令和5年度 秋期 システム監査技術者試験 午後II 問題 問1 データ利活用基盤構築の監査(論述)
この問題は2023(R5)秋 システム監査技術者 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
社内外のデータを集めて競争力を高めるデータ利活用基盤の構築を、システム監査人として論じる午後Ⅱの論述問題です。模範解答は公表されないため、この記事では設問ア・イ・ウの要求を分解し、採点基準が求める論述要素を読み解くことに重点を置きます。講評では、個別システムのデータ整備や旧システムからの移行に話を縮めた答案、データセキュリティに偏り複数システムから集めるデータの品質リスクに届かない答案が目立ったと指摘されており、全社横断とデータ品質の視点を保つことが合否を分けます。
この記事で押さえる論点
- 全社横断のデータ利活用基盤の概要・目的・構築理由を自組織の文脈で描写する
- 収集データの定義不整合や偏りが招く品質リスクを具体的に想定して論述する
- 想定したリスクに直結する監査証拠と監査手続を対応付けて構成する
- データセキュリティ偏重を避けデータ品質の観点を論述の主軸に据える
出題情報
- 出題
- 2023(R5)秋 システム監査技術者 午後II 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
企業などの組織を取り巻く環境の変化が激しくなる中,ビジネス,サービスの高度化,又は新たな価値創造などによって,競争力を高めていくことがますます求められている。そのためには,社内外の様々なデータを収集し,活用できるデータ利活用基盤の導入が重要である。一方で,収集するデータの定義が整合していなかったり,偏りなどがあると,誤った分析結果になったり,判断を誤ったりするおそれがある。このような状況を踏まえて,システム監査人は,データ利活用基盤が適切に構築されているかどうかを確かめる必要がある。本問では,システム監査人として,データ利活用基盤の構築に際して想定するリスク,及びリスクに基づいて適切に構築されているかどうかを確かめるための監査手続を具体的に論述することを通じて,データ利活用基盤の構築を監査するための知識・能力などを評価する。
問1では,個別システムにおけるデータ整備や旧システムからのデータ移行などについての論述が目立った。
問題本文
問1 データ利活用基盤の構築に関するシステム監査について
情報通信技術が進展し,消費者,利用者などのニーズが多様化する中,企業などの組織は,ビッグデータを利活用して経営課題を解決したり,新たなビジネス,サービスを創造したりすることに取り組んでいる。例えば,定量的データだけではなく,定性的データを分析するデータサイエンスの技術を活用した経営戦略策定,市場分析などが挙げられる。このような仕組みを実現するためには,関連する様々なデータを利活用できるプラットフォームとなるデータ基盤(以下,データ利活用基盤という)が必要になる。
一方で,データの収集元になる情報システム,センサー機器などを個別に設計し,配置すると,組織全体として整合せず,データを有効に利活用できないおそれがある。また,パターン認識などに必要な画像データなどに偏りや欠損が多いと,予測・シミュレーションの結果を誤ることも考えられる。
したがって,企業などの組織では,一貫性があり,正確で信頼できるデータを収集し,保存するとともに,加工,分析したデータを蓄積するデータ利活用基盤の構築が重要になる。また,構築に当たっては,データの品質を維持したり,データのセキュリティを確保したりするなどの統制を組み込むことも必要である。
今後,データ利活用を求められる状況が拡大していく中,システム監査人には,データ利活用基盤が適切に構築されているかどうかを確かめるための監査が求められる。また,監査を行うに当たっては,システム監査人の視点が,例えば,データセキュリティだけに偏ったりしないように留意する必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
設問と解答・解説
設問ア
あなたが関係する組織におけるデータ利活用基盤の構築の概要,目的,及びその基盤が必要となる理由について,800字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 34点)
知識・理解度(内容)(18点)
- 18点: データ利活用基盤の概要、目的、必要となる理由が全て明確かつ具体的に記述されており、個別システムの問題にとどまらない。
- 14点: 概要、目的、必要となる理由が記述されているが、構築理由の具体性がやや不足している。
- 9点: 概要、目的、必要となる理由のいずれかの記述が不足しているか、個別システムのデータ移行などの記述にとどまっている。
- 5点: 記述の多くが設問の趣旨(データ利活用基盤)から外れており、構築理由が不明確。
- 0点: 白紙、または設問に全く答えていない。
論理性(構造)(16点)
- 16点: 組織の状況から基盤構築の目的、必要性への展開が非常に論理的で一貫している。
- 12点: 展開は概ね論理的であるが、一部つながりが弱い部分がある。
- 8点: 全体的な一貫性に欠け、論理展開に飛躍が見られる。
- 4点: 構成が不明確で、文脈のつながりが乏しい。
- 0点: 白紙、または全く論理的ではない。
