令和3年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問題 問3 VoIP環境における音声品質の低下要因とQoSによる優先制御

学習ガイド

クラウド型の音声通話サービスを導入した企業ネットワークにおける、通信品質のトラブルとQoSの設計を扱う問題です。音声パケットに必要な帯域の計算や、データトラフィック増大時のパケット廃棄、レイヤ2およびレイヤ3での優先制御の仕組みが問われます。動画配信によって発生した輻輳のメカニズムを確認した上で、CoS値によるレイヤ2の制御と、Diffservを用いたレイヤ3の制御が連携して音声通話を保護する設定を、ポートの構成と対応づけて読み解いていきます。

この記事で押さえる論点

  • 音声パケットのペイロードサイズと付加されるヘッダのサイズから必要なネットワーク帯域を計算できる
  • VoIPにおけるジッタバッファの役割と、バッファサイズが音声通信のリアルタイム性に与える影響を説明できる
  • IEEE 802.1QのVLANタグに含まれるCoS値を用いたレイヤ2でのキューイング制御を述べられる
  • DiffservのDSCP値を用いたPQとWRRの併用により、用途の異なるパケットを適切に転送する仕組みを説明できる

問題本文

通信品質の確保に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

Y社は,機械製品の輸入及び国内販売を行う社員数500名の商社であり,本社のほかに5か所の営業所(以下,本社及び営業所を拠点という)をもっている。このたび,Y社では,老朽化した電話設備を廃棄して,Z社の音声クラウドサービス(以下,電話サービスという)を利用することで,電話設備の維持管理コストの削減を図ることにした。情報システム部のX主任が,電話サービス導入作業を担当することになった。

〔現状の調査〕

X主任は,既設の電話設備の内容について総務部の担当者から説明を受け,現在の全社のネットワーク構成をまとめた。Y社のネットワーク構成を,図1に示す。

図1 Y社のネットワーク構成
図の説明テキスト

Y社のネットワーク構成図。

  • 本社: ルータ、FW、L3SW0、L2SW0、L2SW01、L2SW02、PBX、IP-GWなどがある。
  • インターネットは本社のルータに接続。
  • 公衆電話網は本社のPBXおよび各営業所のPBXに接続。
  • ルータの下にFWがあり、FWからDMZ(Webサーバ、DNSサーバ、プロキシサーバをもつL2SW0)および社内LANのL3SW0へ繋がる。
  • L3SW0は広域イーサ網、IP-GW、L2SW01、L2SW02、サーバ室(ファイルサーバ、業務サーバ、eLNサーバ)に接続。
  • L2SW01とL2SW02の下にPCが接続。
  • PBXにはIP-GWおよびTELが接続。
  • 営業所(1〜5): L3SW1、L2SW1、PBX、IP-GWなど。
  • 広域イーサ網は営業所のL3SW1に接続。
  • L3SW1の下にL2SW1があり、PCが接続。
  • PBXにはIP-GWおよびTELが接続。
  • 凡例: L2SW: レイヤ2スイッチ、L3SW: レイヤ3スイッチ、FW: ファイアウォール、TEL: 電話機、eLNサーバ: eラーニングシステムのサーバ、IP-GW: 音声信号とIPパケットの変換装置、広域イーサ網: 広域イーサネットサービス網
  • 注記1: 本社のPBXには80回線の外線が収容され、各営業所のPBXには、それぞれ10回線の外線が収容されている。
  • 注記2: 本社のPBXから本社のIP-GWには100回線が接続され、各営業所のPBXから当該営業所のIP-GWには、それぞれ20回線が接続され、拠点間の内線通話に使用されている。

Y社のネットワークの使用方法を次に示す。

  • 社員は,本社のDMZのプロキシサーバ経由でインターネットにアクセスするとともに,本社のサーバ室の複数のサーバを利用している。
  • 拠点間の内線通話は,IP-GWを介して広域イーサ網経由で行っている。

〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕

次に,X主任は,電話サービスの仕様を基に,図2に示す,電話サービス導入後のネットワーク構成を設計した。

図2 電話サービス導入後のネットワーク構成
図の説明テキスト

電話サービス導入後のネットワーク構成図。

  • 公衆電話網はZ社電話サービスのGWを経てインターネットに繋がり、本社のルータに接続される。
  • 本社: ルータ、FW、IPsecルータ、L3SW0、L2SW0、L2SW01、L2SW02などがある。
  • ルータの下にFWがあり、DMZ(Webサーバ、DNSサーバ、プロキシサーバをもつL2SW0)およびL3SW0のポートbへ繋がる。
  • IPsecルータはインターネットとL3SW0のポートaに接続。
  • L3SW0は広域イーサ網(ポートh)にも接続。
  • L3SW0のポートc, d, eは、それぞれサーバ室のファイルサーバ、業務サーバ、eLNサーバに接続。
  • L3SW0のポートfはL2SW01に、ポートgはL2SW02に接続。
  • L2SW01, L2SW02の下にそれぞれ複数のITELが接続され、さらにITELの下にPCが接続。
  • 営業所(1〜5): 広域イーサ網からL3SW1のポートiに接続。
  • L3SW1のポートjはL2SW1に接続。
  • L2SW1の下に複数のITELが接続され、さらにITELの下にPCが接続。
  • 網掛け部分(本社のL2SW01, L2SW02、営業所のL2SW1、および全てのITEL)は、PoE対応製品であることを示す。
  • 注記1: 網掛け部分は、PoE対応製品である。
  • 注記2: L3SW0及びL3SW1のa〜jは、ポートを示す。

図2中のaにはVLAN10,bにはVLAN15,c,d,eにはVLAN20,fにはVLAN100,gにはVLAN150,hにはVLAN25,iにはVLAN200,jにはVLAN210というVLANがそれぞれ設定されている。

ITELは,PoEの受電機能をもつ製品を導入してITEL用の電源タップを不要にする。PCは,ITELのPC接続用のポートに接続する。①営業所のL2SW及び本社のL2SW01とL2SW02は,PoEの給電機能をもつ製品に交換する。

電話サービス導入後は,音声を全てIPパケット化し,データパケットと一緒にLAN上に流す。Y社が利用するVoIP(Voice over Internet Protocol)では,音声の符号化にG.729として標準化されたCS-ACELPが使用される。CS-ACELPのビットレートは,a kビット/秒であり,音声をIPパケット化してLAN上に流すと,イーサネットフレームヘッダのほかに,IP,b及びRTPヘッダが付加されるので,1回線当たり 34.4 kビット/秒の帯域が必要となる。しかし,全社員が同時に通話した場合でも,本社のLANの帯域には余裕があると考えた。

電話サービスには,本社のIPsecルータ経由で接続する。電話サービスは,Y社から送信された外線通話の音声パケットをGWで受信し,セッション管理を行う。

X主任は,図2の構成への変更作業完了後,電話サービスの運用テストを実施し,問題なく終了したので,電話サービスに切り替えた。

〔電話サービスで発生した問題と対策〕

電話サービスへの切替後のあるとき,eLNサーバで提供する動画コンテンツの情報セキュリティ基礎コース(以下,S基礎コースという)を,3日間で全社員に受講させることが決まった。受講日は部署ごとに割り当てられた。

受講開始日の昼過ぎ,本社や営業所の電話利用者から,通話が途切れるというクレームが発生した。X主任は,S基礎コースの受講を停止させて原因を調査した。調査の結果,eLNサーバからS基礎コースの動画パケットが大量に送信されたことが分かった。大量の動画パケットがL3SW0に入力されたことによって,L3SW0で音声パケットの遅延又はcが発生したことが原因であると推定できた。

そこで,X主任は,本社のITEL,L3SW0,L2SW01及びL2SW02と,全営業所のITEL,L3SW及びL2SWに,音声パケットの転送を優先させる設定を行うことにした。例として,本社と営業所1に設定した優先制御の内容を次に示す。

(レイヤ2マーキングによる優先制御)

