令和3年度 春期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問題 問3 データセンタの電源設備・空調設備の能力評価と可用性向上

学習ガイド

自社データセンタを題材に、自家発電設備やUPSの能力評価と、空調機障害への対応を学びます。サーバ増強計画に基づく自家発とUPSの能力限界時期の予測、高可用性を実現するためのUPSの増設先の検討、電力瞬断による空調機停止が招いたサーバ障害の経緯と、影響度判定基準の適切な見直し手順を確認し、ファシリティの制約と運用ルールの改善点を導き出します。

この記事で押さえる論点

  • サーバ機器の増強計画と自家発電設備の出力容量から、電力が不足する時期を説明できる
  • UPSの消費電力ごとの停電補償時間表を用いて、必要な補償時間を満たせなくなる時期を述べられる
  • メンテナンス時の単一障害点を排除するための、UPSの適切な増設構成を説明できる
  • 空調機の停止が引き起こすサーバ障害の連鎖を理解し、影響度判定の基準を実態に合わせて見直す方法を述べられる

問題本文

問3 データセンタのファシリティマネジメントに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

電子機器部品メーカの情報システム子会社であるW社は,自社データセンタ(以下,DCという)で,自社業務に使用する各システムを稼働させている。
DCにはコンピュータ室が2室あり,それぞれのコンピュータ室にはラックが設置され,サーバが収容されている。DCには,ファシリティマネジメント部(以下,FM部という)とシステム運用部があり,事務室で執務している。FM部は,24時間のシフト体制で担当者が2名常駐し,DC設備の監視と管理を行っている。システム運用部は,24時間のシフト体制でオペレータが4名常駐し,システムの運用と管理を行っている。

〔DCの電力供給設備〕

DCは,常用電源として電力会社から電力供給を受けている。電力会社からの電力供給に異常が発生した場合に備え,予備電源として自家発電設備(以下,自家発という)を設置している。
電力会社からの電力供給で瞬断が発生した場合や,自家発による電力供給に切替えを行う場合には,コンピュータ室への電力供給が一時的に停止する。これに備えて,蓄電池を持つUPSをラックに接続して,UPSからラックに電力供給を行っている。UPSからラックなどの電力負荷機器に連続給電できる時間(以下,停電補償時間という)は,負荷の容量に応じて変動する。
UPSは,一部を冗長構成にするための予備のUPSを含めて,7台設置している。UPSで機器故障が発生した場合は,無瞬断切替え装置によって自動的に予備のUPSからの電力供給に切り替わる。
また,近年のラック内機器の高集積化に伴う発熱量増加を受けて,コンピュータ室に設置している空調機が全て停止することを防ぐために,一部の空調機もUPSに接続して,UPSから空調機に電力供給を行うこととしている。
DCの電力供給設備と電力負荷機器を図1に示す。

図1 DCの電力供給設備と電力負荷機器
図の説明テキスト

左に「電力供給設備」(破線枠)、右に「電力負荷機器」(破線枠。コンピュータ室1・コンピュータ室2の点線枠)を置いたブロック図。
【電源と給電母線】
・電力会社は共通の給電母線に接続されている。自家発(7,500)もスイッチ(遮断状態)を介して同じ母線に接続されている。
・母線から UPS-A, UPS-B, UPS-C, UPS-D, UPS-E, UPS-F, UPS-G の 7 台全てに給電される。
・母線の最上部の分岐は UPS を経由せず、コンピュータ室1の空調機1(600)へ接続状態のスイッチで、空調機2(600)へ遮断状態のスイッチで直接つながっている。
【UPS と無瞬断切替え装置(5 台)・電力負荷機器の接続】
・UPS-C と UPS-D の出力は 1 台の無瞬断切替え装置にまとめられ、その出力は、次の (1)(2)(3) の各無瞬断切替え装置に共通に接続される。
(1) UPS-A の出力 と UPS-C/D 系 → 無瞬断切替え装置 → コンピュータ室1のラック1(1,600)
(2) UPS-B の出力 と UPS-C/D 系 → 無瞬断切替え装置 → コンピュータ室1のラック2(1,800)
(3) UPS-E の出力 と UPS-C/D 系 → 無瞬断切替え装置 → コンピュータ室2の空調機3(600)へ接続状態のスイッチ、空調機4(600)へ遮断状態のスイッチ
(4) UPS-F の出力 と UPS-G の出力 → 無瞬断切替え装置 → コンピュータ室2のラック3(600)
【凡例】
・白丸 2 つを直線で結んだ記号: 接続状態
・白丸 2 つの間が斜めに開いた記号: 遮断状態
・網掛けの四角: 無瞬断切替え装置
注記1 UPS-A, UPS-B, UPS-C, UPS-D, UPS-E, UPS-F, UPS-G は,UPS 機器名称である。なお,UPS-C, UPS-D, UPS-G は予備の UPS 機器である。
注記2 空調機2と空調機4は予備の空調機である。
注記3 自家発の括弧内に記載された数値は,出力容量(kVA:キロボルトアンペア)を,電力負荷機器の括弧内に記載された数値は,消費電力(kW:キロワット)を表す。
注記4 消費電力が 1kW の電力負荷機器には,出力容量 1.25kVA の電力供給設備が必要である。

