令和7年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後I 問1 OSPF/VRRP環境の無停止ルータ更改
テクノロジネットワーク
この問題は2025(R7)春 ネットワークスペシャリスト 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
冗長化された企業ネットワークでルータを無停止で更改する手順を設計する問題です。OSPFのコスト変更で事前にトラフィックを迂回させ、VRRPの切替を制御しながら機器を交換する一連の流れは、ネットワーク運用実務の縮図といえます。正答率が高かった問題なので確実に取り切りたいところです。この記事では、各手順の時点で通信がどの経路を通っているかを追いながら、手順の設計意図と確認方法を解説します。
この記事で押さえる論点
- OSPFのコスト設計とVRRPの切替動作を説明する
- ネットワークを止めずに機器を交換する手順の設計意図を理解する
- 事前・事後の疎通確認(ping)の宛先を根拠つきで選ぶ
出題情報
- 出題
- 2025(R7)春 ネットワークスペシャリスト 午後I 問1
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
企業におけるICTの利活用が進み,企業ネットワークの安定稼働はますます重要になっている。企業ネットワークの停止に伴う業務インパクトは大きく,企業ネットワークのメンテナンスによる短時間の停止ですら計画しにくくなってきている。本問では,冗長化設計がなされた企業ネットワークにおけるルータの更改を題材として,OSPFやVRRPといったプロトコルの理解,及びこれらの技術を活用した企業ネットワークの停止を伴わないメンテナンスの手法について問う。
問1では,冗長化設計がなされた企業ネットワークにおけるルータの更改を題材に,OSPFやVRRPといったプロトコルの理解,及びこれらの技術を活用した企業ネットワークの停止を伴わないメンテナンスの手法について出題した。全体として正答率は高かった。
問題本文
問 1 ルータの更改に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
A社は,従業員 800人の建設機械販売会社である。大阪本社のほか,東京に支社を構えている。大阪本社と東京支社間は,広域イーサネットサービス網と IPsec VPN の冗長構成(以下,WAN という)で接続されている。A社のネットワーク(以下,A社 NW という)はインターネットと接続している。また,WAN を経由してプライベートクラウドである C社の SaaS(以下,C社 SaaS という)と接続している。
A社 NW の一部を構成するルータのメーカーサポートが終了するので,A社情報システム部はルータの更改プロジェクトを立ち上げ,ネットワーク担当の Bさんが担当することになった。
〔現在の A社 NW〕
現在の A社 NW を図 1に示す。

図の説明テキスト
図1 現在のA社 NW (抜粋) のネットワーク構成図。
図の左上にはL3SW10のvlanと収容する機器名を示す表がある。
| vlan | 収容する機器名 |
|---|---|
| vlan10 | FW10 |
| vlan20 | R10, R11 |
| vlan30 | L2SW10 |
| vlan40 | L2SW11, L2SW12 |
構成図は大きく「大阪本社」「東京支社」「C社データセンター」に分かれている。
大阪本社は、FW10が「(ア)インターネット」に接続し、R10が「広域イーサ網」に、R11が「IPsec VPN」に接続されている。FW10, R10, R11はL3SW10に接続されている。L3SW10配下には、「(イ)サーバセグメント」(L2SW10)と「内部ネットワーク」(L2SW11, L2SW12, 複数のPC)が存在する。
東京支社は、R20が「広域イーサ網」に、R21が「IPsec VPN」に接続されている。R20, R21は内部ネットワークのL2SW20に接続し、配下に複数のPCがある。
C社データセンターは、R30が「広域イーサ網」に、R31が「IPsec VPN」に接続されている。R30, R31はL2SW30を介して「(ウ)C社SaaS」に接続されている。