  • ITEL,L2SW01,L2SW02及びL2SW1に,CoS(Class of Service)値を基にしたPQ(Priority Queuing)による優先制御を設定する。
  • ITELにはVLAN機能があるので,音声フレームとPCが送受信するデータフレームを異なるVLANに所属させ,②ITELのアップリンクポートにタグVLANを設定する。
  • L2SW01に接続するITELには,VLAN100とVLAN105を,L2SW02に接続するITELには,VLAN150とVLAN155を,L2SW1に接続するITELには,VLAN210とVLAN215を設定する。
  • ITELは,音声フレームとデータフレームに異なるCoS値を,フレーム内のTCI(Tag Control Information)の上位3ビットにマーキングして出力する。
  • ITELとL3SWに接続する,L2SW01,L2SW02及びL2SW1のポートには,それぞれキュー1とキュー2の二つの出力キューを作成し,キュー1を最優先キューとする。最優先の設定によって,キュー1のフレーム出力が優先され,キュー1にフレームがなくなるまでキュー2からフレームは出力されない。
  • L2SW01,L2SW02及びL2SW1ではCoS値を基に,③音声フレームをキュー1,データフレームをキュー2に入れる。

(レイヤ3マーキングによる優先制御)

  • L3SWに,Diffserv(Differentiated Services)による優先制御を設定する。
  • 優先制御は,PQとWRR(Weighted Round Robin)を併用する。
  • L3SWのf〜jには,キュー1〜キュー3の3種類の出力キューを作成し,キュー1はPQの最優先キューとし,キュー2とキュー3より優先させる。キュー2には重み比率75%,キュー3には重み比率25%のWRRを設定する。a〜eの出力キューでは,優先制御は行わない。
  • アから受信したフレームにはCoS値がマーキングされているので,CoS値に対応したDSCP(Diffserv Code Point)値を,IPヘッダのdフィールドをDSCPとして再定義した6ビットにマーキングする。
  • イから受信したパケットは,音声パケット,eLNサーバのパケット(以下,eLNパケットという),その他のデータパケット(以下,Dパケットという)の3種類に分類し,対応するDSCP値をマーキングする。
  • L3SWの内部のルータは,受信したパケットの出力ポートを経路表から決定し,DSCP値を基に,音声パケットをキュー1,④eLNパケットをキュー2,Dパケットをキュー3に入れる。

上記の設定を行った後にS基礎コースの受講を再開したが,本社及び営業所の電話利用者からのクレームは発生しなかった。X主任は,優先制御の設定によって問題が解決できたと判断し,システムの運用を継続させた。

設問と解答・解説

設問1

本文中の a 〜 d に入れる適切な字句又は数値を答えよ。

(1)配点 4点

模範解答

8

採点基準

正確性(内容)4点
  • 4点: 正確な数値を解答している。
  • 2点: 近似の数値や関連する数値を解答しているが、不正確である。
  • 0点: 誤っている、または無解答。

解説

  • 穴埋め a について。
  • 問題文中の〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕に「音声の符号化にG.729として標準化されたCS-ACELPが使用される。CS-ACELPのビットレートは,a kビット/秒」と記載されている。
  • CS-ACELP (Conjugate-Structure Algebraic-Code-Excited Linear Prediction) は、VoIPなどで広く利用されているITU-T G.729規格の音声圧縮符号化方式である。
  • その標準的なビットレートは 8 kビット/秒である。
  • したがって、a には「8」が入る。

高得点のポイント

  • CS-ACELPのビットレートが8 kビット/秒であるという知識を正確に解答できていること。
(2)配点 4点

模範解答

UDP

採点基準

正確性(内容)4点
  • 4点: 正確な字句を解答している。
  • 2点: 関連する字句を解答しているが、不正確である。
  • 0点: 誤っている、または無解答。

解説

  • 穴埋め b について。
  • 問題文中の〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕に「音声をIPパケット化してLAN上に流すと,イーサネットフレームヘッダのほかに,IP,b 及びRTPヘッダが付加される」と記載されている。
  • 音声をIPネットワーク上でリアルタイムに転送するためのプロトコルである RTP (Real-time Transport Protocol) は、トランスポート層において、TCPのような再送制御による遅延を避けるため、低遅延な UDP を使用する。
  • したがって、パケットのヘッダ構成は「イーサネットフレームヘッダ + IPヘッダ + UDPヘッダ + RTPヘッダ」となり、b には「UDP」が入る。

