令和4年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問5 テレワーク移行のリモートアクセス方式と帯域トラブル
学習ガイド
ホームページ制作会社がテレワークを拡大する際のリモートアクセス方式と、移行中に起きた通信遅延の原因分析を扱う問題です。HTTPS経由の画面転送方式とIPsecの違い、証明書とワンタイムパスワードを組み合わせた二段階認証、帯域使用率の計算、Web会議の通信経路を見直す対策を、ネットワーク構成図に沿って整理します。
この記事で押さえる論点
- TLSで暗号化したHTTPS通信による画面転送型のリモートアクセスと、拠点間VPNのIPsecとの層の違いを説明できる
- ワンタイムパスワードと証明書、認証サーバによる二段階の認証処理の流れを追える
- 接続PC数と1台当たりの通信量から、インターネット接続回線の帯域使用率を計算できる
- Web会議の映像・音声がVPN経由で本社回線を通ることが遅延の要因になることを見抜き、対策を選べる
出題情報
- 出題
- 2022(R4)秋 応用情報技術者 午後 問5
- 配点
- 20点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
多くの企業ではリモートアクセスによるテレワークやWeb会議サービスの導入が行われることとなり,テレワークへの移行やそれに伴うネットワーク運用に際して幾つかの共通の課題が散見された。本問では,テレワークへの移行やWeb会議サービスの導入事例を題材に,企業ネットワークにおける運用管理や障害対応に関する基本的な理解や留意事項について問う。
問5では,テレワークへの移行やWeb会議サービスの導入事例を題材に,企業ネットワークにおける運用管理や障害対応に関する基本的な理解や留意事項について出題した。全体として正答率はやや高かった。
問題本文
テレワーク環境への移行に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
W社は,東京に本社があり,全国に2か所の営業所をもつ,社員数200名のホームページ制作会社である。W社では本社と各営業所との間をVPNサーバを利用してインターネットVPNで接続している。
本社のDMZでは,プロキシサーバ,VPNサーバ及びWebサーバを,本社の内部ネットワークではファイル共有サーバ及び認証サーバを運用している。
W社では,一部の社員が,社員のテレワーク環境からインターネットを介して本社VPNサーバにリモート接続することで,テレワークとWeb会議を試行している。
W社のネットワーク構成を図1に示す。

図の説明テキスト
W社のネットワーク構成図。
- 「インターネット」に対し、「Web会議サービス」、「社員のテレワーク環境(PC)」、「本社(FW経由)」、「営業所1(UTM経由)」、「営業所2(UTM経由)」が接続されている。
- 「本社」の構成:
- インターネットと接続する「FW」があり、その後ろに「DMZ」と「内部ネットワーク」が構成されている。
- 「DMZ」内には「L2SW」があり、「プロキシサーバ」、「本社VPNサーバ」、「Webサーバ」が接続されている。
- 「内部ネットワーク」には「L3SW」があり、「PC」、「ファイル共有サーバ」、「認証サーバ」が接続されている。
- 「FW」と「L3SW」が接続されている。
- 「営業所1」の構成:
- インターネットと接続する「UTM」の下に「営業所1 VPNサーバ」がある。
- さらにその下に「内部ネットワーク」があり、複数の「PC」が接続されている。
- 「営業所2」の構成:
- インターネットと接続する「UTM」の下に「営業所2 VPNサーバ」がある。
- さらにその下に「内部ネットワーク」があり、複数の「PC」が接続されている。
- 凡例:
- FW : ファイアウォール
- L3SW : レイヤー3スイッチ
- L2SW : レイヤー2スイッチ
- UTM : 統合脅威管理システム
- 注記: Web 会議サービスは今後利用を検討している SaaS である。
〔W社の各サーバの機能〕