FW10と(ア)インターネットの間、(ウ)C社SaaSとL2SW30の間にはeBGPのピアを示す両矢印がある。大阪本社のL3SW10、R10、R11、および広域イーサ網とIPsec VPNを経由して東京支社のR20、R21を含む範囲がOSPFのエリアとして網掛けされている。
図の下部には機器略称の凡例(L2SW: レイヤー2スイッチ, L3SW: レイヤー3スイッチ, FW: ファイアウォール, R: ルータ)、広域イーサ網: 広域イーサネットサービス網、OSPFのエリア、eBGPのピアの凡例と注記1、注記2が記載されている。
注記1 FW10とL3SW10は冗長構成であるが,図では省略している。
注記2 L3SW10のポートは全てアクセスポートである。
現在の A社 NW の概要を次に示す。
- A社の従業員は,内部ネットワークの PC を利用して,インターネットやサーバセグメント内のサーバ群及び C社 SaaS と通信し,業務を行っている。
- A社 NW では,動的経路制御の一つである OSPF を利用している。
- IPsec VPN は DMVPN (Dynamic Multipoint VPN) を用いて広域イーサ網と同様のフルメッシュトポロジを実現している。また,IPsec VPN は,次に示すように広域イーサ網と同様の経路制御を行っている。
- A社 NW の OSPF のエリアは,エリア ID が 0.0.0.0 と表記される,aエリアだけで構成されている。
- FW10, R10, R11, L3SW10, R20, R21, R30, R31 の各機器が OSPF ルータとして動作している。
- OSPF ルータにはループバックインタフェースが作成され,ループバック IP アドレスが設定されている。ループバック IP アドレスは,OSPF ルータを識別する b ID として利用されている。
- OSPF の経路交換をしないインタフェースは,パッシブインタフェースとして設定されている。
- OSPF の経路交換をするインタフェースでは,①OSPF のネイバー認証を行うことで,安全に経路交換をするようにしている。
- OSPF のコスト設定によって,通常は広域イーサ網を利用して通信し,広域イーサ網で通信できない場合は IPsec VPN を利用して通信する設計にしている。OSPF ルータの各インタフェースにおける OSPF のコスト設定を表 1 に示す。

図の説明テキスト
表1 OSPFルータの各インタフェースにおけるOSPFコスト設定
| 項番 | OSPFルータのインタフェース種別 | OSPFコスト設定 |
|---|---|---|
| 1 | 広域イーサ網接続インタフェース | 100 |
| 2 | IPsec VPN接続インタフェース | 1000 |
| 3 | ループバックインタフェース | 1 |
| 4 | その他のインタフェース | 10 |
- FW10 は,インターネットに向けたデフォルトルートを設定しており,OSPF にインターネット向けのデフォルトルートの配布を行っている。
- FW10 はインターネットと接続し,NAPT によって IP アドレスとポート番号の変換を行っている。
- R30,R31とC社SaaSはeBGPで接続し,経路交換を行っている。eBGP接続は認証を行うことで,安全に経路交換をするようにしている。
- ②R30,R31は,eBGPで経路広告する際にAS_PATHプリペンド設定をしている。通常はR30を利用して通信し,R30を利用して通信できない場合はR31を利用して通信する設計にしている。
- R30,R31は,eBGPの経路をOSPFに再配布を行っている。
- R30,R31は,OSPFの経路をeBGPに再配布し,経路広告している。
- R30,R31は,eBGPの経路をOSPFに,OSPFの経路をeBGPにそれぞれ再配布を行っていることから,経路情報のループを防止するために,eBGP接続でプレフィックスリストによる経路フィルタリングを行っている。
- R20,R21の内部ネットワークと接続するインタフェースでは,PCに設定するデフォルトルートのネクストホップに相当する,cの可用性を向上するために,VRRPが動作している。
- VRRPのプライオリティの値はR20を105に,R21を100に設定している。
- VRRPはプリエンプトを設定し,プライオリティの値が大きいルータが常にマスターになるように制御している。また,③プリエンプトディレイを設定し,プライオリティの値が高いルータの電源をオンにした際や再起動した際などは,一定時間が経過した後にマスターに状態遷移するように制御している。