高得点のポイント

  • VoIPの音声パケットにおけるトランスポート層プロトコルとして、RTPとともにUDPが使用されることを正確に解答できていること。
(3)配点 4点

模範解答

廃棄

ドロップ

損失

採点基準

正確性(内容)4点
  • 4点: 「廃棄」「ドロップ」「損失」のいずれかを解答している。同義の「破棄」「パケットロス」も満点に含める。
  • 2点: 意味は通じるがネットワーク用語として不正確である。
  • 0点: 誤り、または無解答。

解説

  • 穴埋め c について。
  • 問題文中の〔電話サービスで発生した問題と対策〕に「大量の動画パケットがL3SW0に入力されたことによって,L3SW0で音声パケットの遅延又は c が発生したことが原因であると推定できた。」とある。
  • ネットワーク機器の処理能力やキュー(バッファ)の容量を超える大量のパケットが入力されると、パケットはキューに滞留して「遅延」が発生する。さらにキューからあふれたパケットは「廃棄(またはドロップ、損失)」される。
  • 音声パケットにおいてこれらが発生すると、通話が途切れるなどの品質低下を招く。
  • したがって、c には「廃棄」などが入る。

高得点のポイント

  • パケットの輻輳時に発生するネットワークの事象として、遅延と並んでパケットの「廃棄(又はドロップ、損失。公式解答ではいずれも正解)」が起こることを正確に解答できていること。
(4)配点 4点

模範解答

ToS

採点基準

正確性(内容)4点
  • 4点: 「ToS」と解答している。大文字小文字(TOS・tos)、正式名(Type of Service)、「ToSフィールド」「サービスタイプ」は満点。
  • 2点: 関連はするが別のフィールド(「DS」「優先度」など)。
  • 0点: それ以外。

解説

  • 穴埋め d について。
  • 問題文中の〔電話サービスで発生した問題と対策〕の(レイヤ3マーキングによる優先制御)において「IPヘッダの d フィールドをDSCPとして再定義した6ビットにマーキングする。」と記載されている。
  • IPv4ヘッダにおいて、パケットの優先度などを指定するために元々定義されていた8ビットのフィールドは ToS (Type of Service) フィールドである。
  • Diffservアーキテクチャでは、このToSフィールドを再定義し、上位6ビットを DSCP (Differentiated Services Code Point) として使用し優先制御を行う。
  • したがって、d には「ToS」が入る。

高得点のポイント

  • DSCP値が、IPヘッダの従来の「ToS」フィールドを再定義して使用されることを正確に解答できていること。

設問1は,(a)の正答率が低かった。CS-ACELPは,VoIPで広く利用されている音声符号化技術なので,よく理解してほしい。

設問2

〔現状の調査〕について,(1),(2)に答えよ。

(1)配点 4点

図1において,音声信号がIPパケット化される通話はどのような通話か。本文中の字句を用いて答えよ。

模範解答

拠点間の内線通話

採点基準

正確性(内容)4点
  • 4点: 本文から正確に字句を抜き出して解答している。
  • 2点: 本文の該当箇所から抜き出しているが、過不足がある。
  • 0点: 誤っている、または無解答。

解説

  • 【図1 Y社のネットワーク構成】において、PBXの下部に「IP-GW」が接続されている。
  • 問題文の〔現状の調査〕の注記2に「本社のPBXから本社のIP-GWには100回線が接続され、各営業所のPBXから当該営業所のIP-GWには、それぞれ20回線が接続され、拠点間の内線通話に使用されている」と記載されている。
  • さらに、ネットワークの使用方法として「拠点間の内線通話は,IP-GWを介して広域イーサ網経由で行っている」とある。
  • したがって、音声信号がIP-GWによってIPパケット化されて広域イーサ網へ送受信されるのは、「拠点間の内線通話」である。