〔電力供給設備の課題〕

(1) 自家発の課題

自家発は,出力容量7,500kVAの電力供給能力があるが,W社の事業拡大に伴い計画された2021年度のサーバ機器増強計画に基づき,電力供給設備の増強の必要性有無を検討した。その結果,サーバ機器を計画どおりに増強すると,(ア)自家発の供給電力が不足することが分かり,自家発の増強を計画した。

2021年度のサーバ機器増強計画を表1に示す。

表1 2021年度のサーバ機器増強計画
図の説明テキスト

単位 kW

時期 2021年5月 1) 8月 10月 12月 2022年2月 3月
消費電力 300 300 100 200 600 900
対象ラック ラック3 ラック3 ラック1 ラック3 ラック2 ラック1
注 1) 5月に消費電力が300kWのサーバ機器を追加し、ラック3に収容する。

(2) UPSの停電補償時間の課題

電力会社からの電力供給が一定時間停止した場合,自家発が自動で起動する。自家発の機器故障などで自動起動に失敗した場合は,FM部の担当者が自家発を手動で起動する必要がある。2018 年に自家発を設置したとき,“電力会社からの電力供給停止から,自家発を手動で切り替えて電力の供給が開始されるまでの時間”(以下,自家発切替え時間という)を測定したところ,測定結果は 5 分であった。

UPSは,電力負荷機器の消費電力及び自家発切替え時間を基に選定した。ここで,1kW の消費電力の電力負荷機器には,1.25kVA の出力容量の UPS が必要であるとして検討した。選定の結果,UPS-A,UPS-B,UPS-C,UPS-D 及び UPS-E の 5 台は,UPS タイプ①の UPS を,UPS-F 及び UPS-G の 2 台は,UPS タイプ②の UPS の採用を決定し,設置した。それぞれのタイプ別の停電補償時間は,表 2,3 のとおりである。

表2 UPS タイプ①の停電補償時間
図の説明テキスト
出力容量 (kVA) 停電補償時間(分)
0〜1,500 1) 30
1,500〜2,000 25
2,000〜2,500 20
2,500〜3,500 15
3,500〜5,000 10
5,000〜9,000 5
例 1) 0kVA より大きく 1,500kVA 以下を表す。
表3 UPS タイプ②の停電補償時間
図の説明テキスト
出力容量 (kVA) 停電補償時間(分)
0〜900 1) 36
900〜1,100 30
1,100〜1,200 24
1,200〜1,400 18
1,400〜2,000 12
2,000〜5,000 6
例 1) 0kVA より大きく 900kVA 以下を表す。

2020 年 2 月に自家発の手動起動のテストを実施したところ,FM部担当者によっては手動起動に最大 20 分掛かることが分かった。FM部は,自家発切替え時間の短縮を目的に FM部担当者の訓練を行うこととした。同時に,UPSの停電補償時間に問題がないかを確認するために,表 1 の 2021 年度のサーバ機器増強計画どおりに機器を増強した場合の必要な停電補償時間を 20 分とする条件で検討した。そこで,予備のUPS機器を除いたUPS-A,UPS-B,UPS-E,UPS-Fを対象に検討した結果,これらのUPSでは,(イ)必要な停電補償時間を満たせなくなる時期が来ることから,FM部は,UPS更新計画を策定することとした。

