令和4年度 春期 ITストラテジスト試験 午後II 問1 IT活用による顧客接点強化と満足度向上を狙う新商品・新サービスの企画(論述)
学習ガイド
顧客体験の向上を通じて他社との差別化を図るため、ITを活用した新商品や新サービスの企画を論じる問題です。顧客との接点拡大や新たな価値提供、収集・活用するデータの検討が問われます。設問アで事業特性と満足度向上の必要性を明記し、設問イで接点・価値・データを軸に企画詳細を具体化します。設問ウでは指標や投資効果を交えた経営層への提案と、その評価に基づく改善点を記述して一貫性のある論述にまとめます。
この記事で押さえる論点
- 企業の事業特性を踏まえ、顧客満足度向上が必要となった背景を説明できる
- 顧客との接点や関係性、提供する新たな価値、活用するデータを具体化して新企画を述べられる
- 顧客満足度を測る指標や投資効果を経営層へ提示した提案内容を説明できる
- 経営層からの評価とそれを受けて実施した企画の改善内容を述べられる
出題情報
- 出題
- 2022(R4)春 ITストラテジスト 午後II 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
ITストラテジストは,ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画を行うことがある。本問は,ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスについて,どのような企画を行ったか,顧客との接点や関係性,新たな価値,扱うデータを明確にして,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画において,ITストラテジストに必要な構想力,効果目標や評価指標を設定する能力などを評価する。
問1では,ターゲットとする顧客を定め,顧客満足度を向上させるために,新しい価値を提供する新商品や新サービスを企画している論述が多く見受けられ,論述しやすかったと思われる。一方,顧客との接点や関係性,顧客の体験などを十分に理解できておらず,ITを活用した新サービスなどの記述にとどまっている論述も散見された。ITストラテジストは,顧客の体験や顧客の業務などの視点に立って,顧客にとって価値のあるサービスや商品を構想できる能力を身に付けてほしい。
問題本文
問1 ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画について
近年,顧客が商品やサービスに興味をもってから,購入や利用までの一連の体験を通じて得る満足度を向上させることが,企業が差別化を図るために重要になっている。そのため,ITを活用して,顧客との接点を増やしたり,関係性を高めたりすることで,顧客に新たな価値を感じてもらえる新商品や新サービスを提供することがある。
ある保険会社では,顧客の声を収集,分析したところ,多くの商品で年齢ごとに保険料が一律であることに不満が多かった。また,契約と保険金の支払以外で顧客との接点が少なかった。そのため,健康に気を使えば保険料を割り引く,健康増進型の保険商品を企画した。具体的には,スマートデバイスで契約期間中の顧客との接点を増やし,顧客の同意のもと健康診断や歩行などの健康データを収集する。そして収集した健康データを活用して,翌年以降の保険料を割り引く仕組みを提供した。さらに,健康的な食事などへのアドバイスや,スポーツジムの利用の割引を提供した。それによって,顧客に新たな価値を感じてもらえる新商品を実現した。
ITストラテジストは,ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画を行う際,次のような事項を検討することが重要である。
- どのような顧客に対して,接点を増やしたり,関係性を高めたりするか。
- 顧客との接点で,どのような新たな価値を提供するか。
- 新商品や新サービスを実現するためにどのようなデータを扱うか。
その上で,顧客満足度を向上させる新商品や新サービスについて,顧客満足度を測る指標や投資効果とともに,経営層に提案する必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。
設問と解答・解説
設問ア
あなたが携わったITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画において,事業概要,顧客満足度を向上させることが必要となった背景を,事業特性とともに800字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 携わった事業概要、事業特性、顧客満足度向上の必要性(背景)が極めて具体的かつ明確に論述されている。
- 13点: 携わった事業概要、事業特性、顧客満足度向上の必要性(背景)が明確に論述されている。
- 9点: 指定された要素について概ね論述されているが、具体性や背景の説明にやや不足がある。
- 4点: 論述内容が不十分であり、事業特性や顧客満足度向上の背景が不明確である。
- 0点: 全く論述されていない、または問題の意図と異なる内容である。
- 17点: 指定されたすべての要素(事業概要、背景、事業特性)が網羅され、論理的かつ説得力のある展開で筋道立てて述べられている。
- 13点: 指定された要素が含まれ、論理的に構成されている。
- 9点: 要素は含まれているが、文脈の繋がりにやや飛躍や不自然な箇所がある。
- 4点: 要素の抜け漏れがあるか、論理展開に大きな破綻が見られる。
- 0点: 指定要件を全く満たしていない。
解説
本問は、ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画にあたり、その前提となる事業の状況を明確にすることが求められています。
