令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問3 異業種メーカとの協業による組込みシステムの製品企画(論述)
学習ガイド
新たな市場を開拓するために、IoTやAIなどを活用して異業種メーカと協業する組込みシステムの製品企画を論じる問題です。自社だけでは実現が難しい製品企画を立ち上げた経緯から始め、協業先との役割分担におけるトレードオフや、各社から挙がる課題への解決策を順に整理します。最後に、協業の判断や役割分担がなぜ適切であったかという妥当性の評価へとつなげる、組込み分野における戦略的な論述構成を案内します。
この記事で押さえる論点
- 新市場への参入を目的とした、異業種メーカとの協業による組込みシステムの製品企画の経緯を説明できる
- 協業する企業の分担範囲の切り分けと、それに伴うトレードオフを論理的に構成できる
- 協業企業間で発生する課題を抽出し、その解決策を具体的に述べられる
- 協業の判断や分担内容の妥当性、課題解決策に対する評価を客観的に論述できる
出題情報
- 出題
- 2021(R3)春 ITストラテジスト 午後II 問3
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
近年,組込みシステムのITストラテジストは,既存製品を基に,異業種メーカとの協業によって新たな価値のある製品企画を立案して新市場に投入することが求められている。その際,自社保有技術だけでは製品化,販路の開拓などが難しい場合でも,異業種メーカとの協業によって実現可能な場合がある。
本問は,異業種メーカとの協業によって既存製品を新たなニーズに対応した新製品として再び投入することを題材として,その製品企画戦略,異業種メーカとの協業を検討した理由,分担範囲及びトレードオフ,課題の抽出,その解決策について,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,組込みシステムのITストラテジストに必要な分析力,提案力,統率力などを評価する。
問3では,異業種メーカとの協業による組込みシステムの製品企画戦略について,具体的な論述を期待した。異業種メーカとの協業によって,既存製品を新たな製品として新市場へ投入する企画を立案した経験のある受験者には,論述しやすかったと思われる。一方で,新製品の概要が不明瞭な論述,異業種メーカとの協業ではなく単なる外部調達に言及する論述,協業を検討した理由が不明瞭で内容が不足している論述も見受けられた。組込みシステムのITストラテジストは,既存製品のライフサイクルのステージを基にした,新市場への投入戦略について理解し,実践で深く分析する能力を養ってほしい。
問題本文
異業種メーカとの協業による組込みシステムの製品企画戦略について
近年,異業種メーカとの協業による組込みシステムの製品が様々な市場に進出している。新分野における新製品の開発及び既存製品の機能の見直しを検討し,IoT,AIを導入した異業種メーカと協業することで,新たな価値を創造した製品戦略を策定することができ,未開拓の新市場などへの参入が可能になる。
既存製品の市場におけるライフサイクルのステージが成熟期・衰退期の時期であっても,異業種メーカと協業することによって,既存製品を新たなニーズに対応した価値のある製品として新市場に投入する戦略が考えられる。また,新市場の調査結果を基に企画した製品について,自社の保有技術だけでは製品化,販路の開拓などの実現が難しい場合でも,異業種メーカとの協業によって実現できることもある。
例えば,ディジタルサイネージメーカでは,防災機器メーカ,自動販売機専門メーカとの協業によって“高機能型IoT自動販売機”を製品化することが挙げられる。
協業する企業は,投入する製品を補完する部分及び新市場を分析し,技術的な適性,実績,企業系列などを吟味し,社内方針に従って選定される必要がある。
組込みシステムのITストラテジストは,企画した製品に関して協業する各企業と協議した上で,課題の抽出,課題に対する解決策,適用範囲などを取りまとめることが求められている。その過程の中で,協業する企業の分担範囲をトレードオフしながら切り分け,最適な製品を企画することが重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。
設問と解答・解説
設問ア
あなたが異業種メーカとの協業で企画・検討をした組込みシステムの製品の概要,企画・検討に至った経緯を,新市場の特徴とともに 800 字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 18点: 製品の概要と新市場の特徴が、ITストラテジストの視点から非常に明確かつ具体的に記述されている。
- 9点: 製品の概要と新市場の特徴が記述されているが、具体性や明確さにやや欠ける部分がある。
- 0点: 製品の概要や新市場の特徴が不明瞭である、または記述がない。
- 16点: 企画・検討に至った経緯が、既存製品の状況や新市場の特徴と結びついており、非常に説得力がある。
