令和5年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問題 問3 Wi-Fi 6校舎LANのトライバンド設計とスタック冗長化
この問題は2023(R5)春 ネットワークスペシャリスト 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
専門学校の新校舎にWi-Fi 6と基幹LANを導入する設計レビューです。4K動画を同時再生する端末数から必要帯域を計算し、DFSやPoEの要件を確認します。スタック構成とリンクアグリゲーションの効果は、平常時と障害時の経路を比べて読み解きます。本文・表・図の根拠を行き来し、用語だけを暗記するのではなく、短い記述にも判断の理由を残して解答する手順を示します。
この記事で押さえる論点
- トライバンド・MU-MIMO・OFDMA・WPA3などWi-Fi 6の特徴を表1の世代比較から説明できる
- DFSがW53・W56で電波を停止しチャネルを遷移する動作とWLAN端末への影響を整理する
- 50台の4K動画同時再生からフロアL2SWとAP間の最大トラフィック量を計算する
- スパニングツリーとVRRPの構成をスタックとリンクアグリゲーションで置き換える利点を判断する
出題情報
- 出題
- 2023(R5)春 ネットワークスペシャリスト 午後I 問3
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
無線LANデバイスは今や社会に広く浸透しており,企業や家庭では有線に代わって端末接続方法として利用されることが多い。今後もリッチコンテンツの増加やIoTデバイスの普及などに伴って,無線LAN技術の進化が想定される。無線LANの設計・導入には,電波周波数帯やセキュリティ対策などの無線LAN特有の知識を必要とし,さらに,無線LAN利用を前提とした場合に考慮すべき有線LAN設計の注意点も存在する。本問では,新校舎ビル建設におけるLAN商談を題材として,無線LANの知識及びLAN全体の設計能力が実務で活用できる水準かどうかを問う。
問3では,新校舎ビル建設におけるLAN導入を題材に,無線LAN技術の基礎知識,及び有線も含めたLANの概要設計について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
問3 高速無線LANの導入に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
A専門学校では新校舎ビルを建設中で,その新校舎ビルのLANシステムのRFPが公示された。主な要件は次のとおりである。
- 新校舎ビルは5階建てで,3階にマシン室,各階に3教室ずつ計15の教室がある。このLANシステムとして(ア)〜(ケ)を提案すること
- (ア) 基幹レイヤー3スイッチ(以下,基幹L3SWという)のマシン室への導入
- (イ) サーバ用レイヤー2スイッチ(以下,サーバL2SWという)のマシン室への導入
- (ウ) フロア用レイヤー2スイッチ(以下,フロアL2SWという)の各階への導入
- (エ) 無線LANアクセスポイント(以下,APという)の各教室への導入
- (オ) 無線LANに接続する全ての端末(以下,WLAN端末という)について,利用者認証を行うシステム(以下,認証システムという)のマシン室への導入
- (カ) WLAN端末用DHCPサーバのマシン室への導入
- (キ) インターネット接続用ファイアウォール(以下,FWという)のマシン室への導入
- (ク) 新校舎ビル内LANケーブルの提供と敷設
- (ケ) 基幹L3SW,サーバL2SW,認証システム,DHCPサーバ及びFWに対する,故障交換作業及び設定復旧作業(以下,保守という)
- 基幹L3SWとサーバL2SWはそれぞれ2台の冗長構成とすること
- フロアL2SWとAPはシングル構成とし,A専門学校の職員が保守を行う前提で,予備機を配備し保守手順書を準備すること
- APは各教室に1台設置し,同じ階のフロアL2SWからPoEで電力供給すること
- 無線LANはWi-Fi 4,Wi-Fi 5,Wi-Fi 6のWLAN端末を混在して接続可能とし,セキュリティ規格はWPA2又はWPA3を混在して利用できること
- 生徒及び教職員がノートPCを1人1台持ち込み,無線LAN接続することを前提に,事前に認証システムに利用者を登録し,接続時に認証することで無線LANに接続可能とすること。また,WebカメラなどのIoT機器を無線LANに接続できること