論述にあたっては、自社(または顧客企業)の事業概要と事業特性を簡潔に説明した上で、なぜ今顧客満足度を向上させることが必要となったのか(背景)を論理的に結びつける必要があります。問題文に「企業が差別化を図るために重要になっている」とあるように、競合環境の変化や顧客ニーズの変化など、ビジネス上の課題を具体的に描写することが求められます。
高得点のポイント
- 事業概要と事業特性の明確化: どのような市場で、どのような顧客に対してビジネスを行っているか、その特性を具体的に述べていること。
- 背景の論理性: 事業特性を踏まえ、顧客満足度を向上させなければならない理由(課題や外的要因など)が説得力を持って記述されていること。
- 後の設問への接続: 設問イで述べる新商品・新サービスの企画につながるよう、現状の課題感が明確になっていること。
設問イ
設問アで述べた顧客満足度を向上させるために,ITを活用してどのような新商品や新サービスを企画したか。顧客との接点や関係性,新たな価値,扱うデータを明確にして,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: ITを活用した新商品・サービスの企画について、「接点・関係性」「新たな価値」「扱うデータ」が極めて明確かつ具体的に論述されている。
- 13点: 新商品・サービスの企画について、要求された要素が明確に論述されている。
- 9点: 概ね論述されているが、「接点・関係性」「新たな価値」「扱うデータ」のいずれかの説明がやや曖昧である。
- 4点: 企画内容の説明が不十分であり、要求要素の多くが欠落している。
- 0点: 全く論述されていない、または問題の意図と異なる内容である。
- 16点: 顧客の体験や業務の視点に立ち、顧客にとって価値のあるサービスが構想されており、ITストラテジストとして非常に高い構想力が示されている。
- 12点: 顧客の体験や視点を踏まえ、新たな価値を提供するサービスが構想できている。
- 8点: ITを活用したシステムの機能説明にとどまり、顧客との接点や体験に基づく考察がやや浅い。
- 4点: 顧客の視点が欠如しており、単なる機能説明などに終始している。
- 0点: 考察や構想力が全く見られない。
解説
本問は、設問アで提示した背景に基づき、具体的にどのような新商品や新サービスを企画したのかを論述します。単なるシステムの導入事例を述べるのではなく、ITストラテジストとして顧客の体験をどう変えたのかという視点が必要です。
論述では、問題文で指定されている以下の4つの要素を必ず含める必要があります。
- 企画した新商品や新サービスの内容
- 顧客との接点や関係性
- 提供する新たな価値
- 扱うデータ
問題文中の保険会社の例(スマートデバイスによる接点増加、健康データの収集、保険料割引やアドバイスという価値の提供)を参考に、自身の経験に落とし込んで論理を展開します。
高得点のポイント
- 顧客視点での構想力: ITを活用した新サービスの記述にとどまらず、顧客の体験や業務の視点に立って、顧客にとって真に価値のあるサービスを構想できていること。
- 要求要素の網羅と具体性: 「接点・関係性」「新たな価値」「扱うデータ」のそれぞれが、具体的にどのようなものか明記されていること。
- 一貫性: 設問アで述べた事業課題(背景)を解決する内容として、論理的な整合性が取れていること。
設問ウ
設問イで述べた顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画について,経営層に何を提案し,どのように評価されたか。経営層の評価を受けて改善したこととともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 経営層への提案内容(顧客満足度を測る指標、投資効果)、評価、改善点が極めて具体的に論述されている。
- 13点: 経営層への提案内容(指標、投資効果)、評価、改善点が明確に論述されている。
- 9点: 概ね論述されているが、提案内容(指標や投資効果)や改善点の一部が抽象的である。
- 4点: 提案内容や改善点の説明が不十分であり、要求要素が欠落している。
- 0点: 全く論述されていない、または問題の意図と異なる内容である。
- 16点: 提案した効果目標や評価指標がビジネス上極めて妥当であり、経営層の評価に基づいた改善策が深く論理的に考察されている。
- 12点: 提案した指標や投資効果が適切であり、経営層の評価を踏まえた改善策が論理的である。
- 8点: 指標や投資効果の妥当性にやや欠ける、または経営層の評価に対する改善の考察が表層的である。
- 4点: 提案内容が経営層向けとして不適切であり、考察が不十分である。
- 0点: 考察が全く見られない。
解説
本問は、設問イで企画した新商品・新サービスについて、経営層に対してどのような提案を行い、どのようなフィードバック(評価)を得て、それをどう改善したかを論述します。
ここで重要なのは、問題文にある「顧客満足度を測る指標や投資効果とともに,経営層に提案する」という一文を読み落とさないことです。ITストラテジストとして、単なるアイデアベースの提案ではなく、ビジネスとして成立するための評価指標(KPIなど)やコスト対効果を提示する能力が問われています。
高得点のポイント
- 妥当な指標と投資効果の設定: 提案内容の中に、顧客満足度を客観的に測る指標(NPS、リピート率、アクティブユーザー数など)と、想定される投資効果が具体的に設定されていること。
- 経営層の視点の理解: 経営層からの評価(懸念点や指摘事項)が、経営的視点(リスク、コスト、実現可能性など)から見て現実的で妥当であること。
- 的確な改善策: 経営層の評価(指摘)を真摯に受け止め、企画をブラッシュアップした改善内容が論理的かつ具体的に記述されていること。