高得点のポイント

  • 図1および本文の記述から、IP-GWを経由する通話が「拠点間の内線通話」であることを正確に抜き出せていること。
(2)配点 4点

図1中のIP-GWは,音声パケットのジッタを吸収するためのバッファをもっている。しかし,バッファを大きくし過ぎるとスムーズな会話ができなくなる。その理由を,パケットという字句を用いて,20字以内で述べよ。

模範解答

パケットの音声化遅延が大きくなるから

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: バッファが大きいと、パケットを受信してから音声に戻す(再生する)までの遅延が大きくなることを述べている。
  • 1点: バッファの役割について部分的に理解している。
  • 0点: 理解していない。
論理性(構造)2点
  • 2点: 「パケット」の語を用いて、遅延の増大を理由として簡潔に述べている。
  • 1点: 遅延に触れるが「パケット」の語がない、または何の遅延か不明確。
  • 0点: 遅延に触れていない。

解説

  • 音声パケットがネットワークを通過する際に生じる到着間隔のばらつき(ジッタ)を吸収するために、受信側のIP-GW等にはバッファ(ジッタバッファ)が設けられる。
  • バッファは、到着したパケットを一時的に蓄積し、一定のタイミングで音声として再生・出力する役割を持つ。
  • バッファを大きく設定すると、より大きなジッタを吸収できるようになる反面、パケットを受信してから音声化されるまでの待ち時間(遅延)が増大する。
  • 音声通話においてパケットの遅延が大きくなると、会話のテンポが悪くなり、スムーズな会話が困難になる。

高得点のポイント

  • バッファを大きくすることで、パケットの処理(音声化)に対する遅延が大きくなることが示されていること。
  • 指定された「パケット」という字句が使用されていること。
  • 制限字数(20字以内)を遵守していること。

設問3

〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕について,(1),(2)に答えよ。

(1)配点 4点

図1中に示した現在の回線数を維持する場合,図2中のL3SW0のポートaから出力される音声パケットの通信量の最大値を,kビット/秒で答えよ。

模範解答

4,472

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: 本文中の記述から、通信量の最大値を導出するために必要な全社の外線数130回線(本社80+営業所10×5)および1回線当たり 34.4 kビット/秒の帯域が必要となることを正しく把握できている。
  • 1点: 必要な情報の一部(本社の外線数のみなど)しか把握できておらず、前提条件に誤りがある。
  • 0点: 必要な情報を把握できていない。
論理性(構造)2点
  • 2点: 把握した回線数と帯域幅から正しい乗算を行い、正確な最大値を解答できている。4,472・4472のどちらでも満点。単位(kビット/秒)は付けても付けなくてもよい。
  • 1点: 計算過程の立式は論理的であるが、計算ミスなどにより最終的な数値が誤っている。
  • 0点: 論理的な計算が行われていない。

解説

  • 【図2 電話サービス導入後のネットワーク構成】において、本社のL3SW0のポートaは「IPsecルータ」に接続されており、その先はインターネット経由でZ社電話サービスのGW(公衆電話網との境界)に繋がっている。
  • つまり、ポートaを通過する音声パケットは、Y社と公衆電話網との間の外線通話のものである。
  • 外線の回線数について、〔現状の調査〕の図1の注記1に「本社のPBXには80回線の外線が収容され、各営業所のPBXには、それぞれ10回線の外線が収容されている」とある。営業所は5か所あるため、全社の外線数は 80+10×5=13080 + 10 \times 5 = 130 回線となる。
  • 〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕の本文に「1回線当たり 34.4 kビット/秒の帯域が必要となる」と記載されている。
  • 全社の全ての外線が同時に使用された場合が最大値となるため、通信量の最大値は 130×34.4=4472130 \times 34.4 = 4472(kビット/秒)となる。

高得点のポイント

  • 本文中の記述から、通信量の最大値を導出するために必要な全社の外線数130回線(本社80+営業所10×5)および「1回線当たり 34.4 kビット/秒の帯域が必要となる」ことを正しく把握できていること。
  • 把握した回線数と帯域幅から正しい乗算を行い、正確な最大値(4472)を解答できていること。
(2)配点 4点