W社の各サーバの機能を次に示す。
- 本社VPNサーバは,各営業所のVPNサーバとの間でインターネットVPNで拠点間を接続する。また,社員のテレワーク環境にあるPCにリモートアクセス機能を提供する。
- 本社,各営業所及び社員のテレワーク環境のPCのWebブラウザからインターネット上のWebサイトへの接続は,本社のプロキシサーバを経由して行われる。プロキシサーバは,インターネット上の Webサイトへのアクセス時のコンテンツフィルタリングやログの取得を行う。
- ファイル共有サーバには,社員ごとや組織ごとに保存領域があり,PCにはファイルを保存しない運用をしている。
- 認証サーバでは,社員の ID,パスワードなどを管理して,PCやファイル共有サーバへのログイン認証を行っている。
現在利用している本社のインターネット接続回線は,契約帯域が 100Mビット/秒(上り/下り)で帯域非保証型である。
〔テレワークの拡大〕
W社では,テレワークを拡大することになり,情報システム部の X部長の指示で Yさんがテレワーク環境への移行を担当することになった。
Yさんが移行計画を検討したところ,テレワークに必要な PC(以下,リモートPCという),VPNサーバ及びリモートアクセスに必要なソフトウェアとそのライセンスの入手は即時可能であるが,本社のインターネット接続回線の帯域増強工事は,2か月掛かることが分かった。そこで Yさんは,ネットワークの帯域増強工事が完了するまでの間,ネットワークに流れる通信量を監視しながら移行を進めることにした。
〔W社が採用したリモートアクセス方式〕
今回 Yさんが採用したリモートアクセス方式は, a で暗号化された b 通信を用いたインターネット VPN接続機能によって,社員がリモートPCの Webブラウザから VPNサーバを経由して本社と各営業所の内部ネットワークの PC(以下,内部PCという)を遠隔操作する方式である。ここで,リモートPCからの内部PCの遠隔操作は,内部PCの OSに標準装備された機能を利用して,ネットワーク経由で内部PCのデスクトップ画面情報をリモートPCが受け取って表示し,リモートPCから内部PCのデスクトップ操作を行うことで実現する。
この方式では,リモートPCから内部PCを直接操作することになるので,従来の社内作業をそのままリモートPCから行うことができる。リモートPCからの遠隔操作で作成した業務データもファイル共有サーバに保存するので,社員が出社した際にも業務データをそのまま利用できる。
なお,本社VPNサーバと各営業所のVPNサーバとの間を接続する通信で用いられている暗号化機能は,aとは異なり,ネットワーク層で暗号化するcを用いている。
〔リモートアクセスの認証処理〕
Webサーバにリモートアクセス認証で必要なソフトウェアをインストールして,あらかじめ社員ごとに払い出されたリモートアクセス用IDなどを登録しておく。また,①リモートPCにはリモートアクセスに必要な2種類の証明書をダウンロードする。
テレワークの社員がリモートアクセスするときの認証処理は,次の二段階で行われる。
第一段階の認証処理は,本社VPNサーバにリモートPCのWebブラウザからVPN接続をする際の認証である。まず,社員はWebサーバのリモートログイン専用のページにアクセスして,リモートアクセス用のIDを入力することによってVPN接続に必要で一定時間だけ有効なdを入手する。このリモートログイン専用のページにアクセスする際には,リモートPC上の証明書が利用される。次にWebブラウザから本社VPNサーバにアクセスして,リモートアクセス用のIDとdを入力することによってリモートPC上の証明書と合わせてVPN接続の認証が行われる。
第二段階の認証処理は,通常社内で内部PCにログインする際に利用するIDとパスワードを用いてeで行われる。
〔テレワークで利用するWeb会議サービス〕
テレワークで利用するWeb会議サービスは,インターネット上でSaaSとして提供されているV社のWeb会議サービスを採用することになった。このWeb会議サービスは,内部PCのWebブラウザとSaaS上のWeb会議サービスとを接続して利用する。Web会議サービスでは,同時に複数のPCが参加することができ,ビデオ映像と音声が参加しているPC間で共有される。利用者はマイクとカメラの利用の要否をそれぞれ選択することができる。
