令和3年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後II 問題 問2 BGPによるインターネット接続の冗長化とSNMPを用いた通信量監視
学習ガイド
ネット通販事業を営む企業を舞台に、SaaS利用拡大に伴うインターネット回線の増速と、BGPを用いた経路の冗長化を設計する問題です。SNMPを利用したトラフィック監視の計算や仕様上の注意点に加え、eBGPとiBGPの違い、各種パスアトリビュートを用いた最適経路の選択基準が問われます。まずは通信量の算出方法と監視手法の落とし穴を確認してください。そのうえで、ネットワーク図のどの区間でどのアトリビュートが付与・変更されるかをたどり、経路制御の設計意図を把握します。
この記事で押さえる論点
- SNMPのMIB情報から通信量を計算する式と、時間平均による監視の死角を説明できる
- iBGPとeBGPにおけるNEXT_HOPやAS_PATHといったパスアトリビュートの扱い方の違いを説明できる
- LOCAL_PREFやMEDを用いて、送受信トラフィックの優先経路を制御する仕組みを述べられる
- 静的経路からBGPへの切り替え手順と、通信量データ以外を用いた異常検知を説明できる
出題情報
- 出題
- 2021(R3)春 ネットワークスペシャリスト 午後II 問2
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
システム部門がネットワークを運用する際には,ネットワークの状況を正確に把握できることが重要である。そのためには,情報取得の仕組みや情報の取り扱い,情報の見方について,正確に理解しておく必要がある。あわせて,ネットワークを常時監視する必要もある。また,与えられた課題に対して,どのような技術を用いて,どのように解決するか立案できることが重要である。利用したことがない技術が案として浮上した場合,その技術がどのようなものか調べ,正確に理解したうえで採用することが重要である。
本問では,インターネット接続環境の更改を題材にしている。SNMPを用いたネットワーク利用状況の把握及びping監視と機械学習を用いた監視について問う。さらに,BGPやOSPFを用いたネットワーク設計と,プロトコルの特徴を踏まえた導入手順について問う。
問2では,インターネット接続環境の更改を題材に,SNMPを用いたネットワーク利用状況の把握及びping監視と機械学習を用いた監視について出題した。さらに,BGPやOSPFを用いたネットワーク設計と,プロトコルの特徴を踏まえた導入手順について出題した。全体として,正答率は高かった。
問題本文
問2 インターネット接続環境の更改に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
物品販売を主な事業とするA社は,近年,ネット通販に力を入れている。A社は,K社が提供するSaaSを利用して,顧客との電子メールやビジネスチャット,ファイル共有などを行っている。A社のシステム部では,老朽化に伴うA社インターネット接続環境の新しい機器への交換とインターネット接続の冗長化の検討を進めている。システム部門のB課長は,Cさんをインターネット接続環境の更改の担当者として任命した。
A社は,専用線を利用して,インターネットサービスプロバイダであるZ社を経由して,インターネットに接続している。現在のA社ネットワーク環境を図1に示す。

図の説明テキスト
ネットワーク構成図。
上部に「インターネット」のクラウドアイコンと「K社が提供する SaaS」の矩形がある。
インターネットの下に「Z社のネットワーク」、その中に「ルータ10Z」がある。
「ルータ10Z」の下に「A社」のネットワーク領域が実線枠で示されている。
A社ネットワーク内の構成:
- 「ルータ10」(グレー網掛け)が「ルータ10Z」と接続。
- その下に「L2SW10」(グレー網掛け)、さらに「FW10」(一部グレー網掛け)が直列に接続。
- 「FW10」から以下の3つのセグメント(それぞれ破線枠)に分岐して接続されている。
- 内部セグメント: 「L3SW40」の下に「L2SW40」があり、その下に複数の「PC」が接続。
- DMZ: 「L2SW20」の下に「権威DNSサーバ2」と「公開Webサーバ」が接続。
- サーバセグメント: 「L2SW30」の下に「管理サーバ」、「プロキシサーバ」、「権威DNSサーバ1」、「業務Webサーバ」、「キャッシュDNSサーバ」、「監視サーバ」が並列に接続。
左下に凡例と注記がある。
- 凡例: L2SW: レイヤ2スイッチ、L3SW: レイヤ3スイッチ、FW: ファイアウォール
- 注記1: FWはクラスタ構成であり、物理的に2台のFWが論理的に1台のFWとして動作している。
- 注記2: グレー網掛けの四角形は、交換対象機器を示す。
図の下部にキャプション「図1 現在のA社ネットワーク環境(抜粋)」が配置されている。
現在のA社ネットワーク環境の概要は次のとおりである。
- FWは,ステートフルパケットインスペクション機能をもつ。FWは,A社で必要な通信を許可し,必要のない通信を拒否している。
- FWは,許可又は拒否した情報を含む通信ログデータを管理サーバにSYSLOGで送信している。
- プロキシサーバは,従業員が利用するPCからインターネット向けのHTTP通信及びHTTPS通信をそれぞれ中継し,通信ログデータを管理サーバにSYSLOGで送信している。
- K社が提供するSaaSとの通信は全てHTTPS通信である。
- 管理サーバには,A社のルータ,FW,L2SW及びL3SW(以下,A社NW機器という)からSNMPを用いて収集した通信量などの統計データ,FWとプロキシサーバの通信ログデータが保存されている。
- 管理サーバは,通信ログデータを基にFWとプロキシサーバの通信ログ分析レポートを作成している。
- 監視サーバは,A社NW機器及びサーバを死活監視している。
- キャッシュDNSサーバは,PCやサーバセグメントのサーバからの名前解決の問合せ要求に対して,他のDNSサーバへ問い合わせた結果,得られた情報を応答する。
- 権威DNSサーバ1は,A社内のPCやサーバセグメントのサーバのホスト名などを管理し,名前解決の問合せ要求に対してPCやサーバセグメントのサーバなどに関する情報を応答する。
- サーバセグメントには,プライベートIPアドレスを付与している。
- サーバセグメントからインターネットに接続する際に,FWでNAPTによるIPアドレスとポート番号の変換が行われる。
- 内部セグメントには,プライベートIPアドレスを付与している。
- 権威DNSサーバ2は,A社内の公開Webサーバのホスト名などを管理し,名前解決の問合せ要求に対して公開Webサーバなどに関する情報を応答する。
- DMZには,グローバルIPアドレスを付与している。
- ルータ10Zには,A社が割当てを受けているグローバルIPアドレスの静的経路設定がされており,これを基にZ社内部のルータに経路情報の広告を行っている。
- ルータ10,FW10及びL3SW40の経路制御は静的経路制御を利用している。
Cさんは,インターネット接続環境の更改の検討を進めるに当たり,まず,インターネット接続環境の利用状況を調査することにした。
〔インターネット接続環境の利用状況の調査〕
