令和7年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問題 問11 アクセス管理点検の実効性監査
この問題は2025(R7)秋 応用情報技術者 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
企業グループ全体のアクセス管理状況の点検を対象とするシステム監査の問題です。各社が実施する自己点検が形骸化していないか、つまり点検の実効性をどう確かめるかが全設問を貫くテーマになります。内部監査部長の指示に沿って点検表や監査要点案の空欄を埋める形式ですが、単なる穴埋めではなく監査の考え方の理解が問われます。この記事では、実効性を構成する要素を分解してから各空欄の解答を検討します。
この記事で押さえる論点
- グループ全体の点検活動の実効性を確かめる監査の観点を理解する
- 点検表と監査要点案の空欄を「何を確かめたいか」から導く
- 自己点検の限界を補う監査手続を検討する
出題情報
- 出題
- 2025(R7)秋 応用情報技術者 午後 問11
- 配点
- 20点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
企業などの組織においては、様々な情報システムが利活用される一方、システムリスクは増大の傾向にある。このような状況の下、組織全体として、システムリスク管理部門が主導する点検などを通じて発見された問題に適切に対応することによって、システムリスク管理の実効性を確保することが重要である。本問では、企業グループ全体を対象とした情報システムのアクセス管理状況の点検に関する監査を題材として、点検の実効性が確保されているか確認するための監査手続などを検討する能力を問う。
問11では,企業グループ全体を対象とした情報システムのアクセス管理状況の点検に関する監査を題材として,点検の実効性が確保されているかどうかを確かめるための監査手続などについて出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
情報システムのアクセス管理状況の点検に関する監査について,次の記述を読んで,設問に答えよ。
P社グループは,持株会社P社,小売業Q社,金融業R社,人材派遣業S社(以下,グループ各社という)から構成される企業グループであり,様々な情報システムを利用している。P社システム統括部は,P社グループ全体のシステムリスク管理を所管し,グループ各社におけるアクセス管理状況に関する自主点検(以下,点検という)などを主導している。一方,P社グループでは,アクセス管理策の不備に起因する情報漏えい事案などが発生していた。
P社内部監査部は,このような状況を踏まえて,グループ各社を対象として,点検の実効性が確保されているかどうか,監査を実施することにした。システム監査チームは,予備調査を実施して,P社グループの情報システムの運用状況及び点検の概要を次のとおり把握し,本調査での監査要点案を作成した。
〔情報システムの運用状況〕
(1) P社システム統括部は,グループ各社のシステム部からの報告内容に基づき,IT機器管理表及びアプリケーションソフトウェア管理表(以下,各管理表という)を更新している。
(2) IT機器管理表には,グループ各社が管理するサーバ,PCなどの識別番号,OS,業務委託の有無などが記載されている。また,アプリケーションソフトウェア管理表には,グループ各社が利用するアプリケーションソフトウェア名,取り扱う情報の内容,業務委託の有無などが記載されている。
(3) P社のアクセス管理規程に定められた管理策は,原則としてグループ各社に適用される。当該規程では,例えば,グループ各社に配置されたPCは,利用者ごとのID及びパスワードでログインすることが定められている。
(4) グループ各社においてアクセス管理規程に定められた管理策を適用できない場合には,グループ各社のシステム部が代替の管理策を申請し,P社システム統括部長の承認を受ける。
(5) P社は,グループ各社が共同利用するグループウェア,経理システム,人材管理システムなどのほか,グループ各社の営業情報などを収集,モニタリングする経営情報システムを保有しており,T社に運用,保守を業務委託している。
(6) Q社は,R社発行のクレジットカードを利用した顧客の購買履歴などを分析する顧客管理システムを保有しており,U社に運用,保守を業務委託している。
(7) Q社の店舗には,複数の従業員が共用するPCが配置されており,顧客対応上の必要性を考慮して,共用のID及びパスワードでログインする。店舗のシステム管理者は当該パスワードを10営業日ごとに変更し,店舗の従業員に連絡する。P社システム統括部長は,当該管理策を承認している。
