令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午後II 問1 DX推進のための情報システム改善(論述)

ストラテジシステム戦略・企画システム開発技術データベース

この問題は2023(R5)春 システムアーキテクト 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

学習ガイド

DX推進を阻む既存情報システムの課題と、その改善を論じる午後II問題です。DXの目的、システム上の課題、改善内容、実施上の工夫を因果でつなぐ論文構成を示します。単純なIT化にとどめず、データの連携・標準化が事業変革にどう寄与するかを具体化します。設問アからウまで同じ事例と因果関係を保ち、一般論に流れず、実施内容と評価を具体的に書き切るための構成を示します。

この記事で押さえる論点

  • DXを現行業務の単純なIT化と区別し、業務改革や新ビジネス創造の目的として描写する
  • DXの目的を阻む情報システム上の課題を、目的と論理的に整合する形で抽出する
  • 課題の解決手段としての改善内容を、解決できると考えた理由とともに構成する
  • 匿名化やデータ項目の意味の標準化のような工夫を、何のためかを明示して論述する

問題本文

問1 デジタルトランスフォーメーションを推進するための情報システムの改善について

近年,企業においては競争優位の獲得や企業自身の存続のために,デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することが増えている。しかし,DXの推進に必要な情報が整備されていないなどの課題が原因で,推進が困難になる場合も多い。
そのため,システムアーキテクトは,課題を解決して DXの推進を支援する必要がある。このような課題には例えば,次のようなものがある。

  • 飲料の製造販売会社で,自動販売機が保有する,販売した日時・場所・商品・電子マネー情報・ポイントカードIDなどの POS情報が,基幹情報システムに連携されていない。そのため,POS情報を利用したキャンペーンやビジネスができない。
  • 車載機器製造販売会社で,企業向けと個人向けがそれぞれ別の情報システムになっており,商品コードの体系が企業向けと個人向けで異なる。そのため,企業向け製品を個人向けに展開するビジネスが困難である。

このような場合,DXの推進のために情報システムを改善する必要がある。例えば,次のような改善が考えられる。

  • 基幹情報システムに POS情報を連携して,DXの推進に必要な情報を蓄積する。
  • マスター管理システムを追加し,部門別の情報システムと連携させ,データ項目の名寄せや,単位,区分の共通化と統合化を行い,全社や外部との共有を可能にする。

また,これらの情報システムを改善する際に工夫すべき点が考えられる。例えば,POS情報を利用する場合,購入者の行動履歴を把握しつつ個人を特定できないようにするために情報の一部を匿名化したり,全社や外部とのデータ共有を可能にする場合,業務横断でのデータの活用を推進するためにデータ項目の意味を標準化したりする。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜設問ウに従って論述せよ。

設問と解答・解説

設問ア

あなたが携わった DXの推進では,どのような課題があったか。DXの目的と情報システムの概要を含め,800字以内で述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 34点)

知識・理解度(内容)(18点)

  • 18: DXの目的、対象となる情報システムの概要、DX推進上の課題が具体的かつ十分に記述されており、単なるIT化ではないことが明確である。
  • 12: DXの目的、情報システムの概要、課題の記述はあるが、一部具体性に欠ける、または単なるIT化に近い部分がある。
  • 6: 要求された項目のいずれかが欠けている、またはDXではなく単なる現行業務のデジタル化にとどまっている。
  • 0: 記述がない、または的外れである。

論理性(構造)(16点)

  • 16: DXの目的とその達成を阻害する情報システム上の課題の間に強い論理的整合性があり、真の課題を適切に捉えている。
  • 8: 目的と課題の間に一定の整合性はあるが、論理的な飛躍が一部見られる。
  • 0: 目的と課題の論理的整合性が取れていない、または記述がない。

解説

本問は、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進において、既存の情報システムに関連して生じる課題を的確に把握し、説明する能力を問うものです。

高得点のポイント

  • DXの定義の正確な理解: 単なる「現行業務のIT化・デジタル化」ではなく、デジタル技術を活用した「業務の改革」や「新しいビジネス・サービスの創造」を目的としたDXであることを明示する。

  • 背景と目的の明確化: 対象となるDXの目的と、それを支える情報システムの概要を具体的に説明する。

  • 真の課題の抽出: DXの目的達成を阻害している情報システム上の課題(例:必要なデータが整備されていない、システムが分断されている等)を、目的と論理的に整合する形で記述する。

設問イ

設問アで述べた課題の解決のために,情報システムをどのように改善しようとしたか。解決できると考えた理由を含め,800字以上 1,600字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

説得力(考察)(17点)

  • 17: 課題解決のための既存情報システムの改善内容が具体的に論述され、その改善によって課題が解決できると考えた理由が極めて妥当で説得力がある。
  • 10: 改善内容と解決できる理由は記述されているが、具体性や説得力がやや不足している。
  • 4: 改善内容や理由の記述が浅く、説得力に乏しい。
  • 0: 記述がない、または的外れである。

論理性(構造)(16点)

  • 16: 前問で提示された課題と、本設問での解決手段の間に明確な論理的整合性が保たれている。
  • 8: 課題と解決手段の整合性が一部不明瞭である。
  • 0: 課題と解決手段の論理的整合性が全く取れていない、または記述がない。

解説

本問は、前問で挙げた課題に対する解決策として、既存の情報システムをどのように改善する計画を立てたか、その論理的な妥当性を問うものです。

高得点のポイント

  • 論理的整合性の確保: 設問アで挙げた「情報システム上の課題」に対する直接的な解決手段となる改善内容を提示する。

  • 改善内容の具体性: システムアーキテクトの視点から、どのようなアーキテクチャや機能の改善を行うのかを具体的に述べる。

  • 解決できると考えた理由の妥当性: 提案した改善策を実行することで、なぜDX推進の阻害要因が取り除かれ、真の課題が解決できるのか、技術的・業務的な根拠を示して論理的に説明する。

設問ウ

設問イで述べた情報システムの改善において,何のためにどのような工夫を検討したか。600字以上 1,200字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

説得力(考察)(17点)

  • 17: 情報システムの改善において、工夫の目的と具体的な工夫内容がシステムアーキテクトの視点から説得力をもって論述されている。
  • 10: 工夫の目的と内容は記述されているが、専門的な視点や具体性にやや欠ける。
  • 4: 工夫の記述が表層的であり、実効性が乏しい。
  • 0: 記述がない、または的外れである。

論理性(構造)(16点)

  • 16: 前問で提示された改善内容と、本設問での工夫の間に強い論理的整合性があり、一連の計画として一貫している。
  • 8: 改善内容と工夫の整合性が一部不明瞭である。
  • 0: 改善内容と工夫の論理的整合性が全く取れていない、または記述がない。

解説

本問は、情報システムの改善計画を立案・実行するにあたり、システムアーキテクトとしてどのような工夫を検討したかを問うものです。

高得点のポイント

  • 全体の一貫性: 設問アの「課題」、設問イの「改善内容」と論理的に整合し、それらをより確実・効果的に実現するための工夫であることを示す。

  • 工夫の目的の明確化: 何のためにその工夫を検討したのか(例:システム移行のリスク軽減、ステークホルダー間の合意形成、将来の拡張性確保など)を明示する。

  • システムアーキテクトとしての視点: 単なる思いつきではなく、プロジェクトを成功に導くための高度な専門性や経験に基づいた具体的な工夫内容を論述する。