管理サーバは,SNMPを用いて,5分ごとにA社NW機器の情報を収集している。A社NW機器のインタフェースの情報は,インタフェースに関するMIBによって取得できる。そのうち,インタフェースの通信量に関するMIBの説明を表1に示す。

図の説明テキスト
表1 インタフェースの通信量に関する MIB の説明(抜粋)
| MIB の種類 | 説明 |
|---|---|
| ifInOctets | インタフェースで受信したパケットの総オクテット数 (32 ビットカウンタ) |
| ifOutOctets | インタフェースで送信したパケットの総オクテット数 (32 ビットカウンタ) |
| ifHCInOctets | インタフェースで受信したパケットの総オクテット数 (64 ビットカウンタ) |
| ifHCOutOctets | インタフェースで送信したパケットの総オクテット数 (64 ビットカウンタ) |
例えば,ifInOctetsはカウンタ値で,電源投入によって機器が起動すると初期値の0から加算が開始され,インタフェースでパケットを受信した際にそのパケットのオクテット数が加算される。機器は,管理サーバからSNMPで問合せを受けると,その時点のカウンタ値を応答する。①管理サーバは,5分ごとにSNMPでカウンタ値を取得し,単位時間当たりの通信量を計算し,統計データとして保存している。単位時間当たりの通信量の単位はビット/秒である。②カウンタ値が上限値を超える場合,初期値に戻って(以下,カウンタラップという)再びカウンタ値が加算される。通信量が多いとカウンタラップが頻繁に起きることから,インタフェースの通信量の情報を取得する場合には,32 ビットカウンタではなく,64 ビットカウンタを利用することが推奨されている。管理サーバに保存された統計データは,単位時間当たりの通信量の推移を示すトラフィックグラフとして参照できる。
統計データから,過去に何度か利用が増え,インターネットに接続する専用線に輻輳が起きていたことが判明したので,専用線を増速する必要があるとCさんは考えた。また,統計データと通信ログ分析レポートから交換対象機器の通信量や負荷の状態を確認した結果,ルータ10及びL2SW10は同等性能の後継機種に交換し,FW10は性能が向上した上位機種に交換すればよいとCさんは考えた。
〔インターネット接続の冗長化検討〕
Cさんは,インターネット接続の冗長化方法についてZ社に提案を求めた。Z社の提案は,動的経路制御の一つであるBGPを用いた構成であった。Z社の提案した構成を図2に示す。

図の説明テキスト
図2 Z社の提案した構成 (抜粋)
左側にネットワーク構成図、右側に各機器に付与されているアドレス一覧の表が配置され、下部に注記がある。
【ネットワーク構成図】
- 上部に「インターネット」のクラウドがある。
- その下に「Z社のネットワーク」があり、中に「ルータ10Z」と「ルータ11Z」がある。
- その下に「A社」があり、中に「ルータ10」、「ルータ11」、「L2SW10」、「FW10」がある。
- 「ルータ10Z」のインタフェース「h」と「ルータ10」のインタフェース「f」が「eBGP」で接続されている(実線の両矢印)。
- 「ルータ11Z」のインタフェース「i」と「ルータ11」のインタフェース「g」が「eBGP」で接続されている(実線の両矢印)。
- 「ルータ10」のインタフェース「a, c」、「ルータ11」のインタフェース「b, d」、「L2SW10」、「FW10」のインタフェース「e」を囲むように破線の枠があり、「OSPF エリア」と示されている。
- 「ルータ10」と「FW10」、「ルータ10」と「ルータ11」、「ルータ11」と「FW10」の間が「iBGP」で接続されている(実線の両矢印)。
【各機器に付与されているアドレス一覧】
| 機器名 | インタフェース | IPアドレス/ネットマスク |
|---|---|---|
| ルータ10Z | h | α.β.γ.1/30 |
| ルータ11Z | i | α.β.γ.5/30 |
| ルータ10 | a | α.β.γ.13/30 |
| ルータ10 | c | α.β.γ.17/29 |
| ルータ10 | f | α.β.γ.2/30 |
| ルータ10 | ループバック | α.β.γ.8/32 |
| ルータ11 | b | α.β.γ.14/30 |
| ルータ11 | d | α.β.γ.18/29 |
| ルータ11 | g | α.β.γ.6/30 |
| ルータ11 | ループバック | α.β.γ.9/32 |
| FW10 | e | α.β.γ.19/29 |
【注記・凡例】
- 破線の枠: OSPF エリア
- 注記1: L2SWは冗長構成であるが、図では省略している。
- 注記2: a〜iは、各機器の物理インタフェースを示す。
- 注記3: FWはクラスタ構成であり、物理的に2台のFWが論理的に1台のFWとして動作している。
- 注記4: 表中のIPアドレスは、グローバルIPアドレスである。
- 注記5: ◀—▶は、BGPピアを示す。
Z社の提案した構成の概要は次のとおりである。
- ルータ10側の専用線を増速する。また,新たに専用線を敷設してZ社に接続する。新たに敷設する専用線を終端する機器として,ルータ11とルータ11Zを設置する。ルータ11側の専用線の契約帯域幅は,ルータ10側の専用線と同じにする。
- 平常時はルータ10側の専用線を利用し,障害などでルータ10側が利用できない場合は,ルータ11側を利用するように経路制御を行う。
- ルータ10とルータ11にはループバックインタフェースを作成し,これらにIPアドレスを設定する。
- a〜eの各物理インタフェース及びループバックインタフェースでは,OSPFエリアを構成する。
- ③ルータ10とルータ11はループバックインタフェースに設定したIPアドレスを利用し,FW10はeに設定したIPアドレスを利用して,互いにiBGPのピアリングを行う。④iBGPのピアリングでは,経路情報を広告する際に,BGPパスアトリビュートの一つであるNEXT_HOPのIPアドレスを,自身のIPアドレスに書き換える設定を行う。
- ルータ10とルータ10Zの間,及びルータ11とルータ11Zの間では,eBGPのピアリングを行う。ピアリングには,fとh,及びgとiに設定したIPアドレスを利用する。
- eBGPのピアリングでは,A社側はプライベートAS番号である64512を,Z社側はグローバルAS番号である64496を利用する。
Cさんは,Z社の提案を受け,BGPの標準仕様について調査を行った。
BGPでは,それぞれの経路情報に,パスアトリビュートの情報が付加される。
BGPパスアトリビュートの一覧を表2に示す。

図の説明テキスト
表2 BGP パスアトリビュートの一覧(抜粋)
| タイプコード | パスアトリビュート |
|---|---|
| 2 | AS_PATH |
| 3 | NEXT_HOP |
| 4 | MULTI_EXIT_DISC |
| 5 | LOCAL_PREF |
AS_PATHは,経路情報がどのASを経由してきたのかを示すAS番号の並びである。eBGPピアにおいて,隣接するASに経路情報を広告する際に,AS_PATHに自身のAS番号を追加する。また,⑤隣接するASから経路情報を受信する際に,自身のAS番号が含まれている場合はその経路情報を破棄する。