〔テレワーク移行中に発生したシステムトラブルの原因と対策〕
テレワークへの移行を進めていたある日,リモートPCから内部PCにリモート接続するPC数が増えたことで, リモートPCでは画面応答やファイル操作などの反応が遅くなったり, Web会議サービスでは画面の映像や音声が中断したりする事象が頻発した。
社員から業務に支障を来すと申告を受けたYさんは, 直ちに原因を調査した。
Yさんが原因を調査した結果, 次のことが分かった。
(1) 社内ネットワークを流れる通信量を複数箇所で測定したところ, 本社のインターネット接続回線の帯域使用率が非常に高い。
(2) 本社のインターネット接続回線を流れる通信量を通信の種類ごとに調べたところ, Web会議サービスの通信量が特に多い。このWeb会議サービスの②通信経路に関する要因のほかに, 映像通信が集中して通信量が増大することが要因となったのではないかと考え, 利用者1人当たりの10分間の平均転送データ量を実測した。その結果は, 映像と音声を用いた通信方式の場合で120Mバイトであった。これを通信帯域に換算すると f Mビット/秒となる。
社員200名のうち60%の社員が同時にこのWeb会議サービスの通信方式を利用する場合, 使用する通信帯域は g Mビット/秒となり, この通信だけで本社のインターネット接続回線の契約帯域を超えてしまう。
Yさんは, 本社のインターネット接続回線を流れる通信量を抑える方策として, 営業所1と営業所2に設置された③UTMを利用してインターネットの特定サイトへアクセスする設定と営業所PCのWebブラウザに例外設定とを追加した。
Yさんは, 今回の原因調査の結果と対策案をX部長に報告しトラブル対策を実施した。その後本社のインターネット接続回線の帯域増強工事が完了し, UTMと営業所PCのWebブラウザの設定を元に戻し, テレワーク環境への移行が完了した。
設問と解答・解説
空欄 bに入れる適切な字句を選べ。
模範解答
選択肢イ: HTTPS
解説
WebブラウザとWebサーバ間で安全に通信を行うためのプロトコルとして、HTTP通信をTLSで暗号化したものが HTTPS です。Webアクセスなどの用途において、アプリケーション層レベルでの暗号化通信を提供する標準的な手法です。
各選択肢の解説
- ア: FTPは暗号化機能を伴わないファイル転送プロトコルです。
- ウ: IPSecはネットワーク層でパケット全体を暗号化する技術です。
- エ: Kerberosは認証システムのためのプロトコルです。
- オ: LDAPはディレクトリ情報を検索・参照するためのプロトコルです。
- カ: TLSはトランスポート層での暗号化プロトコルであり、HTTPと組み合わせることでHTTPSとなります。
空欄 cに入れる適切な字句を選べ。
設問2
〔リモートアクセスの認証処理〕について答えよ。
本文中の下線①について,どのサーバの認証機能を利用するために必要な証明書か。図1中のサーバ名を用いて全て答えよ。
模範解答
Webサーバ,本社VPNサーバ
採点基準
- 3点: 「Webサーバ」と「本社VPNサーバ」の両方が正しく解答されている。
- 1点: 「Webサーバ」または「本社VPNサーバ」のいずれか1つのみ正しく解答されている。
- 0点: 正答となる用語が解答に含まれていない。
本文中の d に入れる適切な字句を片仮名10字で答えよ。
模範解答
ワンタイムパスワード
採点基準
- 3点: 「ワンタイムパスワード」と正確に解答されている。
- 1点: ワンタイムパスワードに言及しているが、片仮名以外の文字が含まれるなど、形式に誤りがある。
- 0点: 正答となる用語が解答に含まれていない。
解説
パスワードの漏えいによる不正アクセスを防ぐための対策として、一度しか使用できない使い捨てのパスワードである ワンタイムパスワード が有効です。トークンやスマートフォンアプリを用いて一定時間ごとに生成されるパスワードを入力させることで、静的なパスワードへの依存を減らし、セキュリティを高めます。
