令和4年度 春期 ITストラテジスト試験 午後II 問2 基幹システム再構築におけるサブシステム開発の優先順位付け(論述)

学習ガイド

老朽化や複雑化が進んだ基幹システムを刷新するにあたり、サブシステムの再構築順序をどう決定したかを論じる問題です。投資効果の早期享受やリソース制約、移行リスク低減を両立させる優先順位の妥当性が問われます。設問アで事業環境の変化とシステム課題を整理し、設問イで考慮事項と優先順位の判断ロジックや工夫を具体的に述べます。設問ウでは定性・定量の投資効果を用いた経営層への説明と、受領した評価に基づく改善策を展開します。

この記事で押さえる論点

  • 事業環境の変化と複雑化した現行基幹システムが抱える課題を説明できる
  • 課題の緊急性や早期の投資効果、リソース制約等を考慮した再構築の優先順位と工夫を述べられる
  • 定性・定量の両面から投資効果を整理し経営層へ説明した内容を説明できる
  • 経営層からの評価を踏まえて計画に施した具体的な改善を述べられる

問題本文

基幹システムの再構築における開発の優先順位付けについて

長期にわたって改善を繰り返してきた基幹システムは,複数のサブシステムが複雑に連携し合い,保守性が低下し,事業環境の変化に追随できなくなっていることが多い。このような基幹システムの再構築には,多くの費用,期間が必要であり,一度に全てのサブシステムを再構築することはリソース制約とともにリスクも大きい。一方,経営層からは業務効率の大幅な向上や,投資効果を早期に享受することが求められるようになってきている。

ITストラテジストは,基幹システムの再構築を計画する際,全体システム化計画との整合性に留意しつつ,それぞれのサブシステムを,どのような順序で,どのくらいの費用と期間を掛けて再構築するかの優先順位を検討する。優先順位を検討する際,次のようなことを考慮することが重要である。

  • 経営層からの要請,業務や現行システムが抱える問題,制度変更への対応など,対象となるサブシステムが解決すべき課題の重要性及び緊急性は何か。
  • どのような順序で,どのくらいの費用と期間を掛けて再構築すると,投資効果を早期に享受し,改修規模を極小化できるか。
  • 現行の機能の再利用,IT部門のリソース制約,技術上の難易度などを考慮した上で,どのような順序で取り組むことで,再構築リスクを軽減できるか。

ITストラテジストは,検討した優先順位について,定性・定量の両面における投資効果とともに経営層に説明し,承認を得る必要がある。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問と解答・解説

設問ア

配点 34点

あなたが携わった基幹システムの再構築の計画策定について,企業の事業概要,背景となった事業環境の変化,基幹システムの概要を,事業特性とともに800字以内で述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準

知識・理解度(内容)17点
  • 17点: 企業の事業概要、事業特性、事業環境の変化、基幹システムの概要の全てが非常に具体的に記述され、ITストラテジストとしての事業戦略への深い理解が示されている。
  • 13点: 要求された4つの要素が概ね具体的に記述されており、事業戦略とシステムの関係性が適切に理解されている。
  • 9点: 要求された要素は記述されているが、一部の内容が抽象的であるか、事業特性や環境変化に関する描写がやや不足している。
  • 4点: 記述内容に漏れがあるか、システム寄りの記述に終始しており、事業視点での背景説明が不十分である。
  • 0点: 白紙、または設問の要求事項と全く関係のない内容が記述されている。
論理性(構造)17点
  • 17点: 事業環境の変化から現行基幹システムの課題に至る論理展開が極めて自然で、続く設問の前提として完璧な構造となっている。
  • 13点: 論理展開に矛盾がなく、各要素のつながりが明確に整理されている。
  • 9点: 全体としての論理は通っているが、要素間のつながりが一部不明瞭で、説得力にやや欠ける構成となっている。
  • 4点: 各要素が羅列されているだけで、因果関係や論理的なつながりが不明確である。
  • 0点: 論理性が欠如しており、文章として意味をなさない。

解説

本問は、ITストラテジストとして事業戦略の実現に向けた基幹システム再構築の計画策定にあたり、対象となる企業や事業の背景を具体的に説明することが求められます。

設問の要求事項

設問アでは以下の4点を800字以内で記述する必要があります。

  • 企業の事業概要
  • 背景となった事業環境の変化
  • 基幹システムの概要
  • 企業の事業特性

これらの要素は、続く設問イ・ウで述べる「システムの再構築優先順位」や「経営層への説明」の土台となるため、情報システムの問題だけでなく、業務課題や事業戦略との関連性が明確になるように記述することが重要です。

高得点のポイント

  • 事業環境の変化と課題の明確化: 単なるシステムの老朽化ではなく、事業環境の変化(競争激化、法制度変更、顧客ニーズの変化など)により、既存の基幹システムがどのように事業上の制約となっているかを具体的に述べている。
  • 事業特性の理解: 企業の強みやビジネスモデルの特性を踏まえ、システムが担うべき役割を的確に描写している。
  • 論理的な構成: 事業環境の変化→業務上の課題→現行基幹システムの概要とその限界、という流れが論理的に整理されている。

設問イ

配点 33点

設問アで述べた基幹システムについて,あなたはそれぞれのサブシステムを,どのような優先順位で再構築することとしたか。特に重要と考えて考慮したこととその内容,あなたが工夫したこととともに,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準