NEXT_HOPは,宛先ネットワークアドレスへのネクストホップのIPアドレスを示す。ネクストホップのIPアドレスは,ルータがパケットを転送する宛先を示す。eBGPピアに経路情報を広告する際には,NEXT_HOPを自身のIPアドレスに書き換えて送信する。iBGPピアに経路情報を広告する際には,NEXT_HOPを書き換えず,そのまま送信する。
MULTI_EXIT_DISC(以下,MEDという)は,eBGPピアに対して通知する,自身のAS内に存在する宛先ネットワークアドレスの優先度である。MEDはメトリックとも呼ばれる。
LOCAL_PREFは,iBGPピアに対して通知する,外部のASに存在する宛先ネットワークアドレスの優先度である。
BGPでは,ピアリングで受信した経路情報をBGPテーブルとして構成する。このBGPテーブルに存在する,同じ宛先ネットワークアドレスの経路情報の中から,最適経路を一つだけ選択し,ルータのルーティングテーブルに反映する。A社で利用している機器の最適経路選択アルゴリズムの仕様を表3に示す。

図の説明テキスト
表3 最適経路選択アルゴリズムの仕様
| 評価順 | 説明 |
|---|---|
| 1 | LOCAL_PREF の値が最も大きい経路情報を選択する。 |
| 2 | AS_PATH の長さが最も ア 経路情報を選択する。 |
| 3 | ORIGIN の値で IGP, EGP, Incomplete の順で選択する。 |
| 4 | MED の値が最も イ 経路情報を選択する。 |
| 5 | eBGP ピアで受信した経路情報, iBGP ピアで受信した経路情報の順で選択する。 |
| 6 | NEXT_HOP が最も近い経路情報を選択する。 |
| 7 | ルータ ID が最も小さい経路情報を選択する。 |
| 8 | ピアリングに使用する IP アドレスが最も小さい経路情報を選択する。 |
最適経路の選択は,表3中の評価順に行われる。例えば,同じ宛先ネットワークアドレスの経路情報が二つあった場合には,最初に,LOCAL_PREFの値を評価し,値に違いがあれば最も大きい値をもつ経路情報を選択し,評価を終了する。値に違いがなければ,次のAS_PATHの長さの評価に進む。
なお,ルータのルーティングテーブルに最適経路を反映するためには,NEXT_HOPのIPアドレスに対応する経路情報が,ルータのルーティングテーブルに存在し,ルータがパケット転送できる状態にある必要がある。
Cさんは,以上の調査結果を基にZ社の提案した構成を確認した。CさんとZ社の担当者との会話は,次のとおりである。
Cさん:専用線の経路制御はどのように行いますか。
担当者:今回は,LOCAL_PREFを利用して,図2中の各ルータ及びFWのパケット送信を制御します。ルータ10Zとルータ11Zが経路情報を受信した際に,LOCAL_PREFの値をそれぞれ設定し,Z社内部の機器に経路情報の広告を行います。ルータ10とルータ11が経路情報を受信した際も同様に,LOCAL_PREFの値をそれぞれ設定し,A社内部の機器に経路情報の広告を行ってください。
Cさん:BGPで広告する経路情報はどのようなものですか。
担当者:ルータ10Zとルータ11Zはデフォルトルートの経路情報の広告を行います。ルータ10とルータ11はA社が割当てを受けているグローバルIPアドレスの経路情報の広告を行ってください。平常時のFW10のBGPテーブルは表4のように,ルーティングテーブルは表5のようになるはずです。

図の説明テキスト
表4 FW10 の BGP テーブル(抜粋)
| 宛先ネットワークアドレス | AS_PATH | MED | LOCAL_PREF | NEXT_HOP |
|---|---|---|---|---|
| 0.0.0.0/0 | 64496 | 0 | 200 | ウ |
| 0.0.0.0/0 | 64496 | 0 | 100 | エ |

図の説明テキスト
表5 FW10 のルーティングテーブル(抜粋)
| 宛先ネットワークアドレス | ネクストホップ | インタフェース |
|---|---|---|
| 0.0.0.0/0 | α.β.γ.8 | e |
| α.β.γ.8/32 | オ | e |
| α.β.γ.9/32 | カ | e |
Cさん:分かりました。リンクダウンしないにもかかわらず,通信ができなくなるような専用線の障害時は,どのような動作になりますか。
担当者:BGPでは,キメッセージを定期的に送信します。専用線の障害時には,ルータがキメッセージを受信しなくなることによって,ピアリングが切断され,AS内の各機器の経路情報が更新されます。
Cさん:分かりました。
担当者:ところで,⑥BGPの標準仕様ではトラフィックを分散する経路制御はできません。BGPマルチパスと呼ばれる技術を使うことで,平常時からルータ10側,ルータ11側両方の専用線を使って,トラフィックを分散する経路制御ができますがいかがですか。教えていただいた,今回利用を検討されている機器はどれもBGPマルチパスをサポートしています。BGPマルチパスを有効にすると,BGPテーブル内のLOCAL_PREFやAS_PATH,MEDの値は同じで,NEXT_HOPだけが異なる複数の経路情報を,同時にルーティングテーブルに反映します。その結果,ECMP (Equal-Cost Multi-Path)によってトラフィックを分散することができます。
Cさん:いいですね。では,BGPマルチパスを利用したいと思います。
担当者:承知しました。各機器の設定例を後ほどお渡ししますので参考にしてください。
Cさん:ありがとうございます。
〔インターネット接続の冗長化手順〕
Cさんは,冗長化作業中にインターネット利用に対する影響が最小限となる,インターネット接続の冗長化手順の検討を行った。Cさんが検討した冗長化手順を表6に示す。

図の説明テキスト
表6 Cさんが検討した冗長化手順
| 手順 | 作業対象機器 | 作業内容 |
|---|---|---|
| 手順1 | ルータ 11Z, ルータ 11 | 機器の設置 |
| 手順2 | ルータ 11Z, ルータ 11, ルータ 10, L2SW10 | ケーブルの接続 |
| 手順3 | ルータ 11Z, ルータ 11, ルータ 10, L2SW10 | 物理インタフェースの設定,IP アドレスの設定及び疎通の確認 |
| 手順4 | ルータ 10, ルータ 11 | ク |
| 手順5 | ルータ 10, ルータ 11, FW10 | ケ |
| 手順6 | ルータ 10, ルータ 11, FW10 | コ |
| 手順7 | ルータ 10, ルータ 11, ルータ 10Z, ルータ 11Z | サ |
| 手順8 | シ | 静的経路の削除 |
| 手順9 | ルータ 10, L2SW10, FW10 | 後継機種又は上位機種に交換 |
手順1,2では,新たに導入する機器の設置及びケーブルの接続を行い,物理構成を完成する。手順3では,作業対象機器の物理インタフェースの設定及びIPアドレスの設定を行い,機器間で疎通の確認を行う。疎通の確認では,pingを用いて,パケットロスが観測されないことを確認する。手順4〜7で,BGPやOSPFを順次設定する。続いて,手順8を実施する。⑦A社からインターネットへ向かう通信については,手順8の静的経路の削除が行われた時点で,動的経路による制御に切替えが行われ,冗長化が完成する。最後に,手順9では,インターネット利用に対する影響が最小限になるように機器を操作しながら,作業対象機器をあらかじめ設定を投入しておいた後継機種又は上位機種に交換する。例えば,ルータ10の交換に当たっては,⑧通信がルータ10を経由しないようにルータ10に対して操作を行った後に交換作業を実施する。
