令和4年度 春期 ITストラテジスト試験 午後II 問3 急激な環境変化に対応する組込みシステム事業の成長戦略とリスク管理(論述)

学習ガイド

DX推進や社会情勢の急変に直面した組込みシステム事業において、成長戦略の見直しと意思決定を行った経験を取り上げる問題です。製品市場マトリクスの活用や技術的実現性、経営リスクへの対処が論点となります。設問アで環境変化と採用した戦略類型を提示し、設問イで市場特性、意思決定の根拠や過程、想定リスクへのマネジメント策を詳述します。設問ウでは戦略・意思決定・リスク管理の3点について実績を踏まえた評価をバランスよく論述します。

この記事で押さえる論点

  • 経営環境の急変を踏まえ、製品市場マトリクスに基づく成長戦略の選択を説明できる
  • 対象市場の特徴、戦略選定の根拠、技術面も考慮した意思決定過程を述べられる
  • 想定される経営リスクとそれに対応するリスクマネジメントの施策を説明できる
  • 成長戦略・意思決定・リスクマネジメントの現時点での成果と妥当性を評価して述べられる

問題本文

経営環境の急激な変化に伴う組込みシステム事業の成長戦略の意思決定について

昨今の組込みシステム,IoT製品の業界は,デジタルトランスフォーメーション(DX)推進などによる多様な分野への急激な市場拡大,また新型コロナウイルス感染症拡大による社会情勢の変化などによって経営環境が急変し,今後の業績,事業の成長の見通しが不透明となっている。

経営環境を取り巻くそのような状況下において,事業の成長を目的とした意思決定のためには,成長戦略の継続的な見直しが必要である。成長戦略を見直す手法として,成長戦略を新規・既存製品と新規・既存市場の組合せで四つに分類し,製品市場マトリクスとして検討する考え方がある。具体的には,①新製品開発戦略(新規製品を既存市場へ投入),②新市場開拓戦略(既存製品を新規市場へ投入),③多角化戦略(新規製品を新規市場へ投入),④市場浸透戦略(比較的経営環境の変動が小さい既存市場での既存製品維持)である。例えば既存製品の売上減少,市場の縮小・消失などが見込まれる場合では,新市場開拓戦略と多角化戦略が考えられる。多角化戦略の例として,事務機器メーカのアルコール自動噴霧器の市場への投入,防災機器メーカのAI自動顔認証体温測定装置の市場への投入などがある。

組込みシステムのITストラテジストは,既存製品,既存市場又は新規市場を分析し,経営環境の変化に対応する事業の成長を見据えた成長戦略を立案するなどの意思決定を行うことが重要である。その際に,立案した目標と結果がかい離するなどの経営リスクをあらかじめ分析し,その分析結果に対応するための経営リスクマネジメントも重要である。さらに,新規製品投入の場合には,早期に開発するために必要な保有技術・新規開発技術を鑑みた検討が必要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問と解答・解説

設問ア

配点 34点

あなたが携わった組込みシステムの製品の概要,経営環境の変化,及びそれに応じた,製品市場マトリクスにおける成長戦略の内容を,800字以内で述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準

知識・理解度(内容)17点
  • 17点: 製品の概要、経営環境の変化、製品市場マトリクスにおける成長戦略の内容が、実務経験に基づいて極めて具体的に明記されている。
  • 13点: 製品の概要、経営環境の変化、成長戦略の内容が具体的に記載されている。
  • 8点: 記載内容の一部に曖昧さがあるか、対象とする製品の概要が不明瞭な部分がある。
  • 4点: 記載内容の大部分が曖昧であり、成長戦略の内容などが大幅に不足している。
  • 0点: 要求された内容が記載されていない、または全く関係のない内容である。
論理性(構造)17点
  • 17点: 直面した経営環境の変化から、特定の成長戦略を選択するに至る論理展開が極めて明確かつ妥当である。
  • 13点: 経営環境の変化と成長戦略の選択のつながりが論理的に説明されている。
  • 8点: 経営環境の変化と成長戦略の選択のつながりが一部不明瞭である。
  • 4点: 経営環境の変化と成長戦略のつながりが論理的に飛躍または破綻している。
  • 0点: 論理展開が全く見られない。

解説

本設問は、ITストラテジストとして携わった組込みシステム事業において、製品市場マトリクスを用いた成長戦略の立案の前提となる状況(製品概要、経営環境の変化、成長戦略の内容)を論述することが求められています。