知識・理解度(内容)16点
  • 16点: 優先順位、重要考慮事項、工夫点が非常に具体的に記述され、ITストラテジストに求められる再構築計画の高度な策定能力が示されている。
  • 12点: 要求された事項が概ね具体的に記述され、優先順位付けのプロセスが適切に説明されている。
  • 8点: 優先順位や考慮事項は記述されているが、内容が一般的・抽象的であり、具体性にやや欠ける。
  • 4点: 記述に漏れがあるか、システム部門内でのリソース制約などのみにとどまり、多角的な視点での検討が不足している。
  • 0点: 白紙、または設問の要求と異なる内容である。
説得力(考察)17点
  • 17点: 経営課題の解決や投資効果の早期享受という事業視点と、技術・リソース面のリスク軽減が極めて高い次元で結び付けられ、非常に説得力がある。
  • 13点: 技術論に終始せず、採用した方針が経営課題の解決にどのように寄与するかが説得力を持って論述されている。
  • 9点: 事業視点への言及はあるものの、一部で技術基盤の選定やプロジェクトマネジメントの手法寄りの記述が目立ち、説得力がやや弱い。
  • 4点: 「クラウドを活用した」等の活用技術の列挙やマネジメントリスクの記述に終始し、経営課題との関連付けがなく説得力に欠ける。
  • 0点: 考察が全く見られない、または論理が破綻している。

解説

本問では、設問アで提示した背景に基づき、基幹システムの各サブシステムをどのような順序で再構築するか、その優先順位の検討プロセスを具体的に論述します。

設問の要求事項

  • サブシステムごとの再構築の優先順位
  • 優先順位付けにおいて特に重要と考えて考慮したこととその内容
  • 優先順位付けにおける工夫点

留意事項(講評より)

講評にある通り、システム構築のマネジメントリスク(例:ベンダー管理や体制構築など)や、基盤技術の選定(例:単に「クラウドやSaaSを活用した」「マイクロサービス化した」という事実の列挙)に終始する論述は避けるべきです。

高得点のポイント

  • 経営課題の解決への寄与: 優先順位の決定が「投資効果の早期享受」や「事業環境の変化への対応」といった経営層や事業部門のニーズにどう応えるかを明確にしている。
  • 多角的な考慮: 経営層からの要請の重要度・緊急性に加え、IT部門のリソース制約、現行機能の再利用、技術的難易度などを総合的に考慮して順位付けを行っている。
  • 技術論と事業価値の結びつけ: クラウドなどの技術を用いる場合、それが「どのようにして期間短縮やコスト削減をもたらし、事業上の課題解決に寄与するか」まで具体的に論述している。

設問ウ

配点 33点

設問イで述べた優先順位について,経営層にどのような説明を行い,どのような評価を受けたか。経営層の評価を受けて改善したこととともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準

知識・理解度(内容)16点
  • 16点: 説明内容、評価内容、改善事項の全てが非常に具体的に記述され、経営層とのコミュニケーションにおけるITストラテジストとしての高度な対応力が示されている。
  • 12点: 要求された各事項が概ね具体的に記述され、経営層への説明と合意形成のプロセスが適切に示されている。
  • 8点: 要求事項は記述されているが、説明内容や改善事項が定性的な側面に偏るなど、具体性や深さにやや欠ける。
  • 4点: 記述に漏れがあるか、経営層の評価やそれに対する改善内容が表層的で、検討のプロセスが不十分である。
  • 0点: 白紙、または設問の要求と異なる内容である。
説得力(考察)17点
  • 17点: 定性・定量の両面から投資効果が明示され、経営層の視点に立った厳しい評価とそれに対する納得性の高い改善策が極めて説得力を持って論述されている。
  • 13点: 投資効果などの客観的根拠を用いて説明し、経営層からのフィードバックに基づく改善の過程が妥当で説得力がある。
  • 9点: 説明や改善の方向性は理解できるが、定量的な指標の欠如や経営層の指摘の現実味に乏しい部分があり、説得力がやや弱い。
  • 4点: 単に「了承を得た」等の結果のみが書かれ、経営層の評価に基づく改善の考察がなされておらず説得力がない。
  • 0点: 考察が全く見られない、または論理が破綻している。

解説

本問では、策定した優先順位に基づく再構築計画を経営層に提案し、どのように合意形成を図ったか、そのプロセスと結果を論述します。

設問の要求事項

  • 経営層への説明内容
  • 経営層からの評価
  • 経営層の評価を受けて改善したこと

高得点のポイント

  • 定性的・定量的な説明: 経営層が納得できるよう、投資効果(ROI、コスト削減額、売上向上への寄与など)や期間・リスクについて定量的・定性的な両面から説明している。
  • 経営層からの妥当な評価・指摘: 単なる「了承された」「賞賛された」ではなく、経営層ならではの視点(さらに投資回収を早められないか、特定事業の法対応に間に合うか等)からの現実的なフィードバックが設定されている。
  • 適切な改善プロセスの提示: 経営層からの評価・指摘を真摯に受け止め、計画(スコープ、リソース配分、順序の微調整など)をどのように改善したかが具体的かつ論理的に述べられている。

Spineチーム