Cさんは,これまでの検討結果をインターネット接続環境の更改案としてまとめ,B課長に報告した。B課長は,専用線に輻輳が発生していたこと,及び監視サーバで検知できなかったことを問題視した。想定外のネットワーク利用などによって突発的に発生した通信や輻輳を迅速に検知できるように,単位時間当たりの通信量の監視(以下,トラフィック監視という)について,Cさんに検討するよう指示した。
〔トラフィック監視の導入〕
監視サーバの死活監視は,監視対象に対して,1回につきICMPのエコー要求を3パケット送信し,エコー応答を受信するかどうかを確認する。1分おきに連続して5回,一つもエコー応答を受信しなかった場合に,アラートとして検知する。エコー要求のタイムアウト値は1秒である。Cさんは,⑨専用線の輻輳を検知するために,監視サーバの監視対象として,ルータ10Zとルータ11Zを追加することを考えたが,問題があるため見送った。
そこで,Cさんは,通信量のしきい値を定義し,上限値を上回ったり,下限値を下回ったりするとアラートとして検知する監視(以下,しきい値監視という)の利用を検討した。通信を均等に分散できると仮定すると,インターネット接続の冗長化導入によって利用できる帯域幅は専用線2回線分になる。どちらかの専用線に障害が発生すると,利用できる帯域幅は専用線1回線分になる。Cさんは,どちらかの専用線に障害が発生した状況において,専用線に流れるトラフィックの輻輳の発生を避けるためには,平常時から,それぞれの専用線で利用できる帯域幅のス%を単位時間当たりの通信量の上限値としてしきい値監視すればよいと考えた。このしきい値監視でアラートを検知すると,トラフィック増の原因を調査して,必要であれば専用線の契約帯域幅の増速を検討する。
次に,Cさんは,想定外のネットワーク利用などによって単位時間当たりの通信量が突発的に増えたり,A社NW機器の故障などによって単位時間当たりの通信量が突発的に減ったりすること(以下,トラフィック異常という)を検知する監視の利用を検討した。Cさんは機械学習を利用した監視(以下,機械学習監視という)の製品を調査した。
Cさんが調査した製品は,過去に収集した時系列の実測値を用いて,傾向変動や周期性から近い将来の値を予測し,異常を検知することができる。例えば,単位時間当たりの通信量について,その予測値と新たに収集した実測値を基に,トラフィック異常を検知することができる。
Cさんは,管理サーバに保存されている単位時間当たりの通信量の統計データを用いて,機械学習監視製品の試験導入を行った。Cさんは,これまで検知できなかったトラフィック異常が検知できることを確認した。さらに,⑩管理サーバに保存されている,統計データとは別のデータについても,機械学習監視製品を用いて監視することで,トラフィック異常とは別の異常が検知できることを確認した。複数のデータを組み合わせて,機械学習監視製品を用いて監視することで,ネットワーク環境の状況を素早く,かつ,詳細に把握できることが分かった。
Cさんは,機械学習監視製品の試験結果についてまとめ,B課長に報告を行い,インターネット接続環境の更改に併せて,管理サーバにしきい値監視と機械学習監視製品を導入することが決まった。
その後,A社では,Cさんがまとめたインターネット接続環境の更改案を基に設備更改が実施され,また,しきい値監視と機械学習監視製品が導入された。

図の説明テキスト
表7 FW10のルーティングテーブル(抜粋)
| 宛先ネットワークアドレス | ネクストホップ | インタフェース |
|---|---|---|
| a | (設問のため省略) | e |
| b | (設問のため省略) | e |
設問と解答・解説
設問1
〔インターネット接続環境の利用状況の調査〕について,(1)〜(3)に答えよ。
本文中の下線①について,取得時刻tにおけるカウンタ値を,取得時刻tの5分前の時刻t-1におけるカウンタ値をとしたとき,t-1とtの間における単位時間当たりの通信量(ビット/秒)を算出する計算式を答えよ。
ここで,1オクテットは8ビットとし,t-1とtの間でカウンタラップは発生していないものとする。
模範解答
(Xt-Xt-1)×8÷300
採点基準
- 2点: カウンタ値(総オクテット数)の差分 X_t-X_{t-1} を8倍してビットにし、300(秒)で割る式。同値な変形((X_t-X_{t-1})×8/300、8(X_t-X_{t-1})/300、(X_t-X_{t-1})/37.5、÷(5×60) など)、添字の書き方(Xt-1、X(t-1) など)や全角半角の揺れは満点。
- 1点: 差分は正しいが ×8 か ÷300 の一方が欠ける・誤る(÷5、÷60 など)。
- 0点: 差分の向きが逆、差分を取らないなど。
- 2点: 計算式として数学的に正しく構成されている。
- 0点: 無解答、または式として成立していない。
解説
管理サーバはSNMPを用いて5分間(300秒)ごとにカウンタ値を取得し、単位時間当たりの通信量を計算します。
- インタフェースの通信量はパケットの総オクテット数で表されます。
- 5分間の総オクテット数は、現在時刻 のカウンタ値 から、5分前 のカウンタ値 を引いた となります。
- 求める単位は「ビット/秒」であるため、1オクテット=8ビットとしてオクテット数を8倍し、時間である300秒で割ります。
- したがって、算出式は となります。
高得点のポイント
- カウンタ値の差分()を求めていること。
- オクテットからビットへの変換()を行っていること。
- 秒単位への変換()を行っていること。
本文中の下線①について,利用状況の調査を目的として,単位時間当たりの通信量(ビット/秒)を求める際に時間平均することによる問題点を35字以内で述べよ。
模範解答
取得間隔の間で発生したバースト通信が分からなくなる。
採点基準
- 3点: 取得間隔内で発生した一時的な通信量増加(バースト通信)が見えなくなる点が明確に述べられている。
- 2点: 一時的な通信量の増加(バースト・ピーク)には触れるが、取得間隔(5分)の間のものが分からなくなる点が曖昧。
- 0点: 一時的・突発的な通信量の増加に触れていない。
- 2点: 公式解答のように「取得間隔の間に発生した一時的な通信(バースト通信)が分からなくなる」と、何がどの範囲で見えなくなるかを述べている。
- 1点: 分からなくなる対象か範囲が曖昧。
- 0点: 問題点として成立していない。
解説
管理サーバは5分ごとにSNMPで取得したカウンタ値の差分を用いて、単位時間当たりの通信量を計算します。
- この計算によって算出される値は、5分間(300秒間)の平均値となります。
- そのため、5分間のうち数秒間だけ極端に通信量が増加するようなバースト通信が発生していたとしても、5分間全体で平均化されることによってピークの値がならされてしまいます。
- 結果として、突発的な通信量の増加を検知できなくなるという問題が生じます。
高得点のポイント