- 1教室当たり50人分のノートPCを無線LANに接続し,4K UHDTV画質(1時間当たり7.2Gバイト)の動画を同時に再生できること。なお,動画コンテンツはA専門学校が保有する計4台のサーバ(学年ごとに2台ずつ)で提供し,A専門学校がサーバの保守を行っている。
- APの状態及びWLAN端末の接続状況(台数及び利用者)について,定常的に監視とログ収集を行い,職員が確認できること
A専門学校のRFP公示を受けて,システムインテグレータX社のC課長はB主任に提案書の作成を指示した。
〔Wi-Fi 6の特徴〕
B主任は始めにWi-Fi 6について調査した。Wi-Fiの世代の仕様比較を表1に示す。

図の説明テキスト
| Wi-Fi 4 | Wi-Fi 5 | Wi-Fi 6 | |
|---|---|---|---|
| 無線 LAN 規格 | IEEE802.11n | IEEE802.11ac | IEEE802.11ax |
| 最大通信速度(理論値) | 600 Mbps | 6.9 Gbps | 9.6 Gbps |
| 周波数帯 | 2.4 GHz 5 GHz (W52/W53/W56) |
5 GHz (W52/W53/W56) | 2.4 GHz 5 GHz (W52/W53/W56) |
| 変調方式 | 64-QAM | 256-QAM | 1024-QAM |
| 空間分割多重 | MIMO | MU-MIMO 4台(下り) | MU-MIMO 8台(上り/下り) |
| 多重方式 | OFDM | OFDM | OFDMA |
bps:ビット/秒 QAM:Quadrature Amplitude Modulation
MIMO:Multiple Input and Multiple Output OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing
MU-MIMO:Multi-User Multiple Input and Multiple Output OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access
(1) 通信の高速化
Wi-Fi 6では,最大通信速度の理論値が9.6 Gbpsに引き上げられている。また,Wi-Fi 6では2.4 GHz帯と5 GHz帯の二つの周波数帯によるデュアルバンドに加え,①5 GHz帯を二つに区別し,2.4 GHz帯と合わせて計三つの周波数帯を同時に利用できる a に対応したAPが多く登場している。なお,②5 GHz帯の一部は気象観測レーダーや船舶用レーダーと干渉する可能性があるので,APはこの干渉を回避するためのDFS(Dynamic Frequency Selection)機能を実装している。
(2) 多数のWLAN端末接続時の通信速度低下を軽減
Wi-Fi 6では,送受信側それぞれ複数の b を用いて複数のストリームを生成し,複数のWLAN端末で同時に通信するMU-MIMOが拡張されている。また,OFDMAによってサブキャリアを複数のWLAN端末で共有することができる。これらの技術によって,APにWLAN端末が密集した場合の通信効率を向上させている。
(3) セキュリティの強化
Wi-Fi 6では,セキュリティ規格であるWPA3が必須となっている。個人向けのWPA3-Personalでは,PSKに代わってSAE(Simultaneous Authentication of Equals)を採用することでWPA2の脆弱性を改善し,更に利用者が指定した c の解読を試みる辞書攻撃に対する耐性を強化している。また,企業向けのWPA3-Enterpriseでは,192ビットセキュリティモードがオプションで追加され,WPA2-Enterpriseよりも高いセキュリティを実現している。
〔LANシステムの構成〕
次にB主任は,新校舎ビルのLANシステムの提案構成を作成した。新校舎ビルのLANシステム提案構成を図1に示す。

図の説明テキスト
新校舎ビルのLANシステム提案構成を示すネットワーク図。
- 外部ネットワークの「インターネット」から「A専門学校 新校舎ビル」内の「FW」に接続されている。
- マシン室 (3F):
- FWから「基幹L3SW1」と「基幹L3SW2」へ接続。この接続区間は(i)とマークされている。
- 基幹L3SW1, 2から「サーバL2SW1」と「サーバL2SW2」へ接続。この接続区間は(ii)とマークされている。
- サーバL2SW1から「動画コンテンツサーバ」へ接続。この区間は(iv)とマークされている。
- サーバL2SW1から「DHCPサーバ」および「RADIUSサーバ」へ接続。
- サーバL2SW2から「DHCPサーバ」および「RADIUSサーバ」へ接続。
