実施した。レビュー結果を踏まえたX氏とY氏の主なやり取りは次のとおりである。

X氏:①今回の監査の背景を踏まえると,ここ数年の当社を取り巻く状況から,CPのリスクシナリオの想定範囲が十分でなくなっている可能性もある。これについても想定されるリスクとして追加し,監査手続を検討すること。

Y氏:承知した。

X氏:CPの訓練に関連して,西センターでの復旧テストの実施時期がシステム稼働前であり,その後の変更状況を考慮すると,CP発動時に暫定復旧後の通販システムで問題が発生するリスクが考えられる。これについても監査手続を作成すること。

Y氏:承知した。監査手続で確認すべき具体的なポイントとしては,通販システムが稼働後に d していることを考慮して, e についても同様に必要な対応ができているか,ということでよいか。

X氏:それでよい。また,現在のCPの訓練内容について,CP発動時に暫定復旧が円滑に実施できないリスクがあるので,それについても監査手続を作成すること。

Y氏:承知した。 f について,最低限机上での訓練を実施しなくて問題がないのかを確認する。

X氏:さらに,通販システムの暫定復旧計画において,バックオフィス系サーバの社内システムを停止することによる影響が懸念されるので,それについても確認しておいた方がよい。

レビューの結果を受けて,Y氏は監査手続の見直しに着手した。

設問と解答・解説

設問1

表1中の ac に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。

(1)

  1. CP訓練
  2. CP発動基準
  3. 環境設定
  4. 機能要件
  5. 評価項目
  6. 目標復旧時間

模範解答

選択肢カ: 目標復旧時間

配点 1

解説

コンティンジェンシー計画策定時において、障害発生からシステムをいつまでに復旧させるかの指標として目標復旧時間が設定されます。

各選択肢の解説

  • ア CP訓練: 計画策定後に実効性を高めるために実施するものであり、指標ではありません。

  • イ CP発動基準: どのような事象が発生した際に計画を発動するかの基準であり、目標時間ではありません。

  • ウ 環境設定: システムを稼働させるための設定事項です。

  • エ 機能要件: システムが実装すべき機能の要件です。

  • オ 評価項目: 訓練結果や計画の妥当性を評価するための項目です。

(2)

  1. CP訓練
  2. CP発動基準
  3. 環境設定
  4. 機能要件
  5. 評価項目
  6. 目標復旧時間

模範解答

選択肢イ: CP発動基準

配点 1

解説

障害発生時に計画を開始するための条件としてCP発動基準をあらかじめ明確にしておく必要があります。

各選択肢の解説

  • ア CP訓練: 計画策定後に実施する訓練活動そのものです。

  • ウ 環境設定: システムを稼働させるための設定事項です。

  • エ 機能要件: システムが実装すべき要件です。

  • オ 評価項目: 結果を評価するための項目です。

  • カ 目標復旧時間: 復旧の期限を示す指標です。

(3)

  1. CP訓練
  2. CP発動基準
  3. 環境設定
  4. 機能要件
  5. 評価項目
  6. 目標復旧時間

模範解答

選択肢オ: 評価項目

配点 1

解説

CP訓練の実施後、その実効性を確認し計画を見直すために評価項目を設定し、結果を客観的に評価することが求められます。

各選択肢の解説

  • ア CP訓練: 訓練活動そのものであり、見直しのための項目ではありません。

  • イ CP発動基準: 発動のための基準です。

  • ウ 環境設定: システム稼働に必要な設定です。

  • エ 機能要件: 実装する機能の要件です。

  • カ 目標復旧時間: 復旧の期限を示す指標です。

設問2

本文中の下線部①について,監査手続の検討時に考慮すべきリスクを二つ挙げ,それぞれ25字以内で答えよ。

(1)

模範解答

システム障害発生時の影響が拡大するリスク

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 監査の背景を正確に理解し、考慮すべきリスクを完全に記述している。
  • 1: リスクの内容は概ね捉えているが、やや不正確な表現が含まれる。
  • 1: 監査の背景から読み取れる内容の一部のみが記述されている。
  • 0: リスクの内容が不十分で、意図が伝わらない。
  • 0: 的外れな内容が記述されている。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 指定された字数以内で完結に、論理的な日本語で記述されている。
  • 1: 文意は通じるが、表現にやや不自然な部分がある。
  • 0: 文章のつながりが不自然である。
  • 0: 主語と述語の対応がおかしいなど、文法的な誤りがある。
  • 0: 全く論理をなしていない。