- 「バースト通信」などの一時的・突発的な通信が発生したという事実を含めること。
- 時間平均をすることによって、それが隠れてしまう(分からなくなる)という論理を説明すること。
本文中の下線②について,32ビットカウンタでカウンタラップが発生した際に,通信量を正しく計算するためには,カウンタ値をどのように補正すればよいか。解答群の中から選び,記号で答えよ。ここで,取得時刻tにおけるカウンタ値を,取得時刻tの5分前の時刻t-1におけるカウンタ値を,t-1とtの間でカウンタラップが1回発生したとする。
模範解答
選択肢ア: をに補正する。
解説
32ビットカウンタは、値が まで達すると、次は初期値の 0 に戻ります(カウンタラップ)。
- 取得時刻 の値が 、時刻 の値が で、この間に1回のカウンタラップが発生した場合、実際のオクテット数は最大値を超えた分増加しています。
- 0を跨いでカウントが続いているため、論理的な現在の値は実際の に を加算したものと同等になります。
- したがって、正しく通信量を計算するためには を に補正する必要があります。
各選択肢の解説
- ア: 正解。 を加算することでラップした分を正しく補正できます。
- イ: ではなく、 を足す必要があります(0を含むため、ラップ幅は になります)。
- ウ, エ: 補正すべきは現在の値 であり、過去の値 を補正するのは誤りです。
設問2
〔インターネット接続の冗長化検討〕について,(1)〜(5)に答えよ。
本文中の下線③について,図2中のルータ10やルータ11にはループバックインタフェースを作成し,iBGPのピアリングにループバックインタフェースに設定したIPアドレスを利用するのはなぜか。FW10とのインタフェースの数の違いに着目し,60字以内で述べよ。
模範解答
ルータ10とルータ11はOSPFを構成するインタフェースが二つあり,迂回路を構成できるから
採点基準
- 2点: OSPFを構成するインタフェースが複数あることを明記している。
- 1点: ループバックの利点には触れているがインタフェース数への言及がない。
- 0点: 迂回路やインタフェース数に関する本質的な説明がない。
- 2点: インタフェースが複数あることで迂回路を構成できる論理を説明している。
- 0点: 論理が不明確。
解説
図2のネットワーク構成図を確認すると、ルータ10とルータ11はOSPFエリアに属する物理インタフェースをそれぞれ2つ(ルータ10は aとc、ルータ11は bとd)持っています。
- 物理インタフェースのIPアドレスをiBGPピアリングに用いると、その物理的なリンクがダウンした際にIPアドレスへの到達性が失われ、ピアリングが切断されてしまいます。
- 一方で、ループバックインタフェースは論理的なインタフェースであるため、ルータ自体がダウンしない限りリンクダウンしません。
- ルータ10と11はOSPFによって複数の経路を持たせることができるため、一方の物理リンクがダウンしても、もう一方のリンクを経由する迂回路を利用して到達性を維持できます。
- FW10はOSPFエリアにインタフェース(e)を1つしか持たないため、ループバックインタフェースを用いても物理的な迂回路が存在しません。
高得点のポイント
FW10のルーティングテーブルを表7に示す。本文中の下線④について,書き換える設定を行わない場合に,FW10のルーティングテーブルに追加で必要になる情報はどのような内容か。表5を参考に,表7中の 空欄 a に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
α.β.γ.0/30
α.β.γ.4/30
採点基準
- 3点: α.β.γ.0/30 または α.β.γ.4/30 が正しく解答されている。
- 0点: 誤ったネットワークアドレス、または無解答。
解説
BGPの標準仕様では、「eBGPピアに経路情報を広告する際には,NEXT_HOPを自身のIPアドレスに書き換えて送信する。iBGPピアに経路情報を広告する際には,NEXT_HOPを書き換えず,そのまま送信する」となっています。
- もしルータ10、11がNEXT_HOPを自身のIPアドレスに書き換えない設定をした場合、FW10が受け取るデフォルトルート(0.0.0.0/0)のNEXT_HOPは、Z社のルータ(ルータ10Z、ルータ11Z)のIPアドレスのままとなります。
- ルータ10ZのIPアドレスは α.β.γ.1/30、ルータ11ZのIPアドレスは α.β.γ.5/30 です(図2の表を参照)。
- FW10がこれらのNEXT_HOPへパケットを転送できるようにするためには、FW10のルーティングテーブルに、これらのIPアドレスが属するネットワークアドレスの経路情報が登録されている必要があります。
- サブネットマスクが /30 であるため、α.β.γ.1/30 が属するネットワークアドレスは α.β.γ.0/30 になります。
- もう一つの α.β.γ.5/30 については空欄bの解説を参照してください。
高得点のポイント
- ネットワークアドレスの計算を正しく行い、α.β.γ.0/30 と α.β.γ.4/30 のどちらか一方を導出すること(b と順不同)。
FW10のルーティングテーブルを表7に示す。本文中の下線④について,書き換える設定を行わない場合に,FW10のルーティングテーブルに追加で必要になる情報はどのような内容か。表5を参考に,表7中の 空欄 b に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
α.β.γ.4/30
α.β.γ.0/30
採点基準
- 3点: a の解答と異なるもう一方(a が α.β.γ.0/30 なら α.β.γ.4/30、a が α.β.γ.4/30 なら α.β.γ.0/30)。a が誤り・無回答ならどちらでも3点。
- 0点: a と同じアドレス、ホストアドレスのまま(α.β.γ.1/30・α.β.γ.5/30)、それ以外。
本文中の下線⑤について,経路情報を破棄する目的を20字以内で述べよ。
模範解答
経路のループを回避するため
採点基準
- 2点: 経路のループに言及している。
- 0点: 経路ループに触れていない。
- 2点: ループを回避する(防止する)目的であることを明確に述べている。
- 1点: 表現が不適切または不明確。
- 0点: 無解答。
解説
BGPはパスベクタ型のルーティングプロトコルであり、経路情報を広告する際に、経由してきたASの番号を AS_PATH アトリビュートに記録していきます。
- もし隣接するASから受信した経路情報の AS_PATH に、すでに自身のAS番号が含まれていた場合、その経路情報は自身のASを一度通過して戻ってきたものであることを意味します。
- このような経路情報を受け入れてルーティングテーブルに登録してしまうと、パケットがAS間をぐるぐると回り続ける 経路のループ が発生してしまいます。
- そのため、BGPではループを回避する目的で、自身のAS番号が含まれる経路情報を破棄します。
高得点のポイント
- 「経路のループ」というキーワードを含めること。
- ループを「回避する(防止する、防ぐ)」目的であることを簡潔に述べること。
本文及び表3〜5中の 空欄 ア に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