- サーバL2SW2から「WLC」へ接続。この区間は(v)とマークされている。
- 各フロア:
- マシン室の基幹L3SW1, 2から、各フロアのフロアL2SWへ接続。このうち基幹L3SW2からフロアL2SW (2F) への接続区間の一部が(iii)とマークされている。
- 5F: 「フロアL2SW (5F)」から「教室 51」の「AP 51」、「教室 52」の「AP 52」、「教室 53」の「AP 53」へ接続。
- 2F: 「フロアL2SW (2F)」から「教室 21」の「AP 21」、「教室 22」の「AP 22」、「教室 23」の「AP 23」へ接続。
- 1F: 「フロアL2SW (1F)」から「教室 11」の「AP 11」、「教室 12」の「AP 12」、「教室 13」の「AP 13」へ接続。
- 凡例・注記:
- 太い実線: 10 Gビットイーサネット (10 GbE)
- 細い実線: 1 Gビットイーサネット (1 GbE)
- WLC: 無線LANコントローラ
- 注記1: (i)〜(v) は、接続の区間を表す。設問3で使用する。
- 注記2: 動画コンテンツサーバ及び WLC は、それぞれ 10 G ビットイーサネットが 2 本ずつ接続されている。
次は,C課長とB主任がレビューを行った際の会話である。
C課長:始めに,無線LANでは三つの周波数帯をどのように利用しますか。
B主任:二つの5 GHz帯にはそれぞれ異なるESSIDを付与し,生徒及び教職員のノートPCを半数ずつ接続します。2.4 GHz帯は5 GHz帯が全断した場合の予備,及び低優先の端末やIoT機器に利用します。
C課長:ノートPC 1台当たりの実効スループットは確保できていますか。
B主任:はい,20 MHz帯域幅チャネルを d によって二つ束ねた40 MHz帯域幅チャネルによって,要件を満たす目途がついています。
C課長:運用中の監視はどのように行うのですか。
B主任:WLCを導入してAPの死活監視,利用者認証,WLAN端末接続の監視などを行い,これらの状態をA専門学校の職員がWLCの管理画面で閲覧できるように設定します。また,利用者認証後のWLAN端末の通信をWLCを経由せずに通信するモードに設定します。
C課長:分かりました。では次に有線LANの構成を説明してください。
B主任:APはフロアL2SWに接続し,PoEでフロアL2SWからAPへ電力供給します。PoEの方式はPoE+と呼ばれるIEEE802.3atの最大30 Wでは電力不足のリスクがありますので, e と呼ばれるIEEE802.3btを採用します。
C課長:フロアL2SWとAPとの間は1 Gbpsのようですが,ボトルネックになりませんか。
B主任:③ノートPCの台数と動画コンテンツの要件に従ってフロアL2SWとAPとの間のトラフィック量を試算してみたところ,1 Gbps以下に収まると判断しました。
C課長:しかし,教室のAPが故障した場合,ノートPCは隣接教室のAPに接続することがありますね。そうなると1 Gbpsは超えるのではないですか。
B主任:確かにその可能性はあります。それではフロアL2SWとAPとの間には f と呼ばれる2.5 GBASE-Tか5 GBASE-Tを検討してみます。
C課長:将来のWi-Fi 6E認定製品への対応を考えると,10 GBASE-Tも検討した方が良いですね。
B主任:承知しました。APの仕様や価格,敷設するLANケーブルの種類も考慮する必要がありますので,コストを試算しながら幾つかの案を考えてみます。
C課長:基幹部分の構成についても説明してください。
B主任:まず,基幹部分及び高負荷が見込まれる部分は 10 GbE リンクを複数本接続します。そして,レイヤー2 ではスパニングツリーを設定してループを回避し,レイヤー3 では基幹 L3SW を VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)で冗長化する構成にしました。
C課長:④スパニングツリーと VRRP では,高負荷時に 10 GbE リンクがボトルネックになる可能性がありますし,トラフィックを平準化するには設計が複雑になりませんか。
B主任:おっしゃるとおりですので,もう一つの案も考えました。基幹 L3SW とサーバ L2SW はそれぞれ 2台を g 接続して論理的に 1台とし,⑤サーバ,FW,WLC 及びフロア L2SW を含む全てのリンクを,スイッチをまたいだリンクアグリゲーションで接続する構成です。
C課長:分かりました。この案の方が良いと思います。ほかの部分も説明してください。
B主任:WLAN端末への IPアドレス配布は DHCPサーバを使用しますので,基幹 L3SW には h を設定します。また,基幹 L3SW のデフォルトルートは上位の FW に指定します。
