令和7年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午後I 問題 問3 法改正対応によるプロジェクト計画変更

マネジメント進捗管理リスクマネジメントステークホルダー・要員プロジェクト計画

この問題は2025(R7)秋 プロジェクトマネージャ 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

学習ガイド

実施中のシステム開発プロジェクトに法改正対応が割り込む場面を扱った、統合マネジメントの問題です。プロジェクトオーナーの変更による責任の再配置、影響を受けない部分の先行開発、メンバー追加に伴うリスク、バッファの置き方、そしてコンティンジェンシー計画まで、計画変更に伴う判断が幅広く問われます。この記事では、各判断をスケジュール・品質・体制のトレードオフ解消として位置付けながら解答を導きます。

この記事で押さえる論点

  • 外部環境の変化(法改正)を機にした目標・体制の見直しを説明する
  • 先行開発やメンバー追加に起因するリスクを特定する
  • スケジュールバッファとコンティンジェンシー計画の設計を理解する

問題本文

問3 プロジェクト実施中の計画変更に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

商品取引事業を行っているA社の取引管理システムは,来年4月末にハードウェアの保守期限切れを迎える。そこで,A社では,ハードウェアの更改に合わせて取引管理システムを改修し,来年3月末にリリースするプロジェクト(以下,本プロジェクトという)を実施している。7月初めの現時点では,7月末の要件定義完了に向けて,計画どおり活動を進めている状況である。

本プロジェクトの開発メンバーは,現行の取引管理システムの開発担当者が中心であり,A社システム部の課長であるB氏が本プロジェクトのプロジェクトマネージャ(PM)である。B氏は,以前は業務部門に所属しており,取引管理システムの過去の改修で,要件確定後に顧客の利便性向上という顧客価値の創出につながる機能の要件変更をシステム部に要求したことがあった。しかしながら,業務部門から定量的な効果の提示がなかったので,システム部は対応がリリース時期に間に合わないことを懸念し,要件変更を受け入れなかったことから,顧客価値の創出が実現できなかった。このような経緯があり,業務部門は顧客価値の創出を実現するシステム開発を行うために,システム部内にも顧客価値の創出を考えられる組織風土を醸成していく必要があると考えた。その一環として,昨年度B氏をシステム部に異動させた。

〔法改正への対応〕

来年4月初めから施行される商品取引に関わる法改正の内容が,本年6月末に公開された。法改正の内容は二つあり,一つは,商品取引に関わる本人確認の扱いを厳格化するもの(以下,規制強化という)で,全ての取引事業者は来年4月初めから遵守しなければならない。もう一つは,現在規制されている一部の決済方法を可能とするもの(以下,規制緩和という)で,取引事業者の判断で来年4月初め以降の任意の時期に導入できる。この規制緩和は,A社の顧客価値の創出につながるものである。A社経営層は,必要な追加予算は妥当性を評価して承認することを前提に,4月初めのハードウェアの更改に対応する取引管理システムの改修と規制強化への対応は必達とすること,規制緩和にも極力早期に対応することをシステム部に指示した。

システム部のC部長は,本プロジェクトのリリース時期と法改正への対応が同一時期となること,及び法改正の影響を受けるシステムは取引管理システムであることから,法改正への対応を本プロジェクトの要件に追加することにした。システム部には,システム障害の防止や期限厳守などの“QCD遵守”の方針があり,C部長はこの方針に沿った計画変更の検討をB氏に指示した。B氏が影響を調査したところ,規制強化への対応は,機能の一部を制限することで実現できるので,現在の本プロジェクトの開発メンバーの稼働が増えてコスト増にはなるが,追加予算が承認されればQCDを遵守して対応できる見通しとなった。一方で,規制緩和への対応は,A社の顧客価値の創出につながるものではあるが,現在の本プロジェクトの開発メンバーだけでは対応できず,特に業務部門の協力が不可欠である。B氏は検討結果を報告し,C部長は,“現状では規制強化への対応までを計画変更の対象とすべき”との認識を示した。