解説

監査の背景として、ビジネスの拡大に伴う重要性の高まりが挙げられています。したがって、システム障害発生時の影響が拡大するリスクが考慮すべき点となります。

高得点のポイント

  • 監査の背景および経緯から、システム障害時の影響の拡大について正確に読み取っていること

  • 指定された文字数内で過不足なく要約されていること

(2)

模範解答

サイバー攻撃の脅威が増大するリスク

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 監査の背景を正確に理解し、考慮すべきリスクを完全に記述している。
  • 1: リスクの内容は概ね捉えているが、やや不正確な表現が含まれる。
  • 1: 監査の背景から読み取れる内容の一部のみが記述されている。
  • 0: リスクの内容が不十分で、意図が伝わらない。
  • 0: 的外れな内容が記述されている。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 指定された字数以内で完結に、論理的な日本語で記述されている。
  • 1: 文意は通じるが、表現にやや不自然な部分がある。
  • 0: 文章のつながりが不自然である。
  • 0: 主語と述語の対応がおかしいなど、文法的な誤りがある。
  • 0: 全く論理をなしていない。

解説

監査の背景として、外部からの攻撃による被害の懸念が挙げられています。したがって、サイバー攻撃の脅威が増大するリスクが考慮すべき点となります。

高得点のポイント

  • 監査の背景および経緯から、サイバー攻撃の脅威の増大について正確に読み取っていること

  • 指定された文字数内で過不足なく要約されていること

設問2は,正答率がやや低かった。"今回の監査の背景を踏まえると"という前提から監査を実施することになった経緯が記載されている箇所を読み取って,正答を導き出してほしい。

設問3

本文中の de に入れる適切な字句を,それぞれ15字以内で答えよ。

(1)

模範解答

サーバの処理能力を増強

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 指定された字句を完全に正確に抜き出している。
  • 1: ほぼ正しいが、軽微な誤字・脱字がある。
  • 0: 誤った字句を抜き出している、または未解答。

解説

システム環境の変化に対応するため、本文中ではサーバの処理能力を増強したことが述べられており、これが正解となります。

高得点のポイント

  • 該当箇所から指定字数以内で正確に字句を抜き出していること

(2)

模範解答

バックオフィス系サーバ

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 指定された字句を完全に正確に抜き出している。
  • 1: ほぼ正しいが、軽微な誤字・脱字がある。
  • 0: 誤った字句を抜き出している、または未解答。

解説

処理能力を増強した対象やシステム環境の構成要素としてバックオフィス系サーバが該当します。

高得点のポイント

  • 該当箇所から指定字数以内で正確に字句を抜き出していること

設問4

本文中の f に入れる適切な字句を,25字以内で答えよ。

模範解答

ネットワークの切替えを含む必要な環境設定

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 指定された字句を完全に正確に抜き出している。
  • 1: ほぼ正しいが、軽微な誤字・脱字がある。
  • 0: 誤った字句を抜き出している、または未解答。

解説

机上訓練では確認できない具体的な実機操作として、ネットワークの切替えを含む必要な環境設定が求められます。コンティンジェンシー計画発動時の手順と現在の訓練内容を比較して導き出します。

高得点のポイント

  • 該当箇所から指定字数以内で正確に字句を抜き出していること

設問4は,正答率がやや低かった。机上では訓練が実施できない内容を解答しているケースも散見された。コンティンジェンシー計画発動時の手順と現在のコンティンジェンシー計画の訓練内容とを比較することで正答を導き出してほしい。

設問5

本文中の下線部②について,どのような影響が懸念されるか。25字以内で答えよ。

模範解答

社内の業務とコミュニケーションに支障をきたす。

採点基準(配点 2点)

知識・理解度(内容)(1点)

  • 1: システム停止による業務やコミュニケーションへの影響を的確に記述している。
  • 1: 影響の一部のみが記載されており、網羅性にやや欠ける。
  • 0: 影響の内容が不十分である。
  • 0: 的外れな影響が記述されている。
  • 0: 無解答である。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 指定された字数以内で論理的に分かりやすく記述されている。
  • 1: 文意は通じるが、表現にやや不自然な部分がある。
  • 0: 文章のつながりが不自然である。
  • 0: 文法的な誤りがある。
  • 0: 全く論理をなしていない。

解説

下線部に関連する懸念事項として、システム停止により社内の業務とコミュニケーションに支障をきたすことが影響として挙げられます。

高得点のポイント

  • 対象システムが停止した際の業務への影響が明確に示されていること

  • コミュニケーションの阻害という観点が含まれていること