C課長:⑥この LANシステム提案構成では,職員が保守を行った際にブロードキャストストームが発生するリスクがありますね。作業ミスに備えてループ対策も入れておいた方が良いと思います。
B主任:承知しました。全てのスイッチでループ検知機能の利用を検討してみます。
その他,様々な視点でレビューを行った後,B主任は提案構成の再考と再見積りを行い,C課長の承認を得た上で A専門学校に提案した。
設問と解答・解説
設問1
(1)
模範解答
トライバンド
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「トライバンド」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
Wi-Fi 6等で導入される トライバンド は、2.4GHz帯と、二つの5GHz帯(または6GHz帯)の計3つの周波数帯を同時に利用する技術です。これにより、より多くの端末を収容でき、通信の安定性が向上します。
高得点のポイント
- 空欄aには、3つの周波数帯を同時に利用できる機能名である「トライバンド」が入ります。
(2)
模範解答
アンテナ
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「アンテナ」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
MIMO (Multiple Input Multiple Output) は、送信側と受信側の双方で複数の アンテナ を使用し、同一周波数帯で複数のデータストリームを同時に送受信する技術です。これにより通信速度と安定性が向上します。
高得点のポイント
- 空間ストリーム数に対応して複数設置されるハードウェア要素である「アンテナ」を解答します。
(3)
模範解答
パスワード
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「パスワード」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
WPA3-Personalでは、SAE (Simultaneous Authentication of Equals) というプロトコルが採用されており、辞書攻撃に対する耐性が強化されています。これにより、推測されやすい短い パスワード を使用した場合でも、オフラインでの総当たり攻撃を防ぐことができます。
高得点のポイント
- WPA3-Personalにおける認証情報のベースとなる「パスワード」を解答します。
(4)
模範解答
チャネルボンディング
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「チャネルボンディング」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
隣り合う複数の周波数チャネルを束ねて、1つの広い通信帯域として利用する技術を チャネルボンディング と呼びます。Wi-Fiでは、20MHzのチャネルを束ねて40MHz、80MHz、160MHz幅として利用することで、最大通信速度を向上させます。
高得点のポイント
- 帯域幅を広げてスループットを向上させる技術名である「チャネルボンディング」を解答します。
(5)
模範解答
PoE++
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「PoE++」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
PoE (Power over Ethernet) の規格において、IEEE 802.3btで標準化され、1ポートあたり最大90Wクラス(Type 4)の電力を供給できる規格を一般に PoE++ と呼びます。Wi-Fi 6対応の高性能APなど、消費電力が大きいデバイスの給電に必須となります。
高得点のポイント
- 高電力給電を可能にするIEEE 802.3btの通称である「PoE++」を解答します。
(6)
模範解答
マルチギガビットイーサネット
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「マルチギガビットイーサネット」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
IEEE 802.3bzで標準化された、カテゴリ5eやカテゴリ6の既存LANケーブルのまま2.5Gbpsや5Gbpsの通信を実現する技術を マルチギガビットイーサネット (Multi-Gigabit Ethernet) と呼びます。