〔UPSの増設〕

W社は,電子機器部品にセンサや通信モジュールを取り付けることで,リアルタイムで稼働状況データを収集するIoTシステム(以下,Tシステムという)を2022年4月に稼働させることになった。Tシステムのサーバ機器は複数必要であり,ラック1及びラック3に分散して収容する。Tシステムが求める高い可用性を実現するために,UPSの冗長性を強化することとした。そこで,メンテナンスなどで一方のUPSを停止したときに,他方のUPSで障害が発生したときに備えて,電力供給を継続するために,(ウ)予備のUPSを1台増設することを計画した。

〔空調機障害の発生〕

FM部では,空調機で障害が発生した場合は,表4に示す空調機停止時の影響度判定と対応に従って,対応を行うこととしている。

表4 空調機停止時の影響度判定と対応
図の説明テキスト
影響度 判定基準 FM部の対応内容
高 コンピュータ室の温度が,しきい値を超過 W社の全社員に障害発生メールを送信する。全社横断の緊急対策チームを立ち上げ,FM部の部長が責任者として,チームを指揮し,組織的な対応を行う。
中 一部のラック内の温度が,しきい値を超過 FM部の全部員に障害発生メールを送信する。FM部員がラック内冷却対応1)と,空調機の復旧対応を行う。同時に,ラック内サーバに異常がないかをオペレータに確認し,異常がある場合は,オペレータと連携して復旧対応を行う。
低 上記以外 FM部の全部員に注意喚起の障害発生メールを送信する。FM部員が空調機の復旧対応を行う。

注1) ポータブル空調機を用いた冷却などの暫定対応を行う。

2020年10月11日23時頃,ラック1内の温度が上昇し,ラック1に収容されている,社内向けの勤怠管理システムを運用するサーバ(以下,サーバ1という)が停止した。勤怠管理システムを使ったサービスは,10月11日0時から10月12日8時までが計画停止時間帯であったので,サーバ停止による業務への影響は発生しなかった。

今回のラック1内の温度上昇は,電力会社からの電力供給で瞬断が発生し,空調機1が停止したことが原因であった。空調機2は保守作業中で使用できず,空調機1の正常性確認を行ったことで再稼働するまで50分掛かったので,ラック1の温度が上昇した。幸い,停止したサーバはサーバ1だけであった。10月11日22時30分に発生した空調機障害の対応経緯を,表5に示す。

表5 空調機障害の対応経緯
図の説明テキスト
日時 状況 対応
10/11
22:30
空調機1停止 (FM部) 空調機1の停止アラートを検知し,影響度を低として,空調機の復旧対応を開始した。
22:50 ラック1内の温度が上昇し,しきい値を超過 (FM部) 空調機1の再稼働に時間が掛かり,ラック1内の温度が上昇した。ラック1内の温度がしきい値を超過したので,影響度を中として,ラック1の冷却対応を開始した。同時に,ラック1に収容されたサーバに影響が出ていないか,オペレータに確認を依頼した。
(システム運用部) オペレータはサーバの状態に異常がないことを確認し,FM部に報告した。
23:00 イメージバックアップ1) 取得中にサーバ1が停止 (システム運用部) オペレータがサーバ1の停止を検知した。ラック1に収容されているサーバ1が停止したことを,オペレータは勤怠管理システムの担当者であるY氏とFM部に連絡した。Y氏は自宅からサーバに接続を試みたが,接続できなかった。
23:10 ラック1内の温度が正常化 (FM部) ポータブル空調機を用いてラック1の冷却対応を行った。ラック1内の温度が正常に戻ったことを確認し,暫定対応が完了したことをオペレータに連絡した。
(システム運用部) オペレータがY氏に,ラック1内の温度が正常に戻ったことを連絡した。Y氏はオペレータに,サーバ1の再起動を指示し,オペレータがサーバ1の再起動を開始した。
23:20 空調機1が正常稼働 (FM部) 空調機1の再稼働が完了し,コンピュータ室やラック内の温度が正常であることを確認した。
23:25 サーバ1が正常起動 (システム運用部) Y氏はオペレータに,サーバ1のイメージバックアップの再取得を指示し,オペレータはイメージバックアップの再取得を開始した。
10/12
0:30
イメージバックアップ再取得が正常終了 (システム運用部) オペレータがイメージバックアップの再取得が正常に終了したことを確認し,Y氏に報告した。サーバ1が正常に戻ったことを,オペレータがFM部に連絡した。
(FM部) サーバ1が正常に戻ったことで,空調機1停止の対応を終了とした。
8:00 勤怠管理システムのオンライン処理開始遅延 (システム運用部) 勤怠管理システムのオンライン処理の開始時点で,システムが異常終了した。Y氏は不具合の起きたファイルを回復し,オンラインの開始に向けた作業を行った。復旧対応に1時間掛かった。
9:00 勤怠管理システムのオンライン処理開始 (省略)