本文中の下線①のL2SWに,PoE未対応の機器を誤って接続した場合の状態について,PoEの機能に着目し,20字以内で述べよ。

模範解答

L2SWからの給電は行われない。

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: PoE未対応の機器にはL2SWから給電されない(電力が供給されない)ことを述べている。
  • 1点: 給電に触れるが状態が不正確(「故障する」「通信できない」を主にする、など)。
  • 0点: それ以外。
論理性(構造)2点
  • 2点: 給電が行われないという状態を簡潔に述べている。
  • 1点: 結果の記述が不明確である。
  • 0点: 論理的な記述になっていない。

解説

  • 下線①「営業所のL2SW及び本社のL2SW01とL2SW02は,PoEの給電機能をもつ製品に交換する」について。
  • PoE (Power over Ethernet) を給電する側の機器(PSE)は、接続された機器(PD)に対して実際の給電を開始する前に、その機器がPoEによる受電に対応しているかどうかを検出する機能を持っている。
  • 機器接続時に微小な電圧を印加して抵抗値を測定し、PoE受電対応機器であることが確認できた場合にのみ、規定の電力を供給する仕組みとなっている。
  • したがって、PoE未対応の機器を誤って接続した場合は、受電対応機器として認識されないため、L2SWからの給電は行われず、通常のデータ通信のみが可能な状態となる。

高得点のポイント

  • PoE給電機器が受電側機器の対応可否を判別する機能を持ち、未対応機器には給電しない仕様を正確に理解していること。
  • PoEの給電機能の仕様に基づき、給電が行われないという結果を論理的かつ簡潔に記述できていること。
  • 制限字数(20字以内)を遵守していること。

設問3は,(2)の正答率が高かったが,(1)の正答率が低かった。図2中のL3SW0のaポートから出力されるのは外線通話パケットであることから,本文中に記述された情報を基に,全社の外線数が130回線,1回線当たりの必要帯域が34.4kビット/秒という通信量の最大値を導き出してほしい。

設問4

〔電話サービスで発生した問題と対策〕について,(1)〜(5)に答えよ。

(1)配点 3点

本文中の下線②について,レイヤ2のCoS値を基にした優先制御にはタグVLANが必要になる。その理由を,30字以内で述べよ。

模範解答

フレーム中のタグ情報内の優先ビットを使用するから

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: レイヤ2の優先制御に用いられるCoS値が、フレーム内のVLANタグ(TCIフィールド)に設定されることを正確に理解している。
  • 1点: 優先制御とVLANの関係について部分的に理解しているが、知識が不正確である。
  • 0点: 内容を理解していない。
論理性(構造)1点
  • 1点: CoS値をマーキングするためにはタグ情報(VLANタグ)が必須であるという論理関係を、文字数制限内で過不足なく記述できている。
  • 0点: 論理構成が不十分である。

解説

  • 下線②「ITELのアップリンクポートにタグVLANを設定する」について。
  • レイヤ2の優先制御で用いられる CoS (Class of Service) 値は、IEEE 802.1Qで規定されるVLANタグ(タグヘッダ)内の TCI (Tag Control Information) の上位3ビット(PCP: Priority Code Point)を使用して表現される。
  • 問題文の〔電話サービスで発生した問題と対策〕にも「ITELは,音声フレームとデータフレームに異なるCoS値を,フレーム内のTCI(Tag Control Information)の上位3ビットにマーキングして出力する」と明記されている。
  • VLANタグが付与されていない通常のイーサネットフレームには、このTCIフィールドが存在しない。そのため、フレームにCoS値をマーキングして優先度を伝達するためには、タグVLAN(IEEE 802.1Qフレーム)を使用することが必須となる。

高得点のポイント

  • レイヤ2の優先制御に用いられるCoS値が、フレーム内のVLANタグ(TCIフィールド)に設定されることを正確に理解していること。
  • CoS値をマーキングするためにはタグ情報(VLANタグ)が必須であるという論理関係を、文字数制限内で過不足なく記述できていること。
  • 制限字数(30字以内)を遵守していること。
(2)配点 3点