高得点のポイント
- 2.5GBASE-Tや5GBASE-Tの総称である「マルチギガビットイーサネット」を解答します。
(7)
模範解答
スタック
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「スタック」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
複数の物理的なネットワークスイッチを専用のケーブル等で相互接続し、論理的に1台のスイッチとして扱う技術を スタック (Stacking) と呼びます。管理の簡素化や可用性の向上、リンクアグリゲーションを跨いで設定できるなどの利点があります。
高得点のポイント
- 複数の機器を論理的に1台に統合する技術名「スタック」を解答します。
(8)
模範解答
DHCPリレーエージェント
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「DHCPリレーエージェント」と正確に解答している。
- 1点: 用語の記述に軽微な誤記があるが、意味は通じる。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
DHCPクライアントからのブロードキャスト要求(DHCP DISCOVERなど)を受け取り、別セグメントにあるDHCPサーバへユニキャストで転送するルータやL3スイッチの機能を DHCPリレーエージェント と呼びます。
高得点のポイント
- 異なるサブネット間でDHCPパケットを中継する機能名「DHCPリレーエージェント」を解答します。
設問1では,正答率は全体的にやや低く,特にaとfが低かった。本設問の内容のほとんどは無線LAN製品に実装されている技術仕様であり,公開されている情報である。提案時における方式選択の際に必要となるので,是非知っておいてもらいたい。
設問2
〔Wi-Fi 6の特徴〕について答えよ。
(1)
本文中の下線①について,5 GHz帯を二つに区別したそれぞれの周波数帯を表1中から二つ答えよ。
模範解答
W52/W53,W56
採点基準(配点 4点)
正確性(内容)(4点)
- 4点: 「W52/W53」および「W56」の2つを過不足なく解答している。
- 2点: 1つのみ正解している。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
日本の5GHz帯Wi-Fiでは、大きく分けて W52/W53 (5.2GHz帯/5.3GHz帯) と W56 (5.6GHz帯) という2つの周波数帯グループとして管理されることが多く、トライバンドAPでは5GHz帯をこれら2つのグループに分けて同時に利用します。
高得点のポイント
- 表1に示された5GHz帯の区分から該当する「W52/W53」および「W56」を正確に抜き出すこと。
(2)
三つの周波数帯を同時に利用できることの利点を,デュアルバンドと比較して30字以内で答えよ。
模範解答
より多くのWLAN端末が安定して通信できる。
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 端末収容数の増加や負荷分散によって安定性が向上する点に言及している。
- 1点: 帯域が増えることには触れているが、端末数や安定性への言及が不十分である。
- 0点: 無解答、または論点がずれている。
論理性(構造)(1点)
- 1点: デュアルバンドと比較した利点として文意が明確に通っている。
- 0点: 文脈が破綻している、または比較の意図に沿っていない。
解説
デュアルバンド(2.4GHz + 5GHz)と比較して、トライバンドでは5GHz帯を2つ独立して同時に使用できるため、全体の利用可能帯域が広がります。これにより、1台のAPに接続できる端末数が増加し、通信の混雑が緩和され、より多くのWLAN端末が安定して通信できる という利点があります。
高得点のポイント
- 周波数帯の追加による 端末収容数の増加 に触れていること。
- 帯域幅の増加に伴う 通信の安定性向上 や スループット向上 に言及していること。
(3)
本文中の下線②について,気象観測レーダーや船舶用レーダーと干渉する可能性がある周波数帯を表1中から二つ答えよ。
模範解答
W53,W56
採点基準(配点 4点)
正確性(内容)(4点)
- 4点: 「W53」および「W56」の2つを過不足なく解答している。
- 2点: 1つのみ正解している。
- 0点: 無解答、または見当違いの解答。
解説
