令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午後問題 問11 工場在庫管理システムの監査手続とコントロール
マネジメントシステム監査
この問題は2023(R5)春 応用情報技術者 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
製造会社の工場在庫管理システムを対象としたシステム監査の問題です。監査手続を「人か自動処理か」「何を突合するか」で分類し、CSV入力の正確性・網羅性や夜間バッチの統制を確認します。追加手続が防ぐ誤りと不正も対応付けます。本文・表・図の根拠を行き来し、用語だけを暗記するのではなく、短い記述にも判断の理由を残して解答する手順を示します。
この記事で押さえる論点
- 入庫・出庫・仕掛品・実地棚卸・アクセス管理の各プロセスに潜む不正リスクを特定する
- 手作業統制と自動化統制を区別し、監査手続がどちらを確かめているかを判定する
- 出庫データ自動生成と工程マスタの関係から在庫差異が生じる仕組みを説明できる
- 実地棚卸リストの網羅性や他人の利用者IDの利用を検出する追加手続を組み立てる
出題情報
- 出題
- 2023(R5)春 応用情報技術者 午後 問11
- 配点
- 20点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
業務プロセスを支援するシステムは,不正リスクに対応した機能・コントロールを組み込むことが求められる。システム監査において,業務プロセスを理解した上で不正リスクを識別し,これに対応したITの機能及びコントロールを評価する監査手続を実施する必要がある。 本問では,工場在庫管理システムを事例として,不正リスクを想定しながらシステムの運用状況を確かめるための監査手続を検討する能力を問う。
問11では,工場在庫管理システムを題材に,業務プロセスを理解した上で,不正リスクを想定しながら監査で確かめるべきコントロール,監査要点に対応する監査手続について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
問11 工場在庫管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
Y社は製造会社であり,国内に5か所の工場を有している。Y社では,コスト削減,製造品質の改善などの生産効率向上の目標達成が求められており,あわせて不正防止を含めた原料の入出庫及び生産実績の管理の観点から,情報の信頼性向上が重要となっている。このような状況を踏まえ,内部監査室長は,工場在庫管理システムを対象に工場での運用状況の有効性についてシステム監査を実施することにした。
〔予備調査の概要〕
監査担当者が予備調査で入手した情報は,次のとおりである。
(1) 工場在庫管理システム及びその関連システムの概要を,図1に示す。

図の説明テキスト
システムの構成図であり、各システム間の関係が矢印で示されている。
- 「MES (製造実行システム)」から「工場在庫管理システム」へ下向きの矢印が引かれている。
- 「購買管理システム」(内部に「入荷データ」を含む)から「工場在庫管理システム」へ右向きの矢印が引かれており、矢印の上に「CSVファイル」と記述されている。
- 「工場在庫管理システム」の枠内には、「入庫データ・出庫データ」「在庫データ」「製造実績データ」「工程マスタ」の4つのデータ要素(円柱・楕円形)が含まれている。
- 工場在庫管理システムは,原料の入庫データ・出庫データ,原料・仕掛品の在庫データ,仕掛品の工程別の製造実績データ及び工程マスタを有している。また,工程マスタには,仕掛品の各製造工程で消費する原料標準使用量などが登録されている。
- 原料の入庫データは,購買管理システムの入荷データから入手する。また,製造実績データは,製造工程を制御・管理しているMESの工程実績データから入手する。
- 工程マスタ,入庫データ・出庫データなどの入力権限は,工場在庫管理システムの個人別の利用者IDとパスワードで制御している。過去の内部監査において,工場の作業現場のPCが利用後もログインされたまま,複数の工場担当者が利用していたことが指摘されていた。
- 工場在庫管理システムの開発・運用業務は,本社のシステム部が行っている。
(2) 工場在庫管理システムに関するプロセスの概要は,次のとおりである。
- 工場担当者が購買管理システムの当日の入荷データを CSVファイルにダウンロードし,件数と内容を確認後に工場在庫管理システムにアップロードすると,入庫データの生成及び在庫データの更新が行われる。工場担当者は,作業実施結果として,作業実施日及びエラーの有無を入庫作業台帳に記録している。
- 製造で消費された原料の出庫データは,製造実績データ及び工程マスタの原料標準使用量に基づいて自動生成(以下,出庫データ自動生成という)される。このため,実際の出庫実績を工場在庫管理システムに入力する必要はない。また,工程マスタは,目標生産効率を考慮して,適宜,見直しされる。