(8) S社は,派遣スタッフの氏名,派遣先,時間単価などを派遣システムで管理している。予備調査の1か月前には,派遣システムのアクセス管理策の運用状況に関する不備に起因して,派遣スタッフの個人情報が漏えいする事案(以下,情報漏えい事案という)が発生していた。
〔点検の概要〕
(1) 点検プロセスの概要は,次のとおりである。
- ① P社システム統括部は,アクセス管理規程,各管理表などに基づき,点検のポイント,対象などを設定し,グループ各社の点検表を作成して,グループ各社のシステム部に半年ごとに点検を指示する。
- ② グループ各社のシステム部は,点検表に基づき点検を実施し,当該点検の結果,不備についての是正状況などをP社システム統括部に報告する。
- ③ P社システム統括部は,点検に関する報告内容を確認し,必要に応じて,不備について是正を進めるよう指導,支援する。
- ④ P社システム統括部は,グループ各社のシステム部からの点検に関する報告内容などを踏まえて,点検のポイント,対象などを見直す。
(2) P社システム統括部の担当者は,各管理表に点検の対象かどうかを記載し,1か月ごとに更新している。システム統括部長は,担当者から更新の内容及び理由について説明を受け,各管理表に承認したことを記録する。
(3) グループ各社のシステム部は,顧客情報,営業情報などを取り扱う情報システムの運用,保守を業務委託する場合,点検の一環として,委託先のアクセス管理状況を確認し,P社システム統括部に報告することになっている。Q社のシステム部からは当該点検の都度,U社におけるアクセス管理策の不備が報告されていた。
(4) 予備調査までにS社以外のグループ各社で実施された点検では,何らかの不備が発見されていた。一方,S社で情報漏えい事案の発生時までに実施された点検では,派遣システムのアクセス管理策の運用状況を点検していたものの,不備は全く発見されていなかった。
(5) P社システム統括部が作成した点検表の例(抜粋)を表1に示す。

図の説明テキスト
表1 点検表の例(抜粋)
| 会社名 | (省略) | (省略) | (省略) |
| 点検の項番 | 点検のポイント | 点検の対象 | 点検の結果 |
| 1 | PCにログインする際に,利用者ごとのID及びパスワードを用いているか。 | (省略) | (省略) |
| 2 | 委託先におけるアクセス管理状況の不備について,是正状況を確認しているか。 | (省略) | (省略) |
〔監査要点案の作成〕
システム監査チームが予備調査の結果を踏まえて作成した本調査での監査要点案(抜粋)を表2に示す。

図の説明テキスト
表2 監査要点案(抜粋)
| 項番 | 監査要点 |
| 1 | 点検のポイントは,適切に設定されているか。 |
| 2 | 点検の結果は,実態と整合しているか。 |
| 3 | 点検で発見された不備は,適切に是正されているか。 |
| 4 | 点検の対象は,適切に見直されているか。 |
〔内部監査部長の指示〕
内部監査部長は,本調査での監査要点案をレビューして,次のとおり指示した。
(1) 表2項番1の監査要点に関して,グループ各社においてアクセス管理規程に定められた管理策が適用できない場合のaも考慮して,点検のポイントを適切に設定しているか,確認すること。
(2) 表2項番2の監査要点に関して,効率よく監査を実施するために監査対象をサンプリングする場合には,bが形骸化しているおそれが大きいと想定されるS社を含めること。
(3) 表2項番3の監査要点に関して,グループ各社及びcにおける不備についての是正状況を確認するだけではなく,dがQ社のシステム部に対して,eしているか,確認すること。
(4) 表2項番4の監査要点に関して,点検の対象が記載されている各管理表の更新について,P社システム統括部長のfを確認するだけではなく,P社システム統括部長がgを把握しているか,インタビューによって確認すること。
(5) 表2項番1〜4の監査要点に加えて,点検の対象を見直した結果に基づき,グループ各社に点検が指示されているか,hとiとを照合して,確認すること。
設問と解答・解説
設問1
〔内部監査部長の指示〕(1)のaに入れる適切な字句を,10字以内で答えよ。
模範解答
代替の管理策の適用
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(4点)
- 4点: 「代替の管理策の適用」と正しく記述されている。