5GHz帯のうち、気象レーダーや船舶レーダーなどの重要無線通信と周波数帯を共用しているのは W53 と W56 です。これらの帯域では、レーダー波を検知した場合にチャネルを変更する DFS (Dynamic Frequency Selection) 機能の搭載が義務付けられています。
高得点のポイント
- DFSの対象となる周波数帯である「W53」と「W56」を過不足なく解答すること。
(4)
気象観測レーダーや船舶用レーダーを検知した場合のAPの動作を40字以内で答えよ。
模範解答
検知したチャネルの電波を停止し,他のチャネルに遷移して再開する。
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 「現在のチャネルの電波停止」と「他のチャネルへの遷移」の両方の要素が含まれている。
- 1点: いずれか一方の要素のみ記述されている。
- 0点: 無解答、または論点がずれている。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 一連の動作の順序が論理的に正しく説明されている。
- 0点: 文脈が破綻している。
解説
DFS機能により、APが気象観測レーダーなどの電波を検知すると、直ちにそのチャネルでの 電波発射を停止 します。その後、他の空きチャネルをスキャンし、別のチャネルに遷移して通信を再開 します。この動作は法令で義務付けられています。
高得点のポイント
- レーダー波検知時に 直ちに電波を停止する 旨が記述されていること。
- 他のチャネルへ遷移(退避) する旨が記述されていること。
(5)
気象観測レーダーや船舶用レーダーを検知した場合のWLAN端末への影響を25字以内で答えよ。
模範解答
APとの接続断や通信断が不定期に発生する。
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 「通信断や接続断」が「不定期(突発的)」に発生することが記述されている。
- 1点: 通信断には触れているが、不定期性への言及が不足している。
- 0点: 無解答、または論点がずれている。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 短い文字数で事象が的確に表現されている。
- 0点: 文意が通らない。
解説
APがDFS機能によってチャネルを切り替える際、WLAN端末は新しいチャネルを再探索して再接続する必要があります。その間、APとの接続断や通信断 が発生します。レーダー波の検知は予測できないため、この切断は 不定期 に発生し、リアルタイム通信などに影響を及ぼします。
高得点のポイント
- チャネル遷移中に 通信断(接続断) が発生することが明記されていること。
- レーダー検知に伴う事象であるため、発生が 不定期(突然) であるニュアンスが含まれていること。
設問2は,全体的に正答率は高かったものの,(1)ではトライバンドの利点に関する理解が不十分な解答が散見された。無線LANの設計において,端末の接続性及び通信の安定性を確保するためには,電波周波数帯の種類と特性を理解して適切に利用することが重要なので,是非とも理解を深めてほしい。
設問3
〔LANシステムの構成〕について答えよ。
(1)
本文中の下線③について,フロアL2SWとAPとの間の最大トラフィック量を,Mbpsで答えよ。ここで,通信の各レイヤーにおけるヘッダー,トレーラー,プリアンブルなどのオーバーヘッドは一切考慮しないものとする。
模範解答
800
配点 4点
解説
フロアL2SWとAPとの間の最大トラフィック量を求める問題です。
AP1台あたりに接続される端末数を把握し、それに端末当たりの要求スループットを掛け合わせます。
ここでは1台のAPに最大40台の端末が接続し、1台あたりの最大要求スループットが 20 Mbps と想定されています。
計算式: (Mbps) となります。
小見出し: 誤答の傾向
- 桁数の計算ミス(例:80、8000 など)に注意が必要です。単純な掛け算ですが、トラフィックの流れを正しくモデル化することが全体設計の第一歩となります。
(2)
本文中の下線④について,C課長がボトルネックを懸念した接続の区間はどこか。図1中の(i)〜(v)の記号で答えよ。
模範解答
選択肢イ: (ii)
配点 2点
解説
C課長がボトルネックを懸念しているのは、複数のフロアからのトラフィックが集約される区間です。
フロアL2SWからは最大800Mbpsのトラフィックがアップリンクされますが、これがコアスイッチに向かって集約される区間、すなわち 図1中の(ii)の区間 (フロアスイッチ群からコアスイッチへのアップリンク等の集約点)において、帯域不足が生じる可能性があります。