高得点のポイント
- 片仮名10文字で ワンタイムパスワード と正確に記述すること。
- 指定された字数や字種(片仮名)の条件を満たすこと。
本文中の e に入れる適切な字句を,図1中のサーバ名を用いて8字以内で答えよ。
模範解答
認証サーバ
採点基準
- 3点: 「認証サーバ」と正確に解答されている。
- 1点: 認証機能に関する記述があるが、図1中の用語と完全には一致していない。
- 0点: 正答となる用語が解答に含まれていない。
解説
ユーザの認証情報を一元管理し、アクセス要求に対して正当性を検証するサーバは 認証サーバ です。VPNサーバやWebサーバが受け取った認証要求は、バックエンドの認証サーバに転送され、そこでIDとパスワード等の検証が行われます。
高得点のポイント
- 図1中の用語に従い 認証サーバ と正確に解答すること。 - 8字以内という字数制限を満たすこと。
設問2(1)は,正答率が低かった。リモートアクセスの認証処理で用いられる2種類の証明書をどのサーバの認証機能で利用するのかを,問題文中の第一段階の認証処理で示された処理の流れの中から丁寧に読み取り,正答を導き出してほしい。
設問3
〔テレワーク移行中に発生したシステムトラブルの原因と対策〕について答えよ。
本文中の下線②について,要因となるのはどのようなことか。適切な記述を解答群の中から選び,記号で答えよ。
模範解答
選択肢イ: Web会議サービスの全ての通信が本社のインターネット接続回線を通る。
解説
テレワークの移行に伴い、多数の社員がWeb会議サービスを利用する場合、映像や音声の通信によってネットワーク帯域が大きく消費されます。全ての通信が本社のインターネット接続回線を経由する構成になっていると、本社回線の帯域が逼迫し、システムトラブル(通信遅延や切断など)の要因となります。
各選択肢の解説
- ア: UTMを通ること自体は帯域逼迫の直接的なボトルネック要因としては不十分であり、インターネット回線の圧迫が主因です。
- イ: 正解。本社のインターネット接続回線にトラフィックが集中することがトラブルの主な要因です。
- ウ: 利用率だけでは通信経路の集中は説明できません。
- エ: 認証処理の有無はトラフィック集中による帯域逼迫の直接的な原因ではありません。
- オ: 内部ネットワーク内の通信は本社のインターネット接続回線を逼迫させません。
本文中の f に入れる適切な数値を答えよ。
模範解答
1.6
解説
ネットワークの通信帯域の計算に関する問題です。各クライアントが必要とする帯域と同時利用人数の積などから、必要となる総帯域を算出した結果が 1.6 となります。設問の条件(例えば、一人当たりの必要帯域や利用率)に基づいて正確に計算を行う必要があります。
各選択肢の解説
- 誤答選択肢はありません。計算式を正確に立てて導き出された 1.6 のみが正答となります。
本文中の g に入れる適切な数値を答えよ。
模範解答
192
解説
テレワーク時のネットワーク通信帯域やシステムリソースの要件を求める計算です。与えられた前提条件(同時接続数やセッションあたりの帯域幅など)を掛け合わせることで、必要となる帯域が 192 として導き出されます。計算ミスに注意し、要件を正確に反映させることが重要です。
各選択肢の解説
- 誤答選択肢はありません。与えられた数値をもとに正確な計算を行い、 192 を導き出すことが求められます。
本文中の下線③の設定によって,UTMに設定されたアクセスを許可する,FW以外の接続先を図1中の用語を用いて全て答えよ。
模範解答
Web会議サービス,本社VPNサーバ
採点基準
- 3点: 「Web会議サービス」と「本社VPNサーバ」の両方が正しく解答されている。
- 1点: 「Web会議サービス」または「本社VPNサーバ」のいずれか1つのみ正しく解答されている。
- 0点: 正答となる用語が解答に含まれていない。
設問3(1)(2)は,正答率がやや高かった。今回のテレワーク移行中に発生したシステムトラブルの要因やネットワークの通信帯域の計算については,正しく理解されていることがうかがえた。