短い
採点基準
- 3点: 「短い」という字句が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
表3は「最適経路選択アルゴリズムの仕様」です。評価順2では AS_PATH アトリビュートを評価します。
- AS_PATH は、経路情報がどのASを経由してきたかを示すAS番号のリストです。
- 経由するASの数が少ないほど宛先に近い経路であるとみなされるため、BGPでは AS_PATH の長さが最も短い経路情報が優先して選択されます。
高得点のポイント
- BGPの経路選択において、AS_PATH長が「短い」ものが優先されるという仕様を正確に解答すること。
本文及び表3〜5中の 空欄 イ に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
小さい
採点基準
- 3点: 「小さい」という字句が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
表3の評価順4では MED(MULTI_EXIT_DISC)アトリビュートを評価します。
- MEDは隣接するASに対して、自身のAS内に存在する宛先ネットワークへの優先度を通知するために使用されます。
- MEDはメトリックとも呼ばれ、一般にメトリックは距離やコストを表すため、値が最も小さい経路情報が優先して選択されます。
高得点のポイント
- MED値が「小さい」ものが優先されるという仕様を正確に解答すること。
本文及び表3〜5中の 空欄 ウ に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
α.β.γ.8
採点基準
- 3点: 「α.β.γ.8」が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
表4はFW10のBGPテーブルです。宛先 0.0.0.0/0 に対して、LOCAL_PREF が 200 の経路と 100 の経路の2つが存在します。
- 最適経路選択アルゴリズム(表3の評価順1)により、LOCAL_PREF の値が最も大きい経路(ここでは200の経路)が最適経路として選択され、ルーティングテーブルに反映されます。
- 表5のFW10のルーティングテーブルを確認すると、0.0.0.0/0 のネクストホップは α.β.γ.8 になっています。
- ルーティングテーブルに反映されているのは選択された最適経路(LOCAL_PREF=200)のものであるため、空欄ウの NEXT_HOP には α.β.γ.8 が入ります。
- なお、α.β.γ.8 はルータ10のループバックインタフェースのIPアドレスです(図2の表を参照)。
高得点のポイント
- LOCAL_PREFが最大の経路が選択され、それがルーティングテーブルのネクストホップと一致することを理解し、「α.β.γ.8」を導出すること。
本文及び表3〜5中の 空欄 エ に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
α.β.γ.9
採点基準
- 3点: 「α.β.γ.9」が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
表4のFW10のBGPテーブルにおいて、LOCAL_PREF が 100 の経路は、ルータ10側が利用できない場合に使用されるバックアップ経路です。
- Z社の提案した構成(図2)では、平常時はルータ10側の専用線を利用し、障害時はルータ11側を利用します。
- したがって、バックアップ経路のNEXT_HOPは、ルータ11側のIPアドレスになります。
- ルータ11にはiBGPピアリング用にループバックインタフェースが作成されており、そのIPアドレスは α.β.γ.9 です(図2の表を参照)。
- これにより、空欄エには α.β.γ.9 が入ります。
高得点のポイント
- 冗長構成におけるバックアップ側のルータのループバックIPアドレスを特定し、「α.β.γ.9」を導出すること。
本文及び表3〜5中の 空欄 オ に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
α.β.γ.17
採点基準
- 3点: 「α.β.γ.17」が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
表5のFW10のルーティングテーブルにおいて、宛先ネットワークアドレスが α.β.γ.8/32(ルータ10のループバック)の場合のネクストホップを求めます。
- FW10からルータ10のループバック宛てにパケットを転送する際、図2の構成図を見ると、FW10(インタフェースe)はルータ10の物理インタフェース c とL2SW10 を介して同じセグメント(α.β.γ.16/29)に接続されています。
- 図2の「各機器に付与されているアドレス一覧」表より、ルータ10のインタフェース c に設定されているIPアドレスは α.β.γ.17/29 です。
- したがって、FW10から見たネクストホップはルータ10のインタフェース c のIPアドレスである α.β.γ.17 となります。
高得点のポイント
- 物理的な接続構成からパケットの転送先となる隣接インタフェースを特定し、「α.β.γ.17」を導出すること。
本文及び表3〜5中の 空欄 カ に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
α.β.γ.18
採点基準
- 3点: 「α.β.γ.18」が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
表5のFW10のルーティングテーブルにおいて、宛先ネットワークアドレスが α.β.γ.9/32(ルータ11のループバック)の場合のネクストホップを求めます。
- 先ほどの解説と同様に、FW10からルータ11のループバック宛てにパケットを転送する物理経路を追います。
- 図2の構成図から、FW10(インタフェースe)はルータ11の物理インタフェース d とL2SW10 を介して同じセグメント(α.β.γ.16/29)に接続されています。
- 図2の「各機器に付与されているアドレス一覧」表より、ルータ11のインタフェース d に設定されているIPアドレスは α.β.γ.18/29 です。
- したがって、FW10から見たネクストホップはルータ11のインタフェース d のIPアドレスである α.β.γ.18 となります。
高得点のポイント
- 物理的な接続構成からパケットの転送先となる隣接インタフェースを特定し、「α.β.γ.18」を導出すること。
本文及び表3〜5中の 空欄 キ に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
キープアライブ
採点基準
- 3点: 「キープアライブ」が正しく解答されている。
- 0点: 誤答。
解説
BGPにおいて、ピア(隣接ルータ)との接続が正常であることを互いに確認し、セッションを維持するために定期的に送信されるメッセージを キープアライブ (KeepAlive)メッセージと呼びます。
