令和6年度 秋期 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1 空飛ぶクルマの運航管理と安全設計
テクノロジ組込み・IoT
この問題は2024(R6)秋 エンベデッドシステムスペシャリスト 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
eVTOL(空飛ぶクルマ)による旅客輸送システムを題材にした組込みシステムの問題です。運航管理システムと自動管制システムの承認フロー、VPSとIMUを組み合わせた姿勢推定、バッテリー容量と飛行距離の計算、そして周辺監視ユニット異常時の緊急対応まで、要件検討から安全設計までを幅広く問います。この記事では、各設問を「安全のためにどの仕組みが要るか」という視点で貫いて読み解きます。
この記事で押さえる論点
- 運航管理・自動管制・機体の3システムの役割分担と承認フローを説明する
- センサー(VPS・IMU)の補完関係から姿勢推定の仕組みを理解する
- バッテリー容量と飛行可能距離の関係式から数値を導出する
- 構成要素の異常時に生じる危険と緊急対応をフェールセーフの観点で述べる
出題情報
- 出題
- 2024(R6)秋 エンベデッドシステムスペシャリスト 午後I 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
輸送業界では,交通渋滞,運転手不足を解消するため,ドローン技術及び情報通信技術を用いた空飛ぶクルマの実現が求められている。今後の市場規模拡大をにらみ,各国で様々なタイプの空飛ぶクルマの開発が進行している。
本問では,空飛ぶクルマの旅客輸送システムを題材として,システムの要件を検討する能力,安全性を設計する能力,要求及び仕様に応じてセンサーを活用する能力,制御の要件を検討する能力,追加機能を検討する能力を問う。
問1では,空飛ぶクルマの旅客輸送システムを題材に,システムの要件の検討,安全性の設計,要求及び仕様に応じたセンサーの活用,制御の要件の検討,及び追加機能の検討について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
空飛ぶクルマの旅客輸送システムに関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
A社は,都市部での移動を目的とした空飛ぶクルマの旅客輸送システム(以下,SKシステムという)を開発している。空飛ぶクルマには,ドローンの技術を応用した電動垂直離着陸機(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft 以下,eVTOLという)を採用している。SKシステムは,複数台のeVTOLを用いて,空港とイベント会場にある複数の離着陸場の間で,自動操縦による旅客の空輸サービスを提供する。自動車での移動に比べて道路交通渋滞の影響を受けずに効率的に旅客を輸送できることが特徴である。
SKシステムに関連するシステム構成を図1に,SKシステムに関連する主な構成要素を表1に示す。

図の説明テキスト
SKシステムに関連するシステム構成を示す図。運航管理システム、自動管制システム、気象情報サービスがインターネット経由でモバイル通信と接続され、eVTOLと通信する。SK空域内には空港、イベント会場の離着陸場、緊急離着陸場が配置されている。GNSS測位衛星も描かれている。

図の説明テキスト
表1 SKシステムに関連する主な構成要素
| 構成要素名 | 説明 |
|---|---|
| 運航管理システム | eVTOLの搭乗予約,配車,飛行ルートの立案,飛行の状況などの管理を行うSKシステム専用のクラウドシステムである。 |
| eVTOL | 8個のローターを搭載したマルチコプタータイプのeVTOLで,運航管理システムと自動管制システムからの情報を基に自動操縦によって飛行する。緊急時は,必要に応じてパイロットによる手動操縦を行う。 モバイル通信を使用して,運航管理システム及び自動管制システムと通信する。 動力源としてバッテリーを使用する。バッテリーは交換可能である。 搭乗定員は,最大5人(パイロット1人を含む)である。 バッテリー満充電時の無風時の航続距離は300km,SKシステムにおいて1回の飛行は最長40kmである。 飛行速度は,最大150km/時で,飛行高度は1,000m以下である。 |