高得点のポイント

  • 対象製品の明確化: 対象とする組込みシステムの製品概要が、読者(採点者)にとって明確にイメージできるように具体的に記述されていること。
  • 経営環境の変化の具体性: DX推進やコロナ禍といったマクロ環境の変化だけでなく、自社の事業やターゲット市場に対する直接的な影響(市場の縮小、顧客ニーズの変化など)を具体的に説明すること。
  • 製品市場マトリクスに基づく戦略: 選択した成長戦略が、本文で例示されている4分類(①新製品開発戦略、②新市場開拓戦略、③多角化戦略、④市場浸透戦略)のいずれに該当するかが明確であり、環境変化に対応するための妥当な戦略となっていること。

設問イ

配点 33点

設問アで述べた成長戦略における市場の特徴,成長戦略を立案した根拠及び意思決定に至った過程,また,どのような経営リスクを想定し,どのような経営リスクマネジメントを実施したか,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準

知識・理解度(内容)16点
  • 16点: 市場の特徴、立案根拠、意思決定過程、想定される経営リスク、経営リスクマネジメントの全要素が、極めて具体的に網羅されている。
  • 12点: 要求された各要素について、具体的に記載されている。
  • 8点: 記載内容の一部が不足しているか、成長戦略を立案した根拠などの具体性にやや欠ける。
  • 4点: 要求された要素の多くが欠落している。
  • 0点: 要求された内容が記載されていない。
説得力(考察)17点
  • 17点: 想定したリスクが技術的課題ではなく経営リスクとして適切に捉えられており、対応するリスクマネジメントがITストラテジストの視点から極めて説得力を持って論じられている。
  • 13点: 経営リスクとそのマネジメントが適切に論じられ、十分な説得力を持つ。
  • 8点: リスクの内容が技術的課題に偏っている部分があるなど、経営リスクマネジメントとしての説得力がやや弱い。
  • 4点: リスクの内容が単なる技術的課題に終始しており、ITストラテジストとしての視点が欠如している。
  • 0点: 考察に全く説得力がない。

解説

設問アで提示した成長戦略について、その立案根拠と意思決定のプロセス、そしてITストラテジストとして最も重要な「経営リスク」とそのマネジメントについて深く論述する設問です。

高得点のポイント

  • 立案根拠とプロセスの明確化: 市場の特徴(既存/新規)を踏まえ、なぜその戦略を選んだのか、データや客観的事実に基づいた根拠と意思決定のプロセスが明確に記述されていること。
  • 経営リスクの的確な捉え方: 単なる開発現場の「技術的課題(例:性能が出ない、バグが多いなど)」ではなく、目標と結果の乖離を引き起こす「経営リスク(例:新規市場における競合の出現、保有技術だけでは開発が遅れ市場投入タイミングを逃すリスクなど)」として分析できていること。
  • 実効性のあるリスクマネジメント: 想定した経営リスクに対し、事前にどのような予防策や発生時の対応策(経営リスクマネジメント)を講じたかが具体的に説明されていること。

設問ウ

配点 33点

設問イで述べた成長戦略を立案した根拠及び意思決定に至った過程を基に,現時点における成長戦略の評価,意思決定の評価,経営リスクマネジメントへの評価を,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準

論理性(構造)16点
  • 16点: 設問イの内容(立案根拠・過程など)と現時点の評価が矛盾なく結びついており、一貫性のある極めて論理的な構成となっている。
  • 12点: 設問イの内容を踏まえ、全体として論理的に構成されている。
  • 8点: 設問イの内容と評価のつながりがやや不明瞭な部分がある。
  • 4点: 設問イの内容と評価の間に矛盾や飛躍が見られる。
  • 0点: 論理展開が全く見られない。
説得力(考察)17点
  • 17点: 成長戦略、意思決定、経営リスクマネジメントに対する評価が深く客観的に分析され、今後の見通しや改善点も含めて極めて高い説得力を持つ。
  • 13点: 各要素に対する評価が適切に分析され、十分な説得力を持つ。
  • 8点: 評価の対象に漏れがあるか、内容が表面的で分析の深さにやや欠ける。
  • 4点: 評価の視点が不適切であるか、単なる主観的な感想にとどまっている。
  • 0点: 考察に全く説得力がない。

解説

設問イまでの内容を踏まえ、現時点から振り返った自身の戦略立案、意思決定、リスクマネジメントに対する評価を論述する設問です。今後の事業展開や改善に向けた洞察力が問われます。

高得点のポイント

  • 設問イとの一貫性: 設問イで記述した「根拠・意思決定過程・リスクマネジメント」に基づいて評価が行われており、内容に矛盾がないこと。
  • 客観的・多角的な評価: 単に「成功した」「失敗した」という主観的な感想にとどまらず、目標達成度合い、想定外の事象への対応力などの観点から、ITストラテジストとして客観的に分析できていること。
  • 三つの要素への言及: 「成長戦略の評価」「意思決定の評価」「経営リスクマネジメントへの評価」の全てについて漏れなく記述し、今後の改善や次の成長戦略への繋がりまで言及できていると説得力が高まります。

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