C部長への報告後,業務部門の役員であり,B氏の元上司だったD常務からB氏に連絡があり,他社に先行して規制緩和へ対応し,顧客の利便性向上を実現することが顧客価値の創出に必要であり,十分な追加予算の承認を受けて法改正の施行時期に対応すべきであるとの思いが伝えられた。D常務の話を受けてB氏は,規制緩和への対応は,業務部門が重視する顧客価値の創出につながるものと理解したが,C部長による規制緩和への対応を含む計画変更の了承が必要である。B氏は,システム部での検討状況をD常務に報告した上で,業務部門の目指すシステム開発を実現する好機と捉えて,D常務に次の事項の検討を依頼した。

  • 規制緩和への対応の追加予算の確保について,経営会議での承認を得るために,業務部門に,ある事項の実施を指示してもらいたい。
  • 顧客価値の創出は本プロジェクトの開発メンバーだけでは実現できないので,新たに業務部門のメンバーが主体的にプロジェクトへ参加して,顧客価値の創出に必要となる役割を果たすように動機付けしてもらいたい。
  • プロジェクトの責任者として,D常務にプロジェクトオーナーになってもらいたい。

〔プロジェクトの計画変更〕

B氏は,本プロジェクトの目標には,これまでシステム部が重視していたQCD遵守の目標だけではなく,業務部門が重視する目標も含める必要があるとC部長に提案した。C部長もこの提案に理解を示したものの,“業務部門の重視する目標の達成は,業務部門がプロジェクトの責任部署となり,その下でシステム部がQCDを遵守する責任分担でなければ難しい”との意見だった。そこでB氏は,規制緩和への対応を含めた計画変更をするに当たり,先の依頼事項への対応も含めて,D常務がプロジェクトオーナーとなって業務部門が責任をもつことを,D常務からC部長に説明してもらった

〔スケジュールの作成とリスクへの対応〕

スコープSのうちスコープTの開発の影響を受けないと考えられる部分の開発を先行して進めることとし、さらにプロジェクトメンバーを追加することにしたが,C部長からのアドバイスを受けて,スケジュールバッファの設定方法を工夫した。さらに,これらの対応策を実行してもスコープTの開発がスケジュールどおりに進まない場合に備えたコンティンジェンシー計画を作成して,D常務と合意することにした。B氏は,これらの計画をC部長に説明し,さらに,プロジェクトオーナーであるD常務の了承を得て,プロジェクト計画を変更した。

設問と解答・解説

設問1

〔法改正への対応〕について答えよ。

(1)

本文中の下線①について,B氏が,D常務から業務部門に実施を指示してもらいたいと考えた事項は何か。25字以内で答えよ。

模範解答

規制緩和に対応する場合の定量的な効果算出

採点基準(配点 7点)

知識・理解度(内容)(4点)

  • 4: 法改正(規制緩和)に伴う計画変更において、業務部門が実施すべき「定量的な効果算出」について正確に理解し記述できている。
  • 2: 効果算出などの必要性には触れられているが、規制緩和への対応という前提条件の記述が不足している。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 25字以内で、D常務から指示してもらうべき事項の構成として論理的かつ自然にまとまっている。
  • 1: 内容は部分的に正しいが、文章構造が不自然で意図が伝わりにくい。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、プロジェクトマネージャ(PM)が法改正に伴う計画変更において、外部環境の変化によるトレードオフ解消のためにD常務を通じて業務部門に何を指示させるかを問うものです。

解答の根拠

業務部門が実施すべき事項として、法改正への対応によるメリットを明確にするために定量的な効果算出を行う必要があります。D常務から指示してもらうことで、業務部門の協力を確実に引き出す狙いがあります。

高得点のポイント

  • 規制緩和に対応する場合の言及
  • 定量的な効果算出の明記

(2)

本文中の下線②について,B氏が,D常務から動機付けしてもらいたいと考えた,顧客価値の創出に必要となる業務部門のメンバーが果たす役割は何か。25字以内で答えよ。

模範解答

規制緩和を顧客の利便性向上につなげる役割

採点基準(配点 7点)

知識・理解度(内容)(4点)

  • 4: 規制緩和を活かし、顧客の利便性向上につなげるという業務部門の役割を正確に理解し記述できている。
  • 2: 顧客の利便性向上には言及しているが、規制緩和という外部環境変化の視点が欠けている。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 25字以内で、動機付けの対象となる役割の記述として論理的かつ簡潔にまとまっている。
  • 1: キーワードは含まれるが、文章として不自然であり意味が伝わりにくい。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、顧客価値の創出に向けて業務部門に求められる役割を問うものです。