- インタフェースのリンクダウンを伴わないような論理的な障害(例えば、通信経路上のスイッチ障害など)が発生した場合でも、キープアライブメッセージが一定期間受信できなくなれば、ルータはピアリングが切断されたと判断します。
- これにより、AS内の各機器の経路情報が更新され、バックアップ経路への切り替えが行われます。
高得点のポイント
- BGPで死活監視に使用されるメッセージ名「キープアライブ」を正確に解答すること。
本文中の下線⑥について,BGPの標準仕様とはどのような内容か。本文中の字句を用いて50字以内で述べよ。
模範解答
BGPテーブルから最適経路を一つだけ選択し,ルータのルーティングテーブルに反映する。
採点基準
- 4点: 「BGPテーブルから最適経路を一つだけ選択し,ルータのルーティングテーブルに反映する。」などの要素を正確に抜き出している。
- 2点: 一部の字句が一致しているが過不足がある。
- 0点: 全く異なる、または無解答。
解説
設問は「BGPの標準仕様ではトラフィックを分散する経路制御はできません」の根拠となる標準仕様の内容を本文中から探す問題です。
- 本文のBGPの標準仕様に関する説明の中に、「BGPテーブルに存在する,同じ宛先ネットワークアドレスの経路情報の中から,最適経路を一つだけ選択し,ルータのルーティングテーブルに反映する。」という記述があります。
- トラフィックを分散させる(ECMPなど)ためには、同じ宛先に対して複数の経路を同時にルーティングテーブルに登録する必要がありますが、BGPの標準仕様では一つしか選択されないため、分散ができません。
高得点のポイント
- 「BGPテーブルから最適経路を一つだけ選択し」というプロセスを含めること。
- 「ルータのルーティングテーブルに反映する」という結果を含めること。
設問2は,BGPを中心とした経路制御の問題であるが,(2)の正答率が低かった。本文中の説明を注意深く読み取り,経路制御の流れを順序立てて組み立て,正答を導き出してほしい。(4)キは,正答率が低かった。キープアライブなど,BGPに関する基本的な用語については,是非知っておいてほしい。
設問3
〔インターネット接続の冗長化手順〕について,(1)〜(4)に答えよ。
表6中の 空欄 ク に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
模範解答
選択肢エ: ループバックインタフェースの作成とIPアドレスの設定
解説
表6の冗長化手順において、手順4〜7でルーティングプロトコルの設定を順次行います。
- Z社提案の構成では、A社内部のルータ10とルータ11にループバックインタフェースを作成し、それに設定したIPアドレスを用いてiBGPのピアリングを行います。
- OSPFやBGPといったルーティングプロトコルを設定して経路を交換する前には、前提としてその通信に使用するループバックインタフェースを論理的に作成し、IPアドレスを割り当てる作業が必ず必要になります。
- したがって、最初に行う手順4は エ (ループバックインタフェースの作成とIPアドレスの設定)となります。
各選択肢の解説
- ア, イ, ウ: IPアドレスが設定されていなければルーティングプロトコルを稼働させることができないため、これらを最初に行うことはできません。
表6中の 空欄 ケ に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
表6中の 空欄 サ に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
表6中の 空欄 シ に入れる適切な機器名を,図2中の機器名で全て答えよ。
模範解答
ルータ10Z,ルータ10,FW10
採点基準
- 4点: ルータ10Z、ルータ10、FW10の3つが過不足なく挙げられている。
- 2点: 3つのうち1〜2つが欠けている、または不要な機器が含まれている。
- 0点: 全く異なる、または無解答。
解説
手順8の「静的経路の削除」を行う対象機器を答える問題です。
- 本文の「現在のA社ネットワーク環境の概要」に、「ルータ10Zには,A社が割当てを受けているグローバルIPアドレスの静的経路設定がされており」「ルータ10,FW10及びL3SW40の経路制御は静的経路制御を利用している」と記載されています。
- 今回のインターネット接続の冗長化(BGPとOSPFの導入)に関わる機器は、Z社との接続を担う ルータ10Z と ルータ10、およびDMZの境界にある FW10 です。
- L3SW40はA社内部セグメントのルーティングを担っており、今回のインターネット接続部分の動的ルーティング化の範囲外であるため、設定変更は不要です。
- したがって対象機器は、ルータ10Z,ルータ10,FW10 となります。
高得点のポイント
本文中の下線⑦について,静的経路の削除が行われた時点で,動的経路による制御に切替えが行われる理由を40字以内で述べよ。
模範解答
BGPの経路情報よりも静的経路設定の経路情報の方が優先されるから
採点基準
- 2点: 静的経路の方が BGP(動的経路)より優先されることを述べている。「アドミニストレーティブディスタンス」の語は不要。
- 0点: 優先関係に触れない、又は向きが逆(BGP が優先など)。
- 2点: 公式解答のように「静的経路が優先されるから」と理由の形で述べている(静的経路がある間は BGP の経路が使われない、という含意で足りる)。
- 1点: 優先関係は書くが理由の形になっていない・曖昧。
- 0点: 無解答。
解説
ルータの経路制御において、一般的にBGPやOSPFなどの動的経路よりも、管理者が手動で設定する静的経路(スタティックルート)の方がアドミニストレーティブディスタンス(優先度)が高く扱われます。
- そのため、手順4〜7でBGPの設定を完了し経路情報を受信していても、同じ宛先に対する静的経路が存在する間は、ルーティングテーブルには静的経路が優先して登録されたままになります。
- 手順8で静的経路を削除した瞬間に、初めて次に優先されるBGPの動的経路情報がルーティングテーブルに反映され、動的制御への切り替えが行われます。
高得点のポイント
- BGP(動的経路)よりも静的経路設定の方が優先度が高いという仕様を理解し、記述すること。
- 静的経路が削除されることで、隠れていたBGPの経路がルーティングテーブルに反映される論理を示すこと。
本文中の下線⑧について,ルータ10に対して行う操作はどのような内容か。操作の内容を20字以内で述べよ。
模範解答
eBGPピアを無効にする。
採点基準
- 2点: eBGPピアを対象としていることが明記されている。
- 0点: BGPに触れていない。
- 2点: 無効にする(切断する)という操作内容が記述されている。
- 0点: 機器の設定以外の操作、または無解答。
解説
ルータ10を交換する際、通信断の影響を最小限にするためには、事前にルータ10を経由している通信をルータ11側へ迂回させる必要があります。
- この環境ではZ社とBGPで経路制御を行っているため、ルータ10に対して、ルータ10Zとの間の eBGPピアを無効にする(シャットダウンする) 設定操作を行います。
- eBGPピアが無効になると、ルータ10Zへの経路がなくなり、Z社からの通信およびA社からの通信の経路が自動的にルータ11Zとルータ11を経由するバックアップ経路へ切り替わります。