- 2点: 代替策の適用に関する趣旨は理解できるが、用語が不正確である。
- 0点: 無回答、または全く関係のない内容である。
解説
システムリスク管理における点検プロセスの実効性を確保するための監査手続に関する問題です。
システム上の問題を直ちに根本的に解決できない場合、リスクを低減するための暫定的な対応が求められます。このような対応を 代替の管理策の適用 と呼びます。
点検を通じて発見された問題に対して、適切な代替の管理策が適用されているかを確認することは、組織全体としてのシステムリスク管理の実効性を確保するうえで非常に重要です。
高得点のポイント
- 代替の管理策の適用 というキーワードを正確に記述できていること。
- 字数制限(10字以内)を遵守していること。
設問2
〔内部監査部長の指示〕(2)のbに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
模範解答
選択肢エ: 点検
配点 2点
解説
企業グループ全体を対象とした情報システムのアクセス管理状況に関する監査手続の問題です。
情報システムのアクセス管理状況が適切に行われているかを確認するためには、システムリスク管理部門が主導する 点検 が有効に機能しているかを確かめる必要があります。したがって、文脈から適切な字句は「点検」となります。
各選択肢の解説
- ア 監査: 監査部門が行うものであり、システムリスク管理部門が日常的または定期的に行う活動としては不適切です。
- イ 承認: アクセス権の付与などに伴う手続きの一部であり、管理状況全体を確認する活動の名称としては不適切です。
- ウ 情報漏えい事案: 事後的なインシデントであり、予防や確認のための活動ではありません。
- エ 点検: システムリスク管理部門が主導してアクセス管理状況などを確認する活動として適切です。(正解)
- オ 派遣システム: 対象となるシステムの一例に過ぎず、文脈に合いません。
- カ 予備調査: 監査計画を立案するために事前に行う調査であり、不適切です。
設問3
〔内部監査部長の指示〕(3)について答えよ。
(1)
本文中のcに入れる適切な字句を,5字以内で答えよ。
模範解答
委託先
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「委託先」と正確に抜き出している。
- 1点: 対象語句を含むが、不要な文字が含まれている。
- 0点: 正答を含まない、または無回答。
解説
システムリスク管理部門の役割の遂行状況を確認するための問題です。
点検プロセスの概要を踏まえ、点検に関するシステムリスク管理部門の役割が適切に果たされているかを確認する必要があります。本文中の記述から、委託業務におけるアクセス管理状況などを把握するためには、委託先 の状況を確認することが不可欠です。
高得点のポイント
- 本文から 委託先 を正確に抜き出していること。
- 指定された字数(5字以内)に収めていること。
(2)
本文中のdに入れる適切な字句を,10字以内で答えよ。
模範解答
P社システム統括部
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「P社システム統括部」と正確に抜き出している。
- 1点: 対象語句を含むが、不要な文字が含まれている。
- 0点: 正答を含まない、または無回答。
解説
グループ全体の点検プロセスにおける役割分担を把握するための問題です。
本文の記述より、企業グループ内の各システムに対する点検や管理を統括・指導する立場にある組織の名称を抜き出します。文脈上、グループ会社や各部門に対して点検の指示や支援を行うのは P社システム統括部 です。
高得点のポイント
- 本文から P社システム統括部 を正確に抜き出していること。
- 指定された字数(10字以内)に収めていること。
(3)
本文中のeに入れる適切な字句を,15字以内で答えよ。
模範解答
是正を進めるよう指導、支援
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「是正を進めるよう指導、支援」と正確に抜き出している。
- 1点: 部分的に抜き出している(「指導、支援」のみなど)。
- 0点: 正答を含まない、または無回答。
解説
システムリスク管理部門が発見された問題に対してどのように対応すべきかを問う問題です。
点検によってアクセス管理の不備や問題が発見された場合、システムリスク管理部門は単に指摘するだけでなく、対象部門やグループ会社に対して具体的な改善を促す役割を担います。本文中では、この役割が 是正を進めるよう指導、支援 と表現されています。