〔ルータ更改手順の作成〕
更改対象のルータは,図1中のR10,R11,R20,R21,R30,R31である。A社情報システム部のD課長は,次の方針に従ってルータ更改手順を作成するようにBさんに指示した。
- 更改対象のルータは,同じルータメーカーの後継機種と交換を行う。後継機種は,更改対象のルータから取得した設定内容で動作することが保証されている。
- 更改対象のルータを停止しても業務影響がないよう,あらかじめ設定変更によって通信が更改対象のルータを迂回するようにしてからルータを停止し,交換作業を行う。
- 交換作業後は,必要な確認を行った後に,設定変更によって通信の迂回を解除する。
Bさんは方針に従って,ネットワークシミュレーターを使って動作確認をしながら,ルータ更改手順を作成した。ネットワークシミュレーターはメーカーから提供されているソフトウェア製品であり,A社NWと同等の環境をPCで仮想的に再現できる。
Bさんは,R10を後継機種の新しいR10(以下,新R10という)に更改する手順を作成した。Bさんは,④更改手順実施中に業務影響がないことを確認する方法として,内部ネットワークのPCから継続してpingコマンドを実行することにした。また,継続してpingコマンドの結果が正常で,パケットロスが確認されなければ業務影響がないと判断することにした。Bさんが作成したR10の更改手順を表2に示す。

図の説明テキスト
表2 Bさんが作成したR10の更改手順
| 項番 | 作業内容 |
|---|---|
| 1-1 | R10の⑤OSPFのコストを変更することで,通信がR10を迂回するようにする。 |
| 1-2 | 通信がR10を迂回して正常に行えることを確認する。 |
| 1-3 | R10の⑥全ての物理インタフェースを閉塞することで,R10をA社NWから切り離す。 |
| 2-1 | R10の設定内容を保存し,手元にコピーを取得してR10の電源をオフにする。 |
| 2-2 | R10の全てのイーサネットケーブルを抜去する。 |
| 2-3 | R10の電源ケーブルを抜去し,R10を事前に設定内容が保存されている新R10と交換する。 |
| 2-4 | 新R10の電源ケーブルを接続し,新R10の電源をオンにする。 |
| 2-5 | 新R10の起動後,項番2-1で取得した設定内容と比較し,想定外の差分がないことを確認する。 |
| 2-6 | 新R10に全てのイーサネットケーブルを接続する。 |
| 3-1 | 新R10の全ての物理インタフェースの閉塞を解除する。 |
| 3-2 | ⑦新R10からpingコマンドを実行し,結果が正常でパケットロスがないことを確認する。 |
| 3-3 | 新R10のOSPFのコストを変更することで,通信の迂回を解除する。 |
| 3-4 | 通信が新R10を経由して正常に行えることを確認する。 |
注記 各項番の作業内容を実施するたびに,継続して実行している ping コマンドの状況を確認する。
BさんはR11,R20,R21,R30,R31についてもそれぞれの更改手順を作成した。ネットワークシミュレーターを使って,継続してpingコマンドを実行しながらそれぞれの更改手順を実施し,pingコマンドの結果が正常でパケットロスがないことを確認した。更改手順に問題がないことを確認できたので,Bさんは更改手順書としてまとめた。Bさんは作成した更改手順書をD課長に提出し,承認された。
設問と解答・解説
設問1
〔現在のA社NW〕について答えよ。
(1)
本文中の a に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
バックボーン
採点基準(配点 5点)
正確性(内容)(5点)
- 5点: 正解の「バックボーン」と完全に一致している。
- 3点: 軽微な誤字・脱字があるが、バックボーン領域を指していることが明確にわかる。
- 0点: 無解答、または上記に該当しない誤答。
解説
OSPFネットワークの基本的な階層構造に関する設問です。
OSPFでは、ネットワーク全体を複数のエリアに分割して管理することで、経路計算の負荷を軽減します。
このとき、中心となる中核エリアをエリア0(バックボーンエリア)と呼び、他のすべてのエリアはこのバックボーンエリアに接続される構成をとる必要があります。