- 物理的なケーブルの抜去ではなく「操作」と問われているため、機器の設定によってピアリングを落とすことが正解となります。
高得点のポイント
- 「eBGPピア」という対象を明記すること。
- 「無効にする(シャットダウンする、切断する)」という操作内容を明記すること。
設問3は,(3),(4)の正答率がやや低かった。(3)は異なるプロトコルを組み合わせて用いる際に,これらの信頼性に基づいて優先順位を決める経路制御の基本である。また,(4)はネットワーク構成を変更する際に,利用者に対する影響を最小限にするための通信迂回操作の一つである。それぞれよく理解してほしい。
設問4
〔トラフィック監視の導入〕について,(1)〜(3)に答えよ。
本文中の下線⑨について,問題点を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
輻輳時にエコー応答を受信することがあり検知できない。
ルータ10Zとルータ11Zの障害時に誤って検知する。
採点基準
- 3点: 次のどちらか一方を述べている。(a) 輻輳が起きていてもエコー応答を(一部)受信することがあり、アラート条件(連続5回一つも応答なし)を満たさず輻輳を検知できない、(b) ルータ10Z・ルータ11Z(監視対象機器)の障害時にも応答がなくなり、輻輳と誤って検知する。
- 1点: 方向は合うが説明不足(「パケットロスが分からない」「誤検知する」だけなど)。
- 0点: ルータ10Z・ルータ11Z が Z社の機器であること(管理権限・許可)だけを理由にしたもの、それ以外。
- 2点: 選んだ問題点を「検知できない」又は「誤って検知する」という帰結まで述べている。
- 0点: それ以外。
解説
専用線の輻輳を、監視サーバからの死活監視(ICMPエコー要求)で検知しようとする際の問題点の一つです(2つの問題点は順不同)。
- 専用線に輻輳が発生しパケットが遅延したり破棄されたりする状況でも、ICMPパケットが100%破棄されるとは限りません。
- 監視の条件は「1回につきICMPのエコー要求を3パケット送信し」「1分おきに連続して5回,一つもエコー応答を受信しなかった場合」にアラートとなるため、輻輳の合間を縫って運良くエコー応答が1つでも受信できてしまうとアラートが上がりません。
- したがって、輻輳が発生していても検知できない(見逃してしまう)問題があります。
高得点のポイント
- 輻輳が発生していてもエコー応答を受信できる(パケットロスが連続しない)場合があることに触れること。
- その結果、輻輳を「検知できない」という結論を導くこと。
本文中の下線⑨について,問題点を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
ルータ10Zとルータ11Zの障害時に誤って検知する。
輻輳時にエコー応答を受信することがあり検知できない。
採点基準
- 3点: 1つ目(q2_sq4_1_1)と異なるもう一方((a) 輻輳時もエコー応答を受信することがあり検知できない/(b) ルータ10Z・11Z の障害時に輻輳と誤って検知する)。1つ目が誤り・無回答ならどちらでも3点。
- 1点: 方向は合うが説明不足。
- 0点: 1つ目と同じ内容、Z社所有だけを理由にしたもの、それ以外。
- 2点: 帰結まで述べ、かつ1つ目と同じ内容でない。
- 0点: それ以外。
本文中の 空欄 ス に入れる適切な数値を答えよ。
模範解答
50
解説
BGPマルチパスを有効にすることで、平常時はルータ10側の専用線とルータ11側の専用線の両方を使ってトラフィックを均等に分散(ECMP)しています。
- もしどちらかの専用線に障害が発生した場合、すべてのトラフィックが残った一方の専用線に集中して流れることになります。
- 障害時にフェイルオーバーした際、残った1回線の帯域幅(100%)を超えないようにするためには、平常時において全体の通信量が1回線の帯域幅を超えていてはなりません。
- トラフィックが均等に分散されている前提では、平常時における各専用線の通信量が自身の帯域幅の 50% 以下であれば、2倍になっても100%に収まります。
- したがって、しきい値監視の上限値は帯域幅の 50(%)と設定するのが適切です。
本文中の下線⑩について,統計データとは別のデータにはどのようなデータがあるか。本文中の字句を用いて25字以内で答えよ。
模範解答
FWとプロキシサーバの通信ログデータ
採点基準
- 5点: 「FWとプロキシサーバの通信ログデータ」と完全に一致する字句を抜き出している。
- 2点: 一部の字句が一致しているが、過不足がある。
- 0点: 全く異なる字句を抜き出している、または無解答。
解説
設問は「管理サーバに保存されている、統計データとは別のデータ」を本文中から探して答える問題です。
- 本文の「現在のA社ネットワーク環境の概要」の箇条書きの5つ目に、「管理サーバには,(中略)通信量などの統計データ,FWとプロキシサーバの通信ログデータが保存されている」と記載されています。
- したがって、この記述をそのまま抜き出して解答します。
高得点のポイント
- 「FWとプロキシサーバの通信ログデータ」という本文中の字句を正確に使用すること。
また,そのデータを,機械学習監視製品を用いて監視することによって,どのようなトラフィック異常とは別の異常を検知できるようになるか。検知内容を40字以内で述べよ。
模範解答
単位時間当たりの通信ログデータ量が突発的に増えたり減ったりしたこと
採点基準
- 3点: 通信ログデータの量(単位時間当たりのログ量・件数)が突発的に増えたり減ったりしたこと(「急増・急減」可)。
- 1点: 通信ログデータの量の変化には触れるが、突発的であること・増加と減少の両方のどちらかが欠ける。
- 0点: 通信量(トラフィック)そのものの増減(=トラフィック異常)、ログの内容(不正アクセスの記録など)、それ以外。
- 2点: 突発的な増減というトラフィック異常の定義を適用して表現できている。
- 0点: 定義の適用が不明確。
解説
本文では、「想定外のネットワーク利用などによって単位時間当たりの通信量が突発的に増えたり,A社NW機器の故障などによって単位時間当たりの通信量が突発的に減ったりすること」をトラフィック異常と定義しています。
- 今回、機械学習監視の対象とするのは、先ほど解答した「通信ログデータ」です。
- したがって、通信ログデータに対する異常とは、通信量と同様に「単位時間当たりの通信ログデータ量が突発的に増えたり減ったりしたこと」となります。
- これにより、例えばマルウェア感染による不審な通信ログの急増や、プロキシサーバのプロセス停止によるログ出力の急減といった異常を検知できるようになります。
高得点のポイント
- 監視対象が「通信ログデータ」であることに対応した記述になっていること。
- トラフィック異常の定義(単位時間当たりの量が突発的に増えたり減ったりすること)を通信ログデータの量に当てはめていること。
設問4(1)は,正答率がやや低かった。専用線の輻輳を検知するためにICMPによる死活監視を用いた際の問題について問うたが,技術的な観点ではなく,ルータ10Zとルータ11ZがZ社の所有であることに着目した解答が目立った。ネットワークスペシャリストとしてICMPの特徴をよく理解し,もう一歩踏み込んで考えてほしい。