注1) 月次で実施する保守作業の最終工程で,イメージバックアップを取得している。

10月12日 8:00 に勤怠管理システムのオンライン処理が開始しなかったのは,前日の 23:00 にサーバ1が停止した際に発生したファイルの内容に関する不具合が原因であった。勤怠管理システムの担当者のY氏は,10月12日 8:00 に出社したデータベースの技術者に異常終了について相談した結果,サーバ停止の状況によってはファイルの内容に不具合が発生することがあることを伝えられ,問題の原因が判明し,復旧対応を行った。

FM部は,空調機2の保守作業中に空調機1が停止したことは大きな問題と捉え,(エ)空調機停止の再発防止策を検討することとなった。また,表5の対応を振り返り,サーバ停止を検知した時点で,関係者を巻き込んで組織的な対応を行うべきであったことから,今後は影響度を高として対応することとし,(オ)表4の判定基準を見直すことにした。

設問と解答・解説

設問1

〔電力供給設備の課題〕について,(1),(2)に答えよ。ここで,遮断状態の空調機は稼働していないものとする。また,1kW の消費電力の電力負荷機器には,1.25kVA の出力容量の電力供給設備が必要であるとする。

(1)配点 10点

本文中の下線(ア)について,表1のサーバ機器増強計画に従って機器を増強した場合,自家発の供給電力不足が発生する年月を答えよ。

模範解答

2021年12月

採点基準

知識・理解度(内容)5点
  • 5点: 回答した年月が2021年12月と一致している(2021年12月、2021/12、2021-12、2021 12、令和3年12月、2021年度12月などの表記揺れも満点)。
  • 0点: 年だけ・月だけの一致(例: 2021年10月、2022年12月)、複数の年月の併記など、正しい年月が導出されていない。
論理性(構造)5点
  • 5点: 年と月の両方を明示した1つの年月で、それが2021年12月である。
  • 0点: 上記以外(年だけ・月だけの一致に部分点は与えない)。

解説

データセンタにおける電力供給設備の容量計算と、増強計画に基づく容量不足の時期を特定する問題です。

  • 現在の電力負荷を求めます。
    図1の「電力負荷機器」のうち、稼働中(接続状態)の機器の消費電力を合計します。
    • 空調機1:600 kW600\text{ kW}
    • ラック1:1,600 kW1,600\text{ kW}
    • ラック2:1,800 kW1,800\text{ kW}
    • 空調機3:600 kW600\text{ kW}
    • ラック3:600 kW600\text{ kW}
      ※空調機2、空調機4は遮断状態であるため除外します。
      合計消費電力 = 600+1,600+1,800+600+600=5,200 kW600 + 1,600 + 1,800 + 600 + 600 = 5,200\text{ kW}
  • 必要な自家発電設備の出力容量を求めます。
    問題文より「1 kW1\text{ kW} の消費電力の電力負荷機器には、1.25 kVA1.25\text{ kVA} の出力容量の電力供給設備が必要」とあります。
    現在の必要な出力容量 = 5,200×1.25=6,500 kVA5,200 \times 1.25 = 6,500\text{ kVA}
  • 増強可能な容量の余裕を求めます。
    自家発の出力容量は 7,500 kVA7,500\text{ kVA} であるため、余裕は 7,500−6,500=1,000 kVA7,500 - 6,500 = 1,000\text{ kVA} となります。
    これを消費電力に換算すると、1,000÷1.25=800 kW1,000 \div 1.25 = 800\text{ kW} となり、あと 800 kW800\text{ kW} までの増強であれば自家発の供給電力で賄えます。
  • 不足が発生する時期を特定します。
    表1「2021年度のサーバ機器増強計画」の消費電力を累積して確認します。
    • 2021年5月:+300 kW+300\text{ kW} (累計 300 kW300\text{ kW})
    • 8月:+300 kW+300\text{ kW} (累計 600 kW600\text{ kW})
    • 10月:+100 kW+100\text{ kW} (累計 700 kW700\text{ kW})
    • 12月:+200 kW+200\text{ kW} (累計 900 kW900\text{ kW})
      12月の増強時点で累計が 800 kW800\text{ kW} を超過するため、ここで自家発の供給電力が不足します。したがって正解は「2021年12月」です。