| 離着陸場 | eVTOLが離着陸する専用の場所で,空港,イベント会場内に複数設置されている。 一つの離着陸場は,eVTOL1台分の広さである。 バッテリーの交換ステーションがあり,バッテリーは離着陸場に常駐している運航補助員が交換する。 |
| 緊急離着陸場 | 緊急時に,飛行中のeVTOLが緊急着陸をするための公共の場所である。 |
| 自動管制システム | SK空域内を飛行する全てのeVTOL,ヘリコプターの位置,速度,方向などの情報を取得して,航空管制を行う。 各離着陸場の空き状況及び利用予約状況のスケジュール(以下,離着陸場情報という)を,運航管理システムに送信する。 eVTOLや運航管理システムからの各種申請を審査し,承認を行う。 |
| 気象情報サービス | SK空域内の降雨,風速,風向,雷などの情報(以下,気象情報という)を,運航管理システム,自動管制システムにインターネット経由で送信する。 |
| モバイル通信 | 携帯電話通信事業者の回線を用いた通信ネットワークである。SK空域は,通信可能エリアとしてカバーされている。 |
〔SKシステムの利用手順〕
SKシステムの利用手順の一例を次に示す。
- 旅客は,スマートフォンの専用アプリケーションプログラム(以下,専用アプリという)を用いて,出発予定時刻,出発予定地,到着予定地,搭乗予定人数などの情報(以下,予約情報という)を入力して,運航管理システムにeVTOLの搭乗予約を行う。
- 運航管理システムは,予約情報,気象情報,aを基に,eVTOLの飛行ルート,飛行速度,飛行高度,到着予定時刻などの情報(以下,飛行計画という)を立案し,飛行計画を自動管制システムに申請する。自動管制システムは,eVTOLとヘリコプターの飛行計画を管理し,申請された飛行計画に対する承認可否を決定する。
- 運航管理システムは飛行計画が承認されると,予約した旅客の専用アプリに搭乗予約の完了と,飛行計画として算出された到着予定時刻を通知する。
- 旅客は,搭乗予約の完了後,出発予定地の離着陸場に行き,eVTOLに搭乗する。搭乗時には,搭乗口に設置されている2次元バーコードリーダーに,専用アプリに表示した2次元バーコードを読み込ませて搭乗手続きを実施する。
- eVTOLは,旅客の搭乗が完了すると,旅客の搭乗手続きの情報を運航管理システムに送信する。運航管理システムは,全ての旅客の搭乗が完了したと判断するとeVTOLに飛行計画を送信する。
- eVTOLは,出発予定時刻になると,自動管制システムに離陸許可を申請する。離陸許可が承認された場合は,運航管理システムに離陸開始を通知して,飛行計画に沿って自動操縦で離陸を開始する。承認されなかった場合は待機し,承認されるまで繰返し申請を行う。
- eVTOLは離陸後,飛行計画に基づき自動操縦で飛行計画と実際のズレを調整しながら到着予定地まで飛行する。飛行中は,運航管理システム及び自動管制システムに次の情報を1秒ごとに送信する。
- 運航管理システムに送信する情報
- 現在位置,速度などの飛行に関する情報(以下,飛行情報という)
- バッテリー残量,後述する表2中に示す構成要素の診断結果などの情報(以下,機体情報という)
- 障害物などのeVTOL周辺の環境に関する情報(以下,周辺環境情報という)
- 自動管制システムに送信する情報
- 飛行情報
- 運航管理システムに送信する情報
- eVTOLは着陸に際し,自動管制システムに着陸許可を申請して,承認された場合は,離着陸場に着陸する。承認されなかった場合は,ホバリング状態で待機し,承認されるまで繰返し申請を行う。
- 運航管理システムは,必要に応じてeVTOLが着陸した後にバッテリーの交換を行うように,離着陸場の運航補助員に通知する。
〔運航管理システムの飛行計画の更新〕
SKシステムは,シミュレーション技術を活用している。運航管理システムは,飛行情報,b,周辺環境情報,離着陸場情報及び気象情報を分析して,シミュレーションを実施し,その結果を用いて飛行計画を再評価する。再評価した結果,飛行計画を更新する必要があると判断される場合には,自動管制システムに更新された飛行計画を申請し,承認されると当該eVTOLに送信する。
eVTOLは運航管理システムから新しい飛行計画を受信すると,直ちに受信した飛行計画に切り替えて,自動操縦で飛行を継続する。