解説
データ利活用基盤の概要・目的・理由
本設問では、関係する組織においてデータ利活用基盤を構築する概要、目的、およびその基盤が必要となる理由を記述します。
問題文にある通り、ビジネスやサービスの高度化、新たな価値創造によって競争力を高めるという背景を踏まえることが重要です。
高得点のポイント
構築理由を明確にすること:なぜその組織でデータ利活用基盤が必要なのか、背景と課題を論理的に説明する。
個別システムの問題にとどめないこと:単なる旧システムからのデータ移行や一部のデータ整備ではなく、全社的・横断的なデータ利活用を目的とした基盤であることを明記する。
設問アで求めたデータ利活用基盤の概要では,構築理由の記述が不十分な解答が散見された。
設問イ
設問アで述べたデータ利活用基盤の構築に際して,システム監査人はどのようなリスクを想定すべきか。700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: 複数の情報システムから収集するデータの品質に関わるリスク(定義の不整合や偏り等)が具体的に記述されている。
- 13点: データの品質に関わるリスクの記述がやや浅い、またはデータセキュリティリスクに比重が置かれている。
- 9点: データセキュリティや個別システムの問題のみが記述され、データ品質に関わるリスクへの言及が不十分。
- 4点: リスクの記述が抽象的すぎる、あるいはデータ利活用基盤特有のリスクとなっていない。
- 0点: 白紙、または設問に全く答えていない。
説得力(考察)(16点)
- 16点: 組織の状況や構築目的に照らし合わせて、想定されるリスクが極めて現実的かつ具体的に考察されている。
- 12点: 想定されるリスクに一定の現実性と具体性があり、説得力がある。
- 8点: リスクの考察が一般的・抽象的であり、説得力にやや欠ける。
- 4点: 考察が極めて浅く、具体的な状況に基づく説得力がない。
- 0点: 白紙、または考察が行われていない。
解説
構築に際して想定するリスク
設問アの状況を踏まえ、データ利活用基盤の構築において想定されるリスクを抽出します。
問題文にもヒントがある通り、収集するデータの定義の不整合や偏りが誤った分析結果や判断を招くリスクについて言及することが求められます。
高得点のポイント
データの品質に関わるリスクを記述すること:データセキュリティに関するリスクだけでなく、複数システムから収集するデータの品質(正確性、完全性、整合性など)に着目したリスクを挙げる。
具体的なリスクシナリオを示すこと:データ定義の不整合がどのように誤った分析結果につながり、経営判断の誤りなどをもたらすかを具体的に論述する。
全社的な視点を持つこと:個別システムの不具合ではなく、データ利活用基盤特有の全社的リスクとして考察する。
設問イでは,データセキュリティに関わるリスクの記述が多く,複数の情報システムなどから収集するデータの品質に関わるリスクについて記述できている解答は少なかった。
設問ウ
設問イで述べたリスクを踏まえて,データ利活用基盤が適切に構築されているかどうかを確かめるための監査手続について,700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: 入手すべき監査証拠が極めて具体的に明記され、対象リスクを確かめるための適切な監査手続として記述されている。
- 13点: 監査証拠と監査手続は記述されているが、具体性が一部不足しているか、監査手続としての記述がやや不十分。
- 9点: 入手すべき監査証拠が具体的でない、あるいは監査手続になっていない記述(単なる対策の羅列など)が目立つ。
- 4点: 監査証拠への言及がなく、監査手続の内容も非常に抽象的である。
- 0点: 白紙、または設問に全く答えていない。
論理性(構造)(16点)
- 16点: 設問イで挙げたリスクに対して、監査手続が論理的かつ直接的に対応しており、一貫性が高い。
- 12点: 設問イのリスクとの対応関係は概ね読み取れるが、一部論理的なつながりが弱い。
- 8点: 設問イで挙げたリスクとの関連性が薄く、汎用的な監査手続に終始している。
- 4点: 設問イのリスクと監査手続の間に全く関連性がない。
- 0点: 白紙、または論理性が全くない。
解説
適切に構築されているかを確かめる監査手続
設問イで想定したリスクが適切にコントロールされ、データ利活用基盤が正しく構築されているかを確かめる監査手続を記述します。
システム監査人として、どのような資料を入手し、誰にヒアリングして、何を確かめるのかを具体的に論述する必要があります。
高得点のポイント
監査証拠を具体的に明記すること:データ定義書、データ移行計画書、テスト結果報告書など、確認すべき文書や記録を具体的に挙げる。
監査手続として記述すること:「〜が実施されていること」という単なる対策の記述ではなく、「〜を閲覧し、〜が行われていることを確認する」という監査人の行動として記述する。
設問イのリスクと対応させること:前問で挙げたデータ品質に関わるリスクを低減するためのコントロールが、確実に実施されていることを確かめる手続になっているか一貫性を持たせる。
設問ウで求めた監査手続では,入手すべき監査証拠が具体的でなかったり,監査手続になっていなかったりする記述が散見された。問題文の趣旨を踏まえて,具体的に論述してほしい。