解答の根拠

業務部門はシステムの単なるユーザーにとどまらず、規制緩和を活かして顧客の利便性向上を実現するという積極的な役割を担うべきです。これをD常務から動機付けしてもらうことが不可欠でした。

高得点のポイント

  • 規制緩和を活かす視点が含まれているか
  • 顧客の利便性向上につなげる役割であることが明記されているか

設問2

(1)

本文中の下線③について,B氏が,本プロジェクトの目標には,これまでシステム部が重視していたQCD遵守の目標だけではなく,業務部門が重視する目標も含める必要があるとC部長に提案した狙いは何か。35字以内で答えよ。

模範解答

顧客価値の創出を目標とするシステム開発を実現すること

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: 顧客価値の創出を目標とし、それをシステム開発の実現につなげるという提案の狙いを正確に記述できている。
  • 1: 顧客価値の創出については言及しているが、システム開発との結びつきに関する記述が不足している。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 35字以内で、C部長への提案の狙いとして自然な文章構造でまとまっている。
  • 1: 狙いとしての文末表現が不適切であるなど、文章構造にやや不備がある。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、プロジェクト目標の変更に関するPMの狙いを問うものです。

解答の根拠

システム部が従来重視していたQCD遵守だけでは、法改正という外部環境変化に十分に対応できません。業務部門が重視する顧客価値の創出を目標に加えることで、両部門が協力して真のプロジェクト成功に向かう体制を作る狙いがあります。

高得点のポイント

  • 顧客価値の創出を目標とすること - それを目指したシステム開発の実現であること

(2)

本文中の下線④について,B氏が,D常務がプロジェクトオーナーとなって業務部門が責任をもつことを,D常務からC部長に説明してもらった狙いは何か。30字以内で答えよ。

模範解答

責任部署が業務部門であるとC部長に理解してもらうこと

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: 本プロジェクトにおける責任部署が業務部門へと変更されたことをC部長に理解させるという狙いが正確に記述できている。
  • 1: 業務部門が責任を持つことには触れているが、C部長への理解や認識合わせという目的が明記されていない。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 30字以内で、説明の狙いとして論理的かつ自然にまとまっている。
  • 1: キーワードは含まれているが、因果関係や文脈にやや不明瞭な点がある。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、プロジェクト体制の責任に関する認識合わせの狙いを問うものです。

解答の根拠

新たな体制ではD常務がプロジェクトオーナーとなり、責任部署が業務部門となります。システム部のC部長にこの変更を正しく理解させることで、部門間の摩擦を防ぎ、業務部門主導のプロジェクト進行を円滑にする狙いがありました。

高得点のポイント

  • 責任部署が業務部門であること - それをC部長に理解してもらうこと

設問3

(1)

本文中の下線⑤について,B氏が特定した,スコープSのうちスコープTの開発の影響を受けないと考えられる部分の開発を先行して進めることに起因するリスクは何か。20字以内で答えよ。

模範解答

先行実施した開発作業の手戻り

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: ファストトラッキングに起因するリスクとして、先行して実施した開発作業の手戻りが発生することを正確に記述できている。
  • 1: 手戻りや遅延のリスクには触れているが、先行実施した作業に起因するという因果関係が不明瞭である。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 20字以内で、想定されるリスク事象が簡潔かつ論理的にまとまっている。
  • 1: リスク事象の記述として文末表現が不自然など、文章構造に不備がある。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、スケジュールの短縮策に伴うリスクを問うものです。

解答の根拠

スコープSの一部を先行して進めるという手法はファストトラッキングに該当します。この手法の最大のリスクは、後続のスコープTの仕様が確定した際に、先行実施した部分に矛盾が生じ、開発作業の手戻りが発生することです。

高得点のポイント

  • 先行実施した開発作業であること
  • 手戻りが発生するリスクの明記

(2)