〔eVTOLの概要〕
eVTOLの外観を図2に,eVTOLの主なシステム構成を図3に,eVTOLの主な構成要素を表2に示す。

図の説明テキスト
図2 eVTOLの外観。8個のローターユニットが機体上部に円盤状に配置。各種センサー(全周囲カメラ、3D-LiDAR、ステレオカメラ、ミリ波レーダー)が機体周囲に、IMUとVPSが機体下部に搭載されている。

図の説明テキスト
図3 eVTOLの主なシステム構成。IMU、VPS、地磁気センサー、GNSS受信部、3D-LiDAR、ステレオカメラ、ミリ波レーダー、全周囲カメラ、バッテリー、モバイル通信送受信部が各種ユニットに接続されている。自動操縦ユニット、周辺監視ユニット、手動操縦ユニット、バッテリー管理ユニット、フライトレコーダーユニット、モバイル通信ユニット、制御部がCANバスで相互接続されている。飛行制御ユニットはCANバスの他、直接IMU、VPS、地磁気センサーなどと繋がり、8つのローターユニットを制御する。

図の説明テキスト
表2 eVTOLの主な構成要素
| 構成要素名 | 説明 |
|---|---|
| IMU | 3軸加速度,3軸角速度を計測し,eVTOLの姿勢を制御するのに使用する。 |
| VPS | 気圧センサー,ステレオカメラを内蔵している。 気圧センサー及びステレオカメラ画像から得られる物体の変化速度などによって,離着陸時における機体の姿勢変化,及び離着陸場との相対位置を計測し,eVTOLの姿勢を制御するのに使用する。 |
| 地磁気センサー | 地磁気を利用して,eVTOLの姿勢や方位を計測する。 |
| GNSS受信部 | GNSS測位衛星からの電波を受信し,eVTOLの自己位置推定に使用する。 |
| 3D-LiDAR | 対象物までの距離や,対象物の形状を計測し,eVTOLの周辺監視に使用する。 |
| ステレオカメラ | 対象物までの距離や,対象物の形状を計測し,eVTOLの周辺監視に使用する。 |
| ミリ波レーダー | 対象物までの距離や,対象物の形状を計測し,eVTOLの周辺監視に使用する。 |
| 全周囲カメラ | 360度カメラで画像を撮影し,eVTOLの全周囲の監視及び映像記録に使用する。 |
| 飛行制御ユニット | ローターユニットを制御し,eVTOLの飛行を制御する。 飛行及び離着陸時,IMU,VPSの情報に基づき,各ローターの回転数を算出し,ローターユニットに送信する。その結果,eVTOLは,移動方向に対して適切な傾斜角度をとり,飛行することができる。機体の姿勢を制御する際は,IMU,VPS,地磁気センサーの情報をできるだけ速く処理する必要がある。 制御部から緊急操作指示を受信すると,手動操縦ユニットからの情報を基に制御を行う。 IMU,VPS,地磁気センサーなどの情報をCAN上に出力する。 |
| 自動操縦ユニット | GNSS受信部からの情報,及びCANを経由して得られるIMU,VPS,地磁気センサーの情報を基に,eVTOLの自己位置(緯度,経度,高度)を推定する。 制御部から飛行計画,周辺監視ユニットからほかのeVTOLや鳥などの飛行物体(以下,飛行障害物という)の情報を受信し,自己位置と併せて,飛行を制御する自動操縦操作指示を作成して,飛行制御ユニットに送信する。 飛行計画に対する進捗状況を制御部に送信する。 |
| 周辺監視ユニット | 3D-LiDAR,ステレオカメラ,ミリ波レーダー,全周囲カメラから取得した飛行中の周囲(前方,後方,側方,上側,下側)の測定結果を解析し,飛行障害物を監視する。 飛行障害物を検知すると,飛行障害物の情報を,自動操縦ユニットに送信する。 |
| 手動操縦ユニット | 緊急の場合,搭乗するパイロットが,eVTOLの手動操縦を行うときに使用する。 パイロットが操縦桿やペダルなどを操作した際の操作の情報を,飛行制御ユニットに送信する。 |
| バッテリー管理ユニット | ローター駆動用のモーター,各種ユニットに電源を供給するバッテリーを管理する。 バッテリーの残量を一定時間ごとに制御部へ送信する。 |
| フライトレコーダーユニット | CAN上の全てのユニットの出力データを取得し,保存する。 |
| モバイル通信ユニット | 運航管理システム,自動管制システムとの間においてモバイル通信を行う。 CANを用いて制御部と通信を行う。 通信異常を制御部に送信する。 |

図の説明テキスト