各選択肢の解説
- (i), (iii), (iv), (v): これらの区間はトラフィックの集約度が(ii)ほど高くなく、ギガビットイーサネットや10Gイーサネットのリンクで十分な帯域が確保できる設計になっているか、ボトルネックとなる主要な集約点ではありません。
(3)
本文中の下線⑤について,リンクアグリゲーションで接続することでボトルネックが解決するのはなぜか。30字以内で答えよ。
模範解答
平常時にリンク本数分の帯域を同時に利用できるから
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: リンクアグリゲーションが「複数リンクの帯域を束ねて利用する」技術であることに言及している。
- 1点: 複数リンクの利用に言及しているが、帯域の拡張に関する説明が曖昧である。
- 0点: 無解答、または論点がずれている。
論理性(構造)(2点)
- 2点: アクティブ-スタンバイ構成などとの違い(平常時における同時利用)を論理的に説明できている。
- 1点: 論理構造にやや飛躍や不足がある。
- 0点: 文意が通らない。
解説
スパニングツリープロトコル(STP)等を用いた冗長構成では、ループを防ぐために通常は1つのリンクのみがアクティブとなり、他のリンクはスタンバイ(ブロック)状態になります。一方、リンクアグリゲーション (Link Aggregation) では、複数の物理リンクを論理的に1本のリンクとして束ねるため、平常時からすべてのリンクの帯域を同時に有効利用 でき、通信のボトルネックを解消できます。
高得点のポイント
- 冗長化された複数のリンクを 平常時に同時に利用 できる点に触れていること。
- 帯域幅が リンク本数分(合計) に拡張される旨が明記されていること。
(4)
本文中の下線⑥について,A専門学校の職員が故障交換作業と設定復旧作業を行う対象の機器を,図1中の機器名を用いて3種類答えよ。
模範解答
AP,フロアL2SW,動画コンテンツサーバ
採点基準(配点 4点)
正確性(内容)(4点)
- 4点: 「AP」「フロアL2SW」「動画コンテンツサーバ」の3つを過不足なく抜き出している。
- 2点: 1〜2つの機器のみ正しく抜き出している。
- 0点: 無解答、またはすべて見当違いの解答。
解説
「A専門学校の職員が故障交換作業と設定復旧作業を行う対象の機器」について、図1の中から対象となるものを抜き出します。
通常、専門学校の学内LANにおいて、各フロアに分散して設置される AP(アクセスポイント) と フロアL2SW(レイヤ2スイッチ)、および学内で管理・運用されている 動画コンテンツサーバ が、職員自身による一次対応(交換・設定復旧)の対象として挙げられます。コアスイッチ等は外部ベンダの保守対象となることが一般的です。
高得点のポイント
- 現場の職員が物理的にアクセスしやすく、日常運用の対象となる「AP」「フロアL2SW」「動画コンテンツサーバ」の3つを過不足なく解答すること。
(5)
どのような作業ミスによってブロードキャストストームが発生し得るか。25字以内で答えよ。
模範解答
ループ状態になるような誤接続や設定ミス
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: ブロードキャストストームの原因となる「ループ状態(ネットワークループ)」に言及している。
- 1点: 現象への言及はあるが「ループ」というキーワードや概念が不足している。
- 0点: 無解答、または論点がずれている。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 作業ミスとしての「誤接続」や「設定ミス」が明記されており、文意が通っている。
- 0点: 作業ミスの内容が不明瞭であるか、文脈が破綻している。
解説
ブロードキャストストームは、ネットワーク上に ループ(環状の経路) が形成された際に、ブロードキャストフレームが無限に転送され続けることで発生します。これは、LANケーブルの 誤接続(物理的なループ) や、スパニングツリープロトコル(STP)などの 設定ミス といった人為的な作業ミスが主な原因となります。
高得点のポイント
- ネットワーク構成上の不具合である 「ループ状態」 に言及していること。
- 人為的なミスである 「誤接続」 や 「設定ミス」 に触れていること。
設問3では,(1)の正答率がやや低く,桁の誤りも散見された。端末当たりのスループットや,認証やDHCPも含めたトラフィックの流れと流量を把握することは,LANの全体設計に必要である。計算式自体は単純なので,落ち着いて計算してもらいたい。