- 8点: 企画・検討に至った経緯が述べられているが、新市場の特徴との結びつきが弱く、説得力にやや欠ける。
- 0点: 企画・検討に至った経緯が妥当でない、または記述がない。
解説
本設問では、ITストラテジストとして、既存製品をベースに異業種メーカとの協業を通じて新たな価値を創造し、新市場へ投入する製品企画戦略の第一歩となる「製品の概要」「新市場の特徴」「企画・検討に至った経緯」を具体的に論述することが求められます。
高得点のポイント
- 製品の概要と新市場の明確化: どのような機能を持ち、どのような顧客(新市場)に向けた製品なのかを具体的に説明できていること。採点講評にある通り、「新製品の概要が不明瞭」な記述は低評価となります。
- 企画・検討に至った経緯の論理性: なぜその製品を企画したのか、既存製品のライフサイクル(成熟期・衰退期など)や自社の課題を起点とし、新市場のニーズと結びつけて説得力を持って説明していること。
- 協業の必然性の示唆: 自社単独ではなく、異業種メーカと組むことの必要性につながる背景(自社保有技術の不足や販路の開拓の難しさなど)が経緯の中に盛り込まれていること。
設問イ
設問アで述べた製品において,異業種メーカとの協業を検討した理由,協業する各企業の分担範囲及びそのトレードオフ,各企業から挙がった課題及びその解決策として考えられる内容を,800 字以上 1,600 字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 協業の理由が自社の課題(技術や販路等)と結びついて明確であり、分担範囲とトレードオフが協業の観点から非常に具体的に記述されている。
- 8点: 協業の理由や分担範囲、トレードオフが記述されているが、単なる外部調達に近く見えたり、具体性にやや欠けたりする部分がある。
- 0点: 協業の理由が不明瞭である、または分担範囲やトレードオフの記述がない。
- 16点: 協業における課題が具体的に抽出されており、その解決策が論理的かつ実現可能で、統率力や提案力が十分に示されている。
- 8点: 課題と解決策が記述されているが、論理的な結びつきがやや弱い、または解決策の具体性に欠ける。
- 0点: 課題や解決策の記述がない、または論理的でない。
解説
本設問は論文の中核となる部分であり、異業種メーカとの協業の理由、分担範囲とトレードオフ、そして協業を進める上で生じる課題とその解決策について、ITストラテジストとしての調整力や統率力を示す必要があります。
高得点のポイント
- 「協業」であることの明確化: 採点講評で指摘されているように、「単なる外部調達に言及する論述」は低評価となります。外部調達ではなく、互いの強みで製品を補完し合う協業としての協業理由を述べる必要があります。
- トレードオフを伴う分担範囲の決定: 自社と協業先の間で、技術的適性や実績などを踏まえ、何を譲り何を確保したかというトレードオフ(利害の衝突と調整)の過程を具体的に記述していること。
- 課題抽出と解決策の論理性: 協議の中で各企業からどのような課題が挙がり、どのような解決策を考えたかが論理的に展開されていること。
設問ウ
設問イで述べた異業種メーカとの協業について判断したことの妥当性,分担を考えた内容の妥当性,課題に対する解決策についての評価を,600 字以上 1,200 字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 協業の判断と分担内容の妥当性が、当初の製品企画戦略や新市場のニーズに照らし合わせて、非常に説得力を持って客観的に評価されている。
- 8点: 妥当性の評価が記述されているが、主観的であったり、戦略的目標との結びつきが弱く説得力にやや欠ける。
- 0点: 妥当性の評価がなされていない、または記述が極めて浅い。
- 16点: 解決策の評価が設問イの記述と完全に整合しており、その有効性や結果が論理的に展開されている。
- 8点: 解決策の評価が記述されているが、設問イの記述との整合性がやや弱い、または論理展開が不十分である。
- 0点: 解決策についての評価がない、または設問イの記述と矛盾している。
解説
本設問では、設問イで実行した戦略策定や課題解決のプロセス全体に対する客観的な評価が求められます。ITストラテジストとして、自らの行動が製品企画戦略においてどう妥当であったかを論証します。
高得点のポイント
- 判断と分担の妥当性の客観的評価: 異業種メーカと協業したこと、および役割分担の決定が、なぜ妥当であったと言えるのか(妥当でなかった点があればそれも含めて)を、新市場への参入や新たな価値創造といった目標に照らし合わせて説得力を持って述べていること。
- 解決策の有効性の評価: 設問イで提示した課題の解決策が実際に効果を発揮したか、またその結果として協業体制が円滑に機能したかについて、整合性のある評価を行っていること。
- 評価の網羅性: 三つの評価(協業の判断の妥当性、分担の妥当性、課題に対する解決策の評価)を漏れなく、設問イで述べた内容と対応させて述べること。