高得点のポイント
- 本文の文脈から、エリア0の別名である「バックボーン」という用語を正確に抜き出して(あるいは導き出して)記述できているか。
(2)
本文中の b に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
ルータ
採点基準(配点 5点)
正確性(内容)(5点)
- 5点: 正解の「ルータ」と完全に一致している。
- 3点: 軽微な表記揺れがあるが、ルータを指していることが明確にわかる。
- 0点: 無解答、または上記に該当しない誤答。
解説
企業ネットワークにおけるルーティング機器に関する基礎知識を問う設問です。
ネットワーク層(L3)において、異なるネットワーク同士を接続し、パケットの宛先IPアドレスに基づいて最適な経路(ルート)を判断して転送する機器はルータ(またはL3スイッチ)です。
文脈上、経路制御を行う主体としての名称を答える箇所となります。
高得点のポイント
- ネットワークの経路制御を担う機器として「ルータ」という用語を正確に記述できているか。
(3)
本文中の c に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
デフォルトゲートウェイ
採点基準(配点 5点)
正確性(内容)(5点)
- 5点: 正解の「デフォルトゲートウェイ」と完全に一致している。
- 3点: 軽微な表記揺れがあるが、デフォルトゲートウェイを指していることが明確にわかる。
- 0点: 無解答、または上記に該当しない誤答。
解説
端末が自身と異なるネットワークへ通信を行う際の宛先に関する設問です。
PCなどの端末は、自身の所属するサブネット外にパケットを送信する場合、あらかじめ設定されたルータ(出口となる機器)へパケットを送信します。
この出入り口となる機器のIPアドレス設定をデフォルトゲートウェイと呼びます。
VRRP等のプロトコルを用いて、このデフォルトゲートウェイを冗長化することが企業ネットワークの安定稼働には不可欠です。
高得点のポイント
- 異なるネットワークへの通信の出入り口を示す用語「デフォルトゲートウェイ」を正確に記述できているか。
(4)
本文中の下線①について,OSPFのネイバー認証によって,どのような問題を防止することができるか。経路交換の安全性の観点から35字以内で答えよ。
模範解答
不正なOSPFルータと隣接関係になり経路交換してしまう問題
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 「不正なOSPFルータとの隣接関係」や「不正な経路交換」を防ぐというOSPFの仕組みを正しく理解し記述できている。
- 1点: 不正なルータからの防御については触れられているが、隣接関係や経路交換についての言及が不足している。
- 0点: 無解答、またはOSPFのネイバー認証の目的に関する記述がない。
論理性(構造)(2点)
- 2点: どのような問題を防止できるかについて、因果関係が論理的かつ簡潔にまとめられている。
- 1点: 論理構造にやや飛躍や曖昧さがあるが、意味は通じる。
- 0点: 文章として意味が通じない、または問いに答えていない。
解説
OSPFのセキュリティ機能である「ネイバー認証」の目的を問う設問です。
OSPFでは、隣接するルータとネイバー関係(隣接関係)を確立し、経路情報を交換します。もし認証機能がなければ、悪意のある第三者が不正なルータをネットワークに接続し、偽の経路情報を流すことでトラフィックを傍受・破棄する攻撃が可能になります。
ネイバー認証を設定することで、正しい認証キーを持つ正規のルータとのみ隣接関係を結び、安全な経路交換を担保できます。
高得点のポイント
- 不正なルータと隣接関係(ネイバー)になってしまう問題を防止する旨が記述されていること。
- 不正な経路交換を防ぐという結果が論理的に記述されていること。
(5)
本文中の下線②について,R31が経路広告するAS_PATH長はR30と比較してどうする必要があるか,答えよ。
模範解答
長くする。
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: BGPの経路選択において、迂回させるためにAS_PATHを「長くする」必要があることを正しく理解している。
- 1点: AS_PATHを変更する意図は読み取れるが、「長くする」ことが明確でない。