高得点のポイント

  • 現在の稼働中の機器の消費電力を正確に合計できていること(遮断状態の機器を除外する)
  • 消費電力(kW\text{kW})と出力容量(kVA\text{kVA})の変換係数(1.251.25)を用いて、自家発の容量の余裕分を正確に計算できていること
  • 表1の増強計画の推移と照らし合わせ、超過する年月を正しく特定できていること
(2)配点 10点

本文中の下線(イ)について,必要な停電補償時間を満たせなくなる時期はいつか。UPSのタイプ別に年月を答えよ。

模範解答

UPSタイプ①:2022年2月
UPSタイプ②:2021年8月

採点基準

知識・理解度(内容)5点
  • 5点: UPSタイプ①について2022年2月と答えている(2022/2、令和4年2月、2021年度2月などの表記揺れも満点。タイプ名を書かずに年月を2つ並べただけの解答は、①→②の順に書いたものとみなす)。
  • 0点: 2022年3月(UPS-A の超過時期)など他の年月、タイプ②の年月をタイプ①として答えたもの(取り違え)、年だけ・月だけの一致など。
論理性(構造)5点
  • 5点: UPSタイプ②について2021年8月と答えている(表記揺れや順序の扱いは知識・理解度と同様)。
  • 0点: 2021年12月など他の年月、取り違え、年だけ・月だけの一致など。

解説

UPSのタイプごとに、停電補償時間が目標の 20分 を下回る時期を特定する問題です。

  • 停電補償時間20分を維持できる出力容量の上限を確認します。
    • UPSタイプ①(表2):20分を維持できるのは「2,0002,000〜2,500 kVA2,500\text{ kVA}」の範囲までです(2,500 kVA2,500\text{ kVA} を超えると15分に減少)。消費電力に換算すると、2,500÷1.25=2,000 kW2,500 \div 1.25 = 2,000\text{ kW} までとなります。
    • UPSタイプ②(表3):20分を維持できるのは「1,1001,100〜1,200 kVA1,200\text{ kVA}」(24分)の範囲までです(1,200 kVA1,200\text{ kVA} を超えると18分に減少)。消費電力に換算すると、1,200÷1.25=960 kW1,200 \div 1.25 = 960\text{ kW} までとなります。
  • 各UPSの現在の消費電力と増強計画を確認します。
    対象となる予備機以外のUPS(UPS-A、B、E、F)の接続先(図1)と、表1の増強計画を照らし合わせます。
    • UPSタイプ①の限界時期:
      • UPS-A(ラック1接続):現在 1,600 kW1,600\text{ kW}。10月に +100 kW+100\text{ kW}(計 1,700 kW1,700\text{ kW})。翌年3月に +900 kW+900\text{ kW}(計 2,600 kW2,600\text{ kW})。ここで上限の 2,000 kW2,000\text{ kW} を超えます(2022年3月)。
      • UPS-B(ラック2接続):現在 1,800 kW1,800\text{ kW}。翌年2月に +600 kW+600\text{ kW}(計 2,400 kW2,400\text{ kW})。ここで上限の 2,000 kW2,000\text{ kW} を超えます(2022年2月)。
      • UPS-E(空調機3接続):現在 600 kW600\text{ kW} であり、増強対象外です。
        したがって、タイプ①で最初に上限を超えるのはUPS-Bの「2022年2月」となります。
    • UPSタイプ②の限界時期:
      • UPS-F(ラック3接続):現在 600 kW600\text{ kW}。5月に +300 kW+300\text{ kW}(計 900 kW900\text{ kW})。8月に +300 kW+300\text{ kW}(計 1,200 kW1,200\text{ kW})。ここで上限の 960 kW960\text{ kW} を超えます。
        したがって、タイプ②で最初に上限を超えるのはUPS-Fの「2021年8月」となります。

高得点のポイント

  • 各UPSタイプにおいて、停電補償時間が20分を下回る出力容量の閾値を正しく読み取れていること
  • 各UPSがどのラックに電力を供給しているか(図1)と、どの月にどのラックが増強されるか(表1)を正しく対応づけられていること
  • 出力容量(kVA\text{kVA})と消費電力(kW\text{kW})の変換を正しく行い、超過する年月を各タイプ別に導出できていること