表2 eVTOLの主な構成要素(続き)
| 構成要素名 | 説明 |
|---|---|
| 制御部 | CAN上の全てのユニットに,動作開始の指示を送信する。 CAN上の全てのユニットの出力データを取得する。 運航管理システムが送信した飛行計画を,モバイル通信ユニット経由で受け,自動操縦ユニットに送信する。 飛行中の飛行情報,周辺環境情報をモバイル通信ユニット経由で運航管理システムへ送信する。飛行情報,周辺環境情報のデータ量は,それぞれ0.25Mバイト/秒である。 飛行中の飛行情報をモバイル通信ユニット経由で自動管制システムへ送信する。 eVTOLのシステム起動中は常に機体情報をモバイル通信ユニット経由で運航管理システムに送信する。データ量は,0.125Mバイト/秒である。 自動操縦ユニットから飛行計画に対する進捗状況を受信する。 周辺監視ユニットの異常などを検知すると,パイロットに手動操縦に切り替えるように指示を出すとともに,飛行制御ユニットに緊急操作指示を送信する。 |
| ローターユニット | ローター及びローター駆動用のモーターで構成され,機体の周囲に8個搭載されている。 飛行制御ユニットからのローターの回転数を基にモーターを制御する。 |
〔機体とローターユニットの配置〕
eVTOLには,機体の周囲に8個のローターユニット(#1〜#8)が搭載されている。
ローターユニット内のモーターを制御して,ローターを回転させることによって揚力を得る。機体とローターユニットの配置を図4に示す。

図の説明テキスト
図4 機体とローターユニットの配置(真上から見た図)。機体の周囲に8個のローターユニットが配置されている。前方の左に#1、右に#8。上部に#2, #3。後方の右に#4、左に#5。下部に#6, #7が配置されている。
eVTOLの飛行とバッテリー消費のシミュレーションを行った。
eVTOLが,出発地点から飛行を開始した。出発から6分で 15 km先のα地点を通過し,α地点通過後6分後にα地点から 10 km先にある離着陸場へ飛行することをシミュレーションした。出発地点からα地点までは,風速は 10 m/秒の追い風とした。α地点から離着陸場までは,風速は 10 m/秒の向かい風とした。eVTOLは,出発地点からα地点までは,無風時に c km/時の速度が得られる出力で飛行し,α地点から離着陸場までは,無風時に d km/時の速度が得られる出力で飛行する。なお,追い風の場合,eVTOLの速度は(無風時の速度+風速)となり,向かい風の場合,eVTOLの速度は(無風時の速度-風速)となるものとする。
また,図5に示す無風時におけるeVTOLの燃費と飛行速度の関係を用いて,バッテリー消費についてシミュレーションを行った。出発地点からα地点までの間,eVTOLはバッテリー容量の e %を消費し,α地点から離着陸場までの間,バッテリー容量の f %を消費すると試算された。

図の説明テキスト
図5 無風時におけるeVTOLの燃費と飛行速度の関係。横軸はeVTOLの飛行速度(km/時)で110から140、縦軸はバッテリー容量1%当たりの飛行可能距離(km/%)で0から3.5。右下がりの直線グラフで、110km/時で約3.3km/%、140km/時で約0.6km/%の反比例のような線形関係を示す。
緊急度の高いeVTOL(以下,緊急eVTOLという)が飛行する場合の対応について検討し,自動管制システムに,次の1〜3のような指示をさせる仕様変更を行った。
- 自動管制システムは,緊急eVTOLの飛行ルート上を通過する予定のほかのeVTOLに対して待機指示を適宜送信する。待機指示を受信したeVTOLは運航管理システムに待機指示受領を送信し,自動管制システムが指示した位置でホバリング状態で待機して緊急eVTOLを通過させる。運航管理システムは,待機指示受領を受信すると待機指示を受信したeVTOLの飛行計画の更新は行わない。
- 自動管制システムは,緊急eVTOLが通過し,航行が可能になったeVTOLに対して待機解除指示を送信する。待機解除指示を受信したeVTOLは運航管理システムに待機解除指示受領を送信する。待機解除指示受領を受信した運航管理システムは飛行計画を更新して,自動管制システムの承認を受け,当該eVTOLに送信する。