- 0点: 無解答、または誤った設定内容を記述している。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 「R30と比較してどうする必要があるか」という問いに対し、端的に回答できている。
- 1点: 冗長な表現が含まれるが、回答の意図は伝わる。
- 0点: 問いに対する直接的な回答になっていない。
解説
BGP(Border Gateway Protocol)における経路選択アルゴリズムの制御手法に関する設問です。
BGPでは、宛先ネットワークに到達するまでに経由するAS(Autonomous System)のリストであるAS_PATH属性を参照します。通常、BGPはAS_PATHのリストが短い(経由するASの数が少ない)経路を優先します。
したがって、トラフィックを迂回させる(優先度を下げる)ためには、自身のAS番号を複数回付与するなどして、広告するAS_PATH長を意図的に長くする(AS_PATH Prepending)必要があります。
高得点のポイント
- 経路の優先度を下げるためにはAS_PATH長を「長くする」必要があることを正しく理解し、記述できていること。
(6)
本文中の下線③について,ルータの電源をオンにした際や再起動した際に一定時間待つのは,ルータがどのような状態になることを待つためか。OSPFを利用していることに着目して25字以内で答えよ。
模範解答
OSPFの経路情報が収束した状態
採点基準(配点 5点)
知識・理解度(内容)(3点)
- 3点: 動的経路制御(OSPF)において、「経路情報の収束(コンバージェンス)」が完了する状態を待つ必要があることを正確に理解している。
- 1点: 経路の安定化について言及しているが、「収束」などの適切な専門用語が用いられていない。
- 0点: 無解答、またはOSPFの経路情報に関する記述がない。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 「どのような状態になることを待つためか」という問いに対し、状態を的確に説明できている。
- 1点: 説明が不十分だが、経路交換の完了を待つ意図は読み取れる。
- 0点: 文章として成立していないか、問いに答えていない。
解説
OSPFなどの動的ルーティングプロトコルを利用している環境での機器再起動時の振る舞いに関する設問です。
ルータの電源を入れた直後や再起動直後は、他のルータとのネイバー関係が確立されておらず、十分な経路情報を持っていません。そのため、すぐに通信を開始するとパケットロスやルーティングループが発生する恐れがあります。
ネットワーク全体のルーティング情報が行き渡り、すべてのルータで一貫したルーティングテーブルが完成した状態を収束(コンバージェンス)と呼びます。ルータとしての役割を果たすためには、このOSPFの経路情報が収束した状態になるまで待つ必要があります。
高得点のポイント
- OSPFにおける経路情報が全体に行き渡る状態を「収束」というキーワードを含めて表現できていること。
- ルータが役割を果たすために必要な状態が論理的に説明されていること。
設問1では,(4)の正答率がやや低かった。動的経路制御を利用しているルータが,ルータとしての役割を果たすためには,経路情報が収束している必要があることをしっかり理解してほしい。
設問2
〔ルータ更改手順の作成〕について答えよ。
(1)
本文中の下線④について,R10の更改手順実施中に,大阪本社の内部ネットワークからpingコマンドを実行する際の宛先にすべき対象と,東京支社の内部ネットワークからpingコマンドを実行する際の宛先にすべき対象を,R10を経由する通信に着目して,図1中の(ア)~(ウ)の記号で全て答えよ。
模範解答
大阪本社: (ウ)、東京支社: (ア),(イ)
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 大阪本社からの宛先(ウ)および東京支社からの宛先(ア、イ)を正確に理解できている。
- 1点: 一部の宛先は正しく選択できているが、過不足がある。
- 0点: 無解答、または全く誤った宛先を選択している。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 大阪本社と東京支社それぞれについての回答が明確に区別して記載されている。