本文中の下線⑥について,B氏が特定した,プロジェクトメンバーを追加することに起因するリスクは何か。25字以内で答えよ。

模範解答

追加メンバーの知識不足に起因する品質不足

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: メンバー追加に伴う知識不足と、それに起因する品質不足(または品質低下)のリスクを正確に記述できている。
  • 1: 品質不足には触れているが、追加メンバーの知識不足という根本的な要因が明記されていない。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 25字以内で、要因と結果(知識不足による品質不足)が論理的かつ自然にまとまっている。
  • 1: キーワードは含まれるが、因果関係の記述が不十分である。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、リソース追加(クラッシング等)に伴うリスクを問うものです。

解答の根拠

スケジュール遅延を防ぐためにプロジェクトメンバーを追加した場合、新規メンバーは対象業務やシステムに関する知識不足を抱えていることが多く、その結果として成果物の品質不足や作業効率の低下を引き起こすリスクがあります。

高得点のポイント

  • 追加メンバーの知識不足 - それに起因する品質不足

(3)

本文中の下線⑦について,B氏は,スケジュールバッファの設定方法をどのように工夫したのか。35字以内で答えよ。

模範解答

各タスクにバッファはもたせずプロジェクトバッファをもつ。

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: クリティカルチェーン法に基づき、各タスクにはバッファをもたせず、プロジェクト全体でプロジェクトバッファをもつという工夫を正確に記述できている。
  • 1: プロジェクトバッファをもつことには言及しているが、各タスクのバッファを排除するという対比の記述が欠けている。
  • 0: 単なるスケジュールの見直しなど、バッファ設定手法の工夫として的外れな解答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 35字以内で、バッファの設定方法に関する対比構造が論理的に整理されている。
  • 1: 内容は部分的に正しいが、表現が冗長であるなど文章構造にやや難がある。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、スケジュール管理におけるバッファ設定の工夫を問うものです。

解答の根拠

本文中でPMは、スケジュール管理手法としてクリティカルチェーン法を意識した対応をとっています。各タスクの担当者が個別にバッファを持つのではなく、各タスクにバッファはもたせず、プロジェクト全体で吸収するためのプロジェクトバッファをもつ形にすることで、スケジュールの透明性と効率を高めています。

高得点のポイント

  • 各タスクにバッファはもたせないこと - 全体としてプロジェクトバッファをもつこと

(4)

本文中の下線⑧について,B氏が,対応策を実行してもスコープTの開発がスケジュールどおりに進まない場合に備えてD常務と合意するコンティンジェンシー計画とはどのようなものか。30字以内で答えよ。

模範解答

規制緩和への対応のリリース時期を延期する。

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: スケジュール遅延時の最終的なコンティンジェンシー計画として、規制緩和への対応のリリース時期を延期することを正確に記述できている。
  • 1: リリース時期の延期には触れているが、対象が「規制緩和への対応」であることが明記されていない。
  • 0: 題意と異なる解答、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 30字以内で、コンティンジェンシー計画の内容として簡潔かつ論理的にまとまっている。
  • 1: キーワードは含まれているが、計画としての文末表現が不自然である。
  • 0: 論理が破綻しており、意味が読み取れない。

解説

本設問は、リスク顕在化時のコンティンジェンシー計画(代替計画)の内容を問うものです。

解答の根拠

リスク対応策を講じてもスコープTの開発が遅延した場合、最終的な手段としてリリース時期を延期することが必要になります。あらかじめプロジェクトオーナーであるD常務と規制緩和への対応のリリース時期を延期することについて合意しておくことで、パニックを防ぎ秩序ある対応が可能となります。

高得点のポイント

  • 規制緩和への対応であること - そのリリース時期を延期すること

設問3(1)は正答率がやや低かった。設問文に記載されている,“スコープSのうちスコープTの開発の影響を受けないと考えられる部分の開発を先行して進める”とは,ファストトラッキングを意味している。このスケジュール短縮策のリスクとして,開発を先行して進めた結果,当初の考えと異なる状況となった場合に発生する事象を理解して,正答を導き出してほしい。設問3(3)は正答率が低かった。“第三者によるバッファ見積りの実施”などのバッファの見積りに関する解答に加えて,本文の記載を抜き出した“注意してバッファを管理しスケジュールを見直す”との解答が散見された。スケジュールバッファの設定方法の工夫を問うているので,クリティカルチェーン法に基づいて解答してほしい。