高得点のポイント
- 発見された問題に対する具体的な対応として、是正を進めるよう指導、支援 を本文から過不足なく抜き出していること。
- 指定された字数(15字以内)に収めていること。
設問3(3)は,正答率が低かった。点検プロセスの概要などを踏まえて,点検に関するシステムリスク管理部門の役割の遂行状況について確認する必要があることを理解してほしい。
設問4
〔内部監査部長の指示〕(4)について答えよ。
(1)
本文中のfに入れる適切な字句を,5字以内で答えよ。
模範解答
承認の記録
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「承認の記録」と正確に抜き出している。
- 1点: 対象語句を含むが、不要な文字が含まれている。
- 0点: 正答を含まない、または無回答。
解説
アクセス権の管理手続きにおいて、適切性が担保されているかを確認するための問題です。
情報システムのアクセス権を付与・変更・削除する際には、権限を持つ者による承認が不可欠です。監査手続において、その手続きがルール通りに行われているかを客観的に確認するためには、事後的に検証可能な 承認の記録 を確認する必要があります。
高得点のポイント
- 本文から 承認の記録 を正確に抜き出していること。
- 指定された字数(5字以内)に収めていること。
(2)
本文中のgに入れる適切な字句を,10字以内で答えよ。
模範解答
更新の内容及び理由
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「更新の内容及び理由」と正確に抜き出している。
- 1点: 対象語句を含むが、不要な文字が含まれている。
- 0点: 正答を含まない、または無回答。
解説
アクセス権限の変更管理における監査上の着眼点を問う問題です。
アクセス権限の設定や変更が適切であることを確認するためには、単にいつ誰が変更したかだけでなく、どのような内容をなぜ変更したのかという正当性を確認する必要があります。したがって、本文中の記述から 更新の内容及び理由 を確認することが求められます。
高得点のポイント
- 本文から 更新の内容及び理由 を正確に抜き出していること。
- 指定された字数(10字以内)に収めていること。
設問5
(1)
hに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
各管理表
点検表
採点基準(配点 2点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 「各管理表」または「点検表」と正しく記述されている。
- 1点: 関連する表の名称を挙げているが、不正確である。
- 0点: 無回答、または全く関係のない内容である。
解説
点検の対象が見直された結果、点検が適切に指示されているかを確認するために照合すべき監査資料に関する問題です。
点検の対象となる情報システムやアクセス権限の範囲が正確に把握されているかを確認するためには、システムの管理状況を網羅的に記載した 各管理表 と、実際に点検を実施するための 点検表 を照合する必要があります。
高得点のポイント
- 各管理表 または 点検表 というキーワードを正確に記述できていること。
- 指定された字数(5字以内)を遵守していること。
(2)
iに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
各管理表
点検表
採点基準(配点 2点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 「点検表」または「各管理表」(hで解答していない方)と正しく記述されている。
- 1点: 関連する表の名称を挙げているが、不正確である。
- 0点: 無回答、または全く関係のない内容である。
解説
点検の対象が見直された結果、点検が適切に指示されているかを確認するために照合すべき監査資料に関する問題です。
設問5(1)と同様に、点検対象の網羅性と正確性を担保するためには、点検表 と 各管理表 の双方を突き合わせて確認することが、実効性のある点検指示の確認につながります。
高得点のポイント
- 各管理表 または 点検表(設問5(1)で解答しなかった方)を正確に記述できていること。
- 指定された字数(5字以内)を遵守していること。
設問5は,正答率がやや低かった。点検プロセスの概要などを踏まえて,点検の対象を見直した結果に基づき,点検が指示されているかを確認するために照合すべき監査資料について,理解してほしい。