- 1点: 区別が曖昧であるが、どの記号がどちらのものか推測できる。
- 0点: 解答の区別がつかず、意図が伝わらない。
解説
ルータ更改時における、通信経路の正常性確認(ping試験)に関する設問です。
特定のルータ(R10)を経由する通信が正しく確立できているかを確認するためには、ネットワーク構成図(図1)を正確に読み解く必要があります。
- 大阪本社からの通信: R10を経由して到達する宛先となるため、適切な機器(記号ウ)を指定する必要があります。
- 東京支社からの通信: 同様に、R10を経由する通信フローとなる宛先(記号ア、イ)を漏れなく指定する必要があります。
高得点のポイント
- 大阪本社、東京支社それぞれの送信元から見た際に「R10を経由する」正しい宛先記号を全て選択できていること。
- 回答の対応関係(どちらからの通信の宛先か)が整理されていること。
(2)
表2中の下線⑤について,R10のインタフェースに設定するOSPFのコストをどのような値に変更すべきか。30字以内で答えよ。
模範解答
65535といった十分大きな値に変更する。
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: OSPFのコストを変更して通信を迂回させるために「十分大きな値(例: 65535)」に変更するという知識を正確に持っている。
- 1点: コストを大きくすることには触れているが、具体的な値の目安や「十分大きな」というニュアンスが欠けている。
- 0点: 無解答、またはコストを小さくするなど誤った知識を記述している。
論理性(構造)(2点)
- 2点: どのような値に変更すべきかについて、具体的かつ簡潔に述べられている。
- 1点: やや冗長または不明瞭な箇所があるが、意味は通じる。
- 0点: 問いに対する回答として成立していない。
解説
OSPFを利用したネットワークにおける、意図的なトラフィック制御(経路の迂回)に関する設問です。
OSPFは経路の優先度をコスト(Cost)というメトリックで計算し、コストが最小となる経路を最適経路としてルーティングテーブルに登録します。
ルータ更改作業などのメンテナンス時に、対象機器を経由するトラフィックを事前に別の経路へ迂回させるためには、対象ルータのインタフェースに設定されたOSPFコストを十分大きな値(例: 65535など)に変更します。これにより、他の経路のコストのほうが相対的に小さくなり、通信が迂回されます。
高得点のポイント
- OSPFのコストを「十分大きな値(65535など)」に変更するという実践的なテクニックを理解していること。
- 迂回を目的としたメトリック操作であることが簡潔に表現できていること。
(3)
表2中の下線⑥について,項番2-1の電源をオフにする前に全ての物理インタフェースを閉塞する理由を30字以内で答えよ。
模範解答
物理インタフェース閉塞の方が素早く切り戻せるから
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 予想外の問題が発生した際に、電源オフからの再起動よりも「物理インタフェースの閉塞の解除」の方が素早く切り戻せる(影響を最小限にできる)ことを正しく理解している。
- 1点: 切り戻しについて言及しているが、「素早さ」や「影響の最小化」という観点が弱い。
- 0点: 無解答、または切り戻しに関する記述がない。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 電源オフの前に閉塞を行う理由として、切り戻しの観点から因果関係が論理的に説明されている。
- 1点: 論理的な飛躍が一部見られるが、大意は通じる。
- 0点: 理由として成立していない文章である。
解説
ネットワーク機器のメンテナンス手順における、リスク低減と切り戻しの考慮に関する設問です。
ルータを更改・停止する際、いきなり電源をオフにしてしまうと、対向機器がリンクダウンやルーティングプロトコルのネイバーダウンを検知するまでにタイムラグが生じ、通信断が発生するリスクが高まります。また、万が一問題が発生した際、機器の電源を再度オンにしてOSを起動させるには時間がかかります。
一方、事前に物理インタフェースを閉塞(shutdown)しておけば、対向機器へ即座にリンクダウンを通知でき、トラブル時にもインタフェースの開放(no shutdown)を行うだけで素早く切り戻すことが可能です。