- 待機中のeVTOLがバッテリー残量不足となった場合,緊急eVTOLとなり,緊急離着陸場に着陸する。緊急eVTOLからバッテリー残量不足であることの通知を受けた運航管理システムは,gを作成し,バッテリー残量不足の情報とともに自動管制システムに申請する。このとき,hを極力避けるために,運航管理システムは,複数の飛行計画を申請する。自動管制システムは待機するeVTOLの台数と待機時間を考慮して,できる限り有効な飛行計画を選んで承認する。
設問と解答・解説
設問1
SKシステムの仕様について答えよ。
(1)
運航管理システムが,飛行計画を更新するときに,自動管制システムに承認をもらうのはなぜか。40字以内で答えよ。
模範解答
運航管理システムは,ヘリコプターなどの飛行計画をもっていないから
運航管理システムは,eVTOL以外の飛行計画をもっていないから
採点基準(配点 8点)
知識・理解度(内容)(5点)
- 5点: 運航管理システムが「eVTOL以外の飛行計画を持っていない」ことを明確に示している。
- 3点: 運航管理システムが他の航空機の情報を把握していないことは示されているが、記述がやや曖昧である。
- 1点: 運航管理システムと他航空機の関係に言及しているが、内容が不十分である。
- 0点: 内容が不適切、または無回答。
論理性(構造)(3点)
- 3点: 自動管制システムの承認が必要な理由として、情報を持たないこととの因果関係が論理的に構築されている。
- 2点: 理由は示されているが、因果関係がやや不明確である。
- 0点: 論理が破綻している、または無回答。
解説
解説
運航管理システムは空飛ぶクルマ(eVTOL)を対象としたシステムであり、ヘリコプターなどeVTOL以外の航空機の飛行計画を保持していない。そのため、安全な運航計画を作成するには、他の航空機の飛行情報を統括している自動管制システムに承認を得る必要がある。
高得点のポイント
- 運航管理システムがヘリコプターなどeVTOL以外の飛行計画を持っていないことを明記している。
- 他航空機との情報共有の観点から承認が必要であるという論理展開ができている。
(2)
本文中の a に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
離着陸場情報
採点基準(配点 8点)
正確性(内容)(8点)
- 8点: 「離着陸場情報」と正確に抜き出して解答している。
- 4点: 意味は通じるが、指定された字句と完全に一致しない。
- 0点: 不正解、または無回答。
解説
解説
前後の文脈より、自動管制システムが更新・管理する情報の一つとして空飛ぶクルマの離着陸に使用される場所のデータが入る。文脈に最も合致する「離着陸場情報」が正解となる。
(3)
本文中の b に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
機体情報
採点基準(配点 8点)
正確性(内容)(8点)
- 8点: 「機体情報」と正確に抜き出して解答している。
- 4点: 意味は通じるが、指定された字句と完全に一致しない。
- 0点: 不正解、または無回答。
解説
解説
eVTOLが運航管理システムに送信するデータとして、飛行情報、周辺環境情報とともに列挙される機体自体のステータスを表す情報が入る。文脈より「機体情報」が正解となる。
(4)
自動管制システムが離着陸場情報を更新するのに必要な情報は何か。25字以内で答えよ。
模範解答
eVTOLの飛行計画と飛行情報
採点基準(配点 8点)
知識・理解度(内容)(5点)
- 5点: 「飛行計画」と「飛行情報」の両方が正確に含まれている。
- 3点: 「飛行計画」と「飛行情報」のいずれか一方のみが含まれている。
- 0点: 内容が不適切、または無回答。
論理性(構造)(3点)
- 3点: 指定された要件(離着陸場情報の更新に必要な情報)として簡潔にまとめられている。
- 1点: 記述が冗長であり、必要な情報が明確でない。
- 0点: 論理が破綻している、または無回答。
解説
解説
自動管制システムが離着陸場の予約状況や空き状況(離着陸場情報)を正確に更新するためには、どのeVTOLがいつ離着陸するかという「eVTOLの飛行計画」と、現在の状態を示す「飛行情報」の両方を把握する必要がある。
高得点のポイント
- 「eVTOLの飛行計画」と「飛行情報」の両方の要素が含まれていること。
(5)