設問1は,正答率がやや高かった。消費電力(kW)に必要な出力容量(kVA)の算出方法は,正しく理解されているようであった。

設問2

配点 10点

〔UPSの増設〕について,本文中の下線(ウ)の対応を実施した場合,増設した UPS をどの電力負荷機器と接続すべきか。25字以内で答えよ。

模範解答

ラック3(に収容するTシステムのサーバ機器)

採点基準

知識・理解度(内容)5点
  • 5点: 接続先としてラック3(又はラック3に収容するTシステムのサーバ機器)を挙げている。理由(ラック1には予備が2台ある等)の記述は求めない。
  • 0点: ラック1・ラック2・空調機などを挙げたもの、「ラック1及びラック3」のように複数を挙げたものなど、誤った理解となっている。
論理性(構造)5点
  • 5点: 「どの電力負荷機器か」に答える形で、接続先がラック3の1つに特定されている。
  • 0点: UPSの名称(UPS-Gなど)だけで負荷機器を答えていないもの、ラック3以外を併記したものなど。

解説

新規システム(Tシステム)に求められる高い可用性を実現するために、増設する予備UPSを接続すべき箇所を特定する問題です。

  • Tシステムの要件と収容場所を確認します。
    本文「〔UPSの増設〕」より、Tシステムは ラック1及びラック3 に分散して収容されます。また、「一方のUPSを停止したときに、他方のUPSで障害が発生したとき」に備えるため、システム全体で予備機を含めて冗長構成を強化することが求められています。
  • 現在のUPSの冗長構成を図1から確認します。
    • ラック1:UPS-Aから給電されています。無瞬断切替え装置を介して「UPS-C/D系」に接続されています。UPS-CとUPS-Dはどちらも予備機であるため、ラック1に対しては 予備機が2台 確保されており、要求される冗長性をすでに満たしています。
    • ラック3:UPS-Fから給電されています。無瞬断切替え装置を介して「UPS-G」のみに接続されています。UPS-Gは予備機ですが1台しかないため、ラック3に対しては 予備機が1台 のみであり、一方のUPSが停止中に障害が発生すると電力供給が継続できません。
  • 結論:
    Tシステムが稼働するラックのうち、冗長性が不足しているのはラック3です。したがって、増設するUPSはラック3の電力供給ラインに接続する必要があります。

高得点のポイント

  • Tシステムが収容される「ラック1」および「ラック3」に絞って検討できていること
  • 図1から各ラックへの給電経路を読み解き、ラック1には予備UPSが2台、ラック3には1台しか接続されていない既存構成の違いを把握できていること
  • 冗長性が不足している箇所を特定し、「ラック3」を対象として明確に解答できていること

設問2は,新規システムの求める電力供給設備の冗長構成要件に対して,満たせていない箇所を特定する設問であった。正答率は平均的であったが,冗長性に問題がない箇所や,新規システムに関係のない箇所を特定するといった誤った解答が散見された。

設問3

〔空調機障害の発生〕について,(1),(2)に答えよ。

(1)配点 10点

本文中の下線(エ)について,空調機1の停止を防ぐために,図1のDCの電力供給設備と電力負荷機器をどのように変更すべきか。30字以内で述べよ。

模範解答

空調機1及び空調機2に接続するUPS装置を設置する。

採点基準

知識・理解度(内容)5点
  • 5点: 空調機1(及び予備の空調機2)を UPS 経由の給電に変える旨(UPS を設置して空調機1・2 に接続する等)を記述している。
  • 0点: UPS 接続の意図がないもの(空調機の増設、空調機2を常時稼働させる等)、又は既存の予備 UPS(UPS-C・UPS-D・UPS-G)や既存の UPS 系統に接続するもの。
論理性(構造)5点
  • 5点: 空調機1及び空調機2のために UPS を新たに設置して接続する旨を記述している。
  • 3点: 空調機1だけを対象に UPS を新設する、又は新設か既存か分からない「空調機1・2 を UPS に接続する」旨の記述となっている。
  • 0点: 既存の予備 UPS(UPS-C・UPS-D・UPS-G)や既存の UPS 系統(UPS-E 等)に接続する(他の UPS の冗長性を下げるため誤り)、又は UPS 接続の意図がない。