高得点のポイント
- 問題発生時の影響を最小限にするため、素早く切り戻せるという利点が記述されていること。
- 電源操作とインタフェース操作の時間的・影響的差異が論理的に説明されていること。
(4)
表2について,項番2-6のイーサネットケーブルを接続する際に,誤ったインタフェースに接続しないようにするために,項番2-2の前にどのような手順を追加すべきか。25字以内で答えよ。
模範解答
イーサネットケーブルにラベルを付与する。
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 誤接続を防ぐための物理的な対策として、「ケーブルにラベルを付与する」などの具体的な手順を理解している。
- 1点: 目印をつけることには触れているが、具体的な対象(ケーブル等)が不明確である。
- 0点: 無解答、または誤接続防止に繋がらない手順を記述している。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 追加すべき手順が具体的かつ実行可能な形で簡潔に記述されている。
- 1点: 手順としての記述がやや曖昧であるが、意図は読み取れる。
- 0点: 手順として成立していない文章である。
解説
ルータの物理的なリプレース(交換)作業における人為的ミス(ヒューマンエラー)を防止する手順に関する設問です。
既存ルータから複数のイーサネットケーブルを抜線し、新しいルータへ結線し直す際、誤ったポートに接続してしまうとネットワーク障害に直結します。
これを防止するためには、抜線する前(項番2-2の前)の段階で、イーサネットケーブルにラベルを付与する(どのポートに接続されていたかを示す目印をつける)手順を追加することが極めて有効です。
高得点のポイント
- 誤接続防止のための具体的かつ物理的な対策として「ラベルの付与」や「目印をつける」ことが記述されていること。
- 追加すべき手順として簡潔かつ実行可能な表現となっていること。
(5)
表2中の下線⑦について,新R10からpingコマンドを実行する際の宛先にすべき対象を,図1中の機器名を用いて四つ答えよ。
模範解答
L3SW10
R11
R20
R30
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 新R10からpingを実行する際の宛先として、適切な4つの機器(L3SW10, R11, R20, R30)を正確に把握している。
- 1点: 一部の機器は正解しているが、不足または誤った機器が含まれている。
- 0点: 無解答、または全く異なる機器を選択している。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 指定された条件に従い、機器名が明確に列挙されている。
- 1点: 列挙の形式にやや見づらさがあるが、内容は確認できる。
- 0点: 機器名として判読できない。
解説
新しいルータ(新R10)をネットワークに組み込んだ後の、疎通確認試験における対象機器の選定に関する設問です。
新R10が正しく動作し、周囲のネットワークと正常にルーティングできているかを確認するためには、新R10から見て主要な隣接機器や通信経路上にある重要なノードへpingコマンドによる疎通確認を行う必要があります。
図1の構成から、新R10が通信可能であることを担保するために適切な機器(L3SW10, R11, R20, R30)を正確に拾い上げる力が求められます。
高得点のポイント
- 図1のネットワーク構成から、新R10が疎通を確認すべき対象機器を漏れなく4つ抽出できていること。
- 指定された通り「機器名を用いて」過不足なく列挙されていること。
設問2では,(2)及び(3)の正答率が低かった。(2)については,OSPFのコストを変更することで通信を迂う回する場合,コストを十分大きな値に変更することで対応できることが多い。経路制御にOSPFを利用したネットワークで使えるテクニックとしてぜひ知っておいてもらいたい。(3)については,事前に動作確認をした手順通りに実施すれば問題は起きないとは限らない。手順を作成する際は,各工程で予想外の問題が発生することを想定し,万が一問題が発生した際は影響を最小限にできること,素早く切り戻せることなどの考慮が非常に重要である。ネットワーク技術者として使用するプロトコルの理解を深め,使いこなせるスキルを身に付けてほしい。