eVTOLは,運航管理システムへ飛行情報,機体情報,周辺環境情報を送信する。eVTOLのシステム起動開始から30分間で,eVTOLが運航管理システムに送信するデータ量は何Mバイトか。答えは小数第1位を切り上げて整数で答えよ。なお,システム起動開始直後の最初の10分間は飛行しておらず,その後20分間は飛行していたものとする。
模範解答
825
配点 8点
解説
解説
問題文の仕様に基づき、非飛行時と飛行時のデータ送信量を計算する。最初の10分間(非飛行時)の送信データ量と、続く20分間(飛行時)の送信データ量をそれぞれ仕様から算出し、総和を求める。算出したデータ量をメガバイト単位に変換し、小数第1位を切り上げることで解答の Mバイトが得られる。
設問1(4)は,正答率が低かった。飛行情報,機体情報,周辺環境情報に対し,それぞれの条件において送信するデータがどのようになるかを仕様から読み解いてほしい。
設問2
eVTOLのシステムの仕様について答えよ。
(1)
VPSで計測したeVTOLの水平面上での回転方向の姿勢変化をIMUで計測した3軸角速度で補強し,水平面上での回転量を推定することができる。このとき,地磁気センサーで方位を計測している目的は何か。35字以内で答えよ。
模範解答
VPSとIMUによる水平面上での回転量の積分誤差を補正するため
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: IMUの回転量の「積分誤差」を補正するためであることが明記されている。
- 2点: 誤差の補正に言及しているが、積分誤差などの具体的なメカニズムについての記述が不足している。
- 0点: 言及なし、または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 地磁気センサーの方位計測が誤差補正に寄与する理由として論理的に記述されている。
- 1点: 論理展開がやや不自然である。
- 0点: 論理的でない、または無回答。
解説
解説
IMU(慣性計測装置)で計測した角速度を積分して回転量を推定すると、微小な計測誤差が時間経過とともに蓄積し、大きなドリフト(積分誤差)が生じる。地磁気センサーによる絶対的な方位情報を併用することで、この積分誤差を補正することが目的である。
高得点のポイント
- IMUによる「積分誤差(ドリフト)」に言及していること。
- それを「補正する」目的であることが論理的に記述されていること。
(2)
eVTOLの姿勢制御の設計を行うに当たり,当初,IMUの計測データからローターユニットを制御するための情報を演算するユニットを設け,そのユニットが演算した情報をCAN経由で飛行制御ユニットへ送信することにしていた。しかし,制御上の理由によってIMUの計測データを直接飛行制御ユニットが受け,飛行制御ユニット自体がローターユニットを制御するための情報を演算するように設計の変更を行った。このような変更を行った理由を45字以内で答えよ。
模範解答
IMUからローターユニットまでのデータ経路について遅延時間を最短にしたいから
CANバスやほかのユニットの異常時に影響を受けにくいので安全であるから
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 「遅延時間を最短にしたい」または「CANバスや他ユニットの異常時の影響を受けにくくする」ことが明記されている。
- 2点: 上記の要素に触れているが、記述が不十分である。
- 0点: 言及なし、または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 制御上の理由や安全性・リアルタイム性の観点から論理的に記述されている。
- 1点: 記述が曖昧であり、変更の理由として説得力に欠ける。
- 0点: 論理的でない、または無回答。
解説
解説
飛行制御ユニットは姿勢を安定させるために、IMUの計測データを極めて短い遅延時間で受け取る必要がある。CANバスなどの通信経路を経由すると遅延が発生しやすく、また他ユニットの異常や通信負荷による影響を受けやすくなる。そのため、直接飛行制御ユニットで受信し演算することで、遅延の最小化や安全性の向上を図っている。
高得点のポイント
- 「遅延時間を最短にしたい」または「異常時に影響を受けにくい(安全性)」のいずれかの観点が明記されていること。
(3)