- 仕掛品については,MESから日次で受信した工程実績データに基づいて,日次の夜間バッチ処理で,製造実績データ及び在庫データが更新される。
- 工場では,本社管理部の立会いの下で,原料・仕掛品の実地棚卸が月次で行われている。工場担当者は,保管場所・在庫種別ごとに在庫データを抽出し,実地棚卸リストを出力する。工場担当者は,実地棚卸リストに基づいて実地棚卸を実施し,在庫の差異があった場合には実地棚卸リストに記入し,在庫調整入力を行う。この入力に基づいて,原料の出庫データ及び原料・仕掛品の在庫データの更新が行われる。
- 工場では,工場在庫管理システムから利用者ID,利用者名,権限,ID登録日,最新利用日などの情報を年次で利用者リストに出力し,不要な利用者IDがないか確認している。この確認結果として,不要な利用者IDが発見された場合は,利用者IDが削除されるように利用者リストに追記する。
〔監査手続の作成〕
監査担当者が作成した監査手続案を表1に示す。

図の説明テキスト
| 項番 | プロセス | 監査手続 |
|---|---|---|
| 1 | 原料の入庫 | ① CSVファイルのアップロードが実行され,実行結果としてエラーの有無が記載されているか入庫作業台帳を確かめる。 |
| 2 | 原料の出庫 | ① 出庫データ自動生成の基礎となる工程マスタに適切な原料標準使用量が設定されているか確かめる。 |
| 3 | 仕掛品の在庫 | ① 工程マスタの工程の順番がMESと一致しているか確かめる。 ② 当日にMESから受信した工程実績データに基づいて,仕掛品の在庫が適切に更新されているか確かめる。 |
| 4 | 実地棚卸 | ① 実地棚卸リストに実地棚卸結果が適切に記載されているか確かめる。 ② 実地棚卸で判明した差異が正確に在庫調整入力されているか確かめる。 |
| 5 | 共通 (アクセス管理) |
① 工場内PCを観察し,作業現場のPCがaされたままになっていないか確かめる。 ② 利用者リストを閲覧し,長期間アクセスのない工場担当者を把握し,利用者IDが適切に削除されるように記載されているか確かめる。 |
内部監査室長は,表1をレビューし,次のとおり監査担当者に指示した。
(1) 表1項番1の①は,bを確かめる監査手続である。これとは別に不正リスクを鑑み,アップロードしたCSVファイルとcとの整合性を確保するためのコントロールに関する追加的な監査手続を作成すること。
(2) 表1項番2の①は,出庫データ自動生成ではdが発生する可能性が高いので,設定される工程マスタの妥当性についても確かめること。
(3) 表1項番3の②は,eを確かめる監査手続なので,今回の監査目的を踏まえて実施の要否を検討すること。
(4) 表1項番4の①の前提として,fに記載されたgの網羅性が確保されているかについても確かめること。
(5) 表1項番4の②は,在庫の改ざんのリスクを踏まえ,差異のなかったgについて在庫調整入力が行われていないか追加的な監査手続を作成すること。
(6) 表1項番5の②は,不要な利用者IDだけでなく,hを利用してアクセスしている利用者も検出するための追加的な監査手続を作成すること。
設問と解答・解説
設問1
〔監査手続の作成〕の a に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。
模範解答
ログイン
採点基準(配点 5点)
正確性(内容)(5点)
- 5点: 「ログイン」と正確に解答している。
- 2点: 同義の言葉を解答しているが、題意に照らして最適とは言えない、または些細な誤字がある。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容を解答している。
解説
システム監査では、情報システムに対するアクセス制御が適切に機能しているかを確認することが重要です。工場在庫管理システムにおいては、正当な権限を持たない者のアクセスを防ぐために、ログイン時の認証機能の有効性が問われます。
高得点のポイント
- システムへのアクセス制御として「ログイン」というキーワードを特定し、5字以内で簡潔に解答できていること。
設問2
模範解答
選択肢カ: b: 手作業の正確性・網羅性, c: 購買管理システムの入荷データ
配点 2点
解説
業務システムの統制は、システムによる自動化された統制だけでなく、人為的な手作業統制の組み合わせによって成り立っています。購買管理システムと工場在庫管理システムの連携においては、システム外の手作業(入荷の確認など)が正しく行われているかを担保する統制が重要です。監査では、連携元となる「購買管理システムの入荷データ」と突き合わせ、正確性・網羅性を確認します。
各選択肢の解説
- ア〜ウ: 「自動処理の正確性・網羅性」としていますが、入荷から入力までのプロセスには手作業が介在するため不適切です。