解説

空調機の瞬断による停止というインシデントを防ぐための、電力供給設備の具体的な変更内容を問う問題です。

  • 空調機障害の原因を確認します。
    本文「〔空調機障害の発生〕」より、ラック1の温度上昇は「電力会社からの電力供給で瞬断が発生し、空調機1が停止したこと」が原因でした。
  • 図1における空調機1の接続状況を確認します。
    図1を見ると、空調機3および予備の空調機4は無瞬断切替え装置を介してUPS(UPS-E等)から給電されています。一方で、空調機1および予備の空調機2は、給電母線から UPSを経由せずに直接接続 されています。このため、電力会社からの給電で瞬断が発生した際、空調機1への給電が途絶えて停止してしまいました。
  • 必要な対策を検討します。
    瞬断による空調機の停止を防ぐためには、空調機3・4と同様に、空調機1および予備の空調機2をUPSに接続 し、瞬断時でも電力が継続して供給される構成に変更する必要があります。
    ※既存の予備UPS(UPS-C等)を割り当てる解答は、他のラックの冗長性を低下させてしまうため不適切です。全体の冗長性を保つためには、空調機1および2用に新たなUPSを設置する必要があります。

高得点のポイント

  • 図1の結線図から、空調機1および空調機2がUPSを経由せず給電母線に直結されている構成上の課題を読み取れていること
  • 空調機1だけでなく、予備機である空調機2についても同様の対策が必要であることを考慮できていること
  • 他の設備の冗長性を損なわないよう、空調機1・2専用のUPSを新たに設置する旨を明確に記述できていること
(2)配点 10点

本文中の下線(オ)について,表4の判定基準の記述内容をどのように見直すべきか。40字以内で述べよ。

模範解答

表4の影響度高の判定基準に,“又はサーバに異常発生”を追加する。

採点基準

知識・理解度(内容)5点
  • 5点: 本文の方針に従い、サーバ停止を検知した時点で直ちに影響度を「高」と判定できるよう見直す必要があることを正しく理解している。
  • 0点: サーバ停止時に影響度を上げる必要性を把握できていない。
論理性(構造)5点
  • 5点: 影響度「高」の判定基準に、サーバの停止や異常発生の条件を追加する旨を明確に記述できている。
  • 0点: 設問の要求に反して対応内容の変更を記述している、あるいは影響度「高」の判定基準への追加であることが不明確である。

解説

インシデントの対応経緯を踏まえて、影響度の判定基準をどのように見直すべきかを問う問題です。

  • 判定基準見直しの背景を確認します。
    本文「〔空調機障害の発生〕」の末尾において、「サーバ停止を検知した時点で、関係者を巻き込んで組織的な対応を行うべきであったことから、今後は影響度を高として対応することとし、表4の判定基準を見直すことにした」と記載されています。
  • 現在の判定基準(表4)を確認します。
    • 影響度「高」の判定基準:「コンピュータ室の温度が、しきい値を超過」
    • 影響度「中」の判定基準:「一部のラック内の温度が、しきい値を超過」
  • 発生したインシデント(表5)の経緯を振り返ります。
    10/11 22:50の時点では「ラック1内の温度が上昇し、しきい値を超過」したため影響度「中」と判定されていました。その後、23:00に「サーバ1が停止」しましたが、表4の判定基準に「サーバ停止」が含まれていなかったため、影響度「高」に格上げされず、組織的な対応が行われませんでした。
  • 見直し内容:
    FM部の方針通り「サーバ停止を検知した時点」で直ちに影響度を「高」とするため、表4の 影響度「高」の判定基準に、「サーバの異常発生(停止)」という条件を追加 する必要があります。
    ※設問では「表4の判定基準の記述内容をどのように見直すべきか」が問われており、対応内容の変更を記述するのは誤りです。

高得点のポイント

  • 本文の「サーバ停止を検知した時点で…影響度を高として対応する」という方針の記述を正しく把握できていること
  • 見直しの対象箇所を「影響度が高の判定基準」に特定できていること
  • 「対応内容」ではなく「判定基準」を変更するという設問の指示に従い、サーバの異常発生(停止)を条件に加える旨を明確に記述できていること

設問3は,正答率は平均的であったが,設問を正しく理解していないと思われる解答が散見された。(1)では,予備のUPSを利用する解答が散見されたが,他UPSの冗長性を下げてしまうことから,誤りである。部分的な冗長性だけでなく,全体の冗長性の把握が重要であることを理解してほしい。(2)は判定基準の変更を求める設問であったが,対応内容の変更を記述する誤った解答が散見された。設問で明示した条件を正しく理解して,解答してほしかった。

Spineチーム