バッテリー容量と飛行可能距離の関係について文章中の c に入れる適切な数値を小数第1位を四捨五入して整数で答えよ。
模範解答
114
配点 5点
解説
解説
問題文に示されたバッテリー容量と飛行可能距離の関係式、および飛行時の消費電力や風の影響を考慮した速度ベクトル計算に基づいて数値を導出する。与えられた条件から計算を行い、小数第1位を四捨五入して整数 を得る。
(4)
バッテリー容量と飛行可能距離の関係について文章中の d に入れる適切な数値を小数第1位を四捨五入して整数で答えよ。
模範解答
136
配点 5点
解説
解説
問題文の仕様に従い、特定の条件下における飛行可能距離またはバッテリー消費のパラメータを計算する。条件式に数値を代入し、小数第1位を四捨五入して整数 を得る。
(5)
バッテリー容量と飛行可能距離の関係について文章中の e に入れる適切な数値を小数第1位を四捨五入して整数で答えよ。
模範解答
4
配点 5点
解説
解説
無風時に対する風の影響や、消費エネルギーの変化を考慮したパラメータの計算を行う。関係式に基づき算出した結果、小数第1位を四捨五入して整数 を得る。
(6)
バッテリー容量と飛行可能距離の関係について文章中の f に入れる適切な数値を小数第1位を四捨五入して整数で答えよ。
模範解答
14
配点 5点
解説
解説
バッテリー容量と飛行可能距離の関係から、指定された状態における数値を算出する。計算により導かれた数値を四捨五入し、整数 となる。
設問2(1)は,正答率が低かった。IMUと地磁気センサーの併用についての出題であったが,解答に当たっては,2種類のセンサーの計測データの特徴を考慮しなければならない。一般的なセンサーの特徴は重要な知識なので,是非身に付けてほしい。設問2(3)は,正答率がやや低かった。飛行中は風,即ち大気の移動の影響を受けるので,無風時の飛行に比べて飛行速度が変わり,消費するバッテリー容量も変わる。この関係を十分に理解した上で解答してほしい。
設問3
eVTOLの緊急時における対応について答えよ。
(1)
待機指示受領を受信した運航管理システムが,待機指示を受信したeVTOLの飛行計画の更新を行わない理由を35字以内で答えよ。
模範解答
新たな飛行計画を自動管制システムに送信し続けるおそれがあるから
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 「新たな飛行計画を自動管制システムに送信し続ける」おそれに明確に言及している。
- 1点: 送信のループや不要な通信の継続などに言及しているが、記述がやや曖昧である。
- 0点: 不正解、または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 待機指示と飛行計画更新停止の因果関係が論理的に記述されている。
- 0点: 論理的でない、または無回答。
解説
解説
運航管理システムが待機指示を出しているにもかかわらず飛行計画の更新処理を行ってしまうと、システムが待機状態と整合しない新たな飛行計画を自動管制システムに対して送信し続けてしまうおそれがある。これはシステムに不要な負荷を与え、エラーの要因となる。
高得点のポイント
- 「新たな飛行計画を送信し続ける(ループする)」リスクについて言及できていること。
(2)
待機解除指示受領を受信した運航管理システムが,飛行計画を更新して,当該eVTOLに送信する際,自動管制システムの承認を受ける理由を,安全性の観点から40字以内で答えよ。
模範解答
他のeVTOLやヘリコプターとの位置関係の変化による,接近や衝突を避けるため
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 他機との「位置関係の変化」による「接近や衝突の回避」が明確に記述されている。
- 2点: 衝突回避については言及があるが、他機との位置関係の変化への言及が不足している。
- 0点: 不正解、または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 待機中の状況変化と承認の必要性が論理的に結びついている。
- 0点: 論理的でない、または無回答。
解説
解説
eVTOLが待機している間にも、他のeVTOLやヘリコプターなどは移動しているため、周辺の状況は刻一刻と変化している。飛行を再開する際には、他機との接近や衝突を防ぐため、最新の状況を把握している自動管制システムの承認を受け直す必要がある。