- エ〜オ: データの突合先として工場在庫管理システム内のデータ(在庫・入庫データ)を選択していますが、システム間の連携や上流プロセスとの整合性を確認するためには「購買管理システムの入荷データ」を用いる必要があります。
設問2は,正答率が低かった。システムの統制は,業務システムで自動化された統制だけでなく,人為的な手作業の統制を組み合わせることが多い。この設問に対応する統制がどちらであるかを読み取って,正答を導き出してほしい。
設問3
〔監査手続の作成〕の d に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
模範解答
選択肢イ: 在庫の差異
配点 2点
解説
工場在庫管理システムにおいて不正リスクやエラーに対応するためには、システム上の理論値と実際の物理的な在庫数との間に生じる在庫の差異を把握し、原因を分析する監査手続が不可欠です。
各選択肢の解説
- ア(工程間違い): 生産管理の対象であり、在庫の正確性を直接確認する差異分析ではありません。
- ウ(製造実績の差異): 製造プロセスのパフォーマンス評価に関連するものであり、在庫そのものの差異確認には該当しません。
- エ(入庫の差異): 入庫時点のみに着目しており、保有している全体の在庫差異を網羅できません。
設問4
〔監査手続の作成〕の e に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
模範解答
選択肢ア: 自動化統制
配点 2点
解説
業務プロセスを支援するシステムにおいては、不正を防止・発見するための機能がシステムに組み込まれています。このような、ITシステムによって自動的に実行されるコントロールを自動化統制(IT業務処理統制)と呼びます。
各選択肢の解説
- イ(全社統制): 組織全体の内部統制環境等を指すものであり、個別の業務プロセスに組み込まれたIT機能の統制ではありません。
- ウ(手作業統制): 人がマニュアルで実施する統制活動であり、システムに組み込まれた統制とは異なります。
- エ(モニタリング): 内部統制の構成要素の一つ(監視活動)であり、個別の統制活動(IT機能)の種別を示す用語としては不適切です。
設問5
(1)
模範解答
実地棚卸リスト
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 「実地棚卸リスト」と正確に解答している。
- 1点: 「棚卸リスト」など意味は通じるが完全ではない解答、または些細な誤字がある。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容を解答している。
解説
物理的な在庫の現況を確認するためには、実地棚卸の手続きが不可欠です。システム監査では、システム上のデータと実際の物理的在庫を突き合わせるために出力される実地棚卸リストなどの帳票が正しく利用・管理されているかを確認します。
高得点のポイント
- 監査手続において物理的在庫との突き合わせに用いる資料名「実地棚卸リスト」を正確に解答できていること。
(2)
模範解答
在庫データ
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 「在庫データ」と正確に解答している。
- 1点: 意味は通じるが完全ではない解答、または些細な誤字がある。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容を解答している。
解説
実地棚卸の際には、物理的な在庫数と工場在庫管理システム上に記録されている在庫データ(理論在庫)を比較し、差異の有無やその原因を特定する手続きが行われます。
高得点のポイント
- 突き合わせの対象となるシステム上の情報として「在庫データ」を的確に解答できていること。
(3)
模範解答
他人の利用者ID
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 「他人の利用者ID」と正確に解答している。
- 1点: 「他人のID」など意味は通じるが指定の文字数や表現に対してやや不正確な解答。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容を解答している。
解説
工場の作業現場では、複数人で一台のPCを共有して作業記録等を入力するケースがあります。この時、利用者が離席時にログオフを怠ると、悪意の有無に関わらず他人の利用者IDを用いた操作が可能となり、アクセスの追跡性(アカウンタビリティ)が失われる不正リスクが生じます。
高得点のポイント
- 現場でのPCの利用状況から、利用者IDに関するセキュリティ・不正リスクとして「他人の利用者ID」が不正利用される可能性を読み取れていること。
設問5のhは,正答率がやや低かった。工場の作業現場におけるPCの利用状況から,利用者IDがどのように利用されているのかを読み取って,正答を導き出してほしい。