高得点のポイント
- 「他のeVTOLやヘリコプターとの位置関係の変化」について言及している。
- 「接近や衝突を避けるため」という安全性の目的を明記している。
(3)
文章中の g に入れる適切な字句を25字以内で答えよ。
模範解答
緊急離着陸場に着陸させるための飛行計画
採点基準(配点 5点)
正確性(内容)(5点)
- 5点: 「緊急離着陸場に着陸させるための飛行計画」と正確に解答している。
- 3点: 意味は合っているが表現に不足がある、または同義の記述である。
- 0点: 不正解、または無回答。
解説
解説
緊急時には、通常の目的地への飛行を継続することは安全上リスクが高いため、最寄りの緊急離着陸場など、安全を確保できる場所へ向かう必要がある。文脈から、緊急用の計画を指す字句が入る。
(4)
文章中の h に入れる適切な字句を40字以内で答えよ。
模範解答
待機しているほかのeVTOLがバッテリー残量不足状態に連鎖的に陥る事象
採点基準(配点 5点)
正確性(内容)(5点)
- 5点: 「待機しているほかのeVTOLがバッテリー残量不足状態に連鎖的に陥る事象」と正確に解答している。
- 3点: 連鎖的なバッテリー不足に言及しているが、表現が不完全である。
- 0点: 不正解、または無回答。
解説
解説
飛行中に待機を命じられた機体はホバリングなどでバッテリーを消費し続ける。多数の機体が待機状態になると、時間が経過するにつれて他の機体も次々とバッテリー残量が不足し、新たな緊急事態を引き起こすおそれがある。これを連鎖的な事象として捉えることが重要である。
(5)
eVTOLが自動操縦で飛行中,周辺監視ユニットに異常が発生し,情報をCANへ送信しなくなった。このとき,eVTOLにどのような危険が発生し得るか。30字以内で答えよ。
模範解答
自動操縦中に飛行障害物と衝突する危険
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 自動操縦中に「飛行障害物と衝突する危険」が発生することが明記されている。
- 2点: 衝突の危険について言及しているが、自動操縦中や障害物といった要素が一部抜けている。
- 0点: 不正解、または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 周辺監視ユニットの異常が衝突リスクに直結する理由として論理的に記述されている。
- 0点: 論理的でない、または無回答。
解説
解説
周辺監視ユニットは、飛行経路上にある障害物などを検知する役割を持つ。これに異常が発生して情報を送信できなくなると、自動操縦システムは障害物を認識できなくなり、そのまま飛行を続けて衝突事故を起こす危険性が生じる。
高得点のポイント
- 「自動操縦中」であることと、「飛行障害物と衝突する危険」が結びついて記述されていること。
(6)
eVTOLが自動操縦で飛行中,周辺監視ユニットに異常が発生し,情報をCANへ送信しなくなった。安全を考慮した場合,どのような緊急対応を行うべきか。30字以内で答えよ。
模範解答
手動操縦で緊急離着陸場へ着陸させる。
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 「手動操縦」への切り替えと「緊急離着陸場への着陸」が明記されている。
- 2点: 手動操縦への切り替えのみ、または緊急着陸のみが記載されている。
- 0点: 不正解、または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 障害物検知不可という状況に対する緊急対応として妥当かつ論理的である。
- 0点: 論理的でない、または無回答。
解説
解説
自動操縦による周辺監視が機能しなくなった場合、システム任せでの飛行は極めて危険である。そのため、速やかに自動操縦を解除し、パイロットによる手動操縦に切り替えて、最寄りの緊急離着陸場へ安全に着陸させる措置をとるべきである。
高得点のポイント
- 「手動操縦」への切り替えに言及していること。
- 「緊急離着陸場へ着陸させる」という安全確保の行動が記載されていること。
設問3(1)(a)は,正答率が低かった。運行管理システムの緊急時の対応について問うており,非定常時の処理における安全性を考慮して解答してほしい。