優先制御の設定後,L3SW0の内部のルータに新たに作成されるVLANインタフェースの数を答えよ。

模範解答

2

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: 物理ポートに設定されるVLANと、L3SW内部ルータのVLANインタフェースが論理的に接続される構成を理解し、新規追加されたVLAN数を正しく把握している。
  • 1点: VLANインタフェースの構成について部分的な理解に留まり、数を誤っている。
  • 0点: 内容を理解していない。
論理性(構造)1点
  • 1点: 追加されたVLAN(VLAN105, 155)に対して、それぞれ1つずつVLANインタフェースが作成されるという論理に基づき、正しい解答を導出できている。
  • 0点: 論理的な導出ができていない。

解説

  • 問題文〔電話サービス導入後のネットワーク構成〕において、本社のL3SW0のポートfには「VLAN100」、ポートgには「VLAN150」がそれぞれ設定されている。
  • 〔電話サービスで発生した問題と対策〕の優先制御の設定で、「L2SW01に接続するITELには,VLAN100とVLAN105を,L2SW02に接続するITELには,VLAN150とVLAN155を…設定する」とある。
  • この設定により、L3SW0のポートf(L2SW01側)には新たに「VLAN105」のトラフィックが、ポートg(L2SW02側)には新たに「VLAN155」のトラフィックが入力されるようになる(音声とデータを異なるVLANに分けるため)。
  • これらのVLAN間で相互に通信を行うためには、L3SW0の内部のルータ機能において、各VLANに対する論理的なインターフェース(VLANインタフェース)が必要となる。
  • 既存のVLAN100、VLAN150に加えて、新たにVLAN105とVLAN155が追加されたため、L3SW0の内部のルータに新たに作成されるVLANインタフェースの数は 2 つとなる。

高得点のポイント

  • ITELで音声とデータで異なるVLANが設定されたことにより、本社のL3SW0配下で新たに追加されたVLANの数(VLAN105, VLAN155)を正確に読み取れていること。
  • 物理ポートに設定されるVLANと、L3SW内部ルータのVLANインタフェースが論理的に接続される構成を理解し、追加されたVLANごとに1つずつVLANインタフェースが作成されるという論理に基づき、正しい解答を導出できていること。
(3)配点 3点

本文中の下線③の処理が行われたとき,キュー1に音声フレームが残っていなくても,キュー1に入った音声フレームの出力が待たされることがある。音声フレームの出力が待たされるのはどのような場合か。20字以内で答えよ。このとき,L2SWの内部処理時間は無視できるものとする。

模範解答

データフレームが出力中の場合

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: キュー2のデータフレームを(既に)出力・送信している最中である場合を答えている。
  • 1点: データフレームの出力に触れるが状況が不正確(「キュー2にフレームがある場合」など)。
  • 0点: それ以外。
論理性(構造)1点
  • 1点: 「データフレームの出力中」という場合を簡潔に述べている。
  • 0点: 論理的な記述になっていない。

解説

  • 下線③「音声フレームをキュー1,データフレームをキュー2に入れる」について。
  • L2SWにおけるPQ(Priority Queuing)の設定により、最優先のキュー1に音声フレームが存在する場合は、キュー2のデータフレームよりも優先して出力される。
  • しかし、ネットワーク機器の物理ポートからのフレーム送信処理は、一度開始されるとそのフレームの送信が完全に終了するまで途中で割り込むことはできない(プリエンプション不可)。
  • したがって、キュー1が空の状態でキュー2からデータフレームの出力が開始され、そのデータフレームが出力中(転送処理中)にキュー1へ音声フレームが到着した場合、音声フレームは現在のデータフレームの出力が完了するまで待たされることになる。

高得点のポイント

  • スイッチのポートからのフレーム送信処理が割り込み不可能であることを理解していること。
  • すでにキュー2のデータフレームが送信中である場合に、後から到着したキュー1の音声フレームに待ちが発生するという状況を論理的に記述できていること。
  • 制限字数(20字以内)を遵守していること。
(4)配点 3点

本文中の ア,イ に入れるポートを,図2中のa〜jの中から全て答えよ。(空欄アについて)

模範解答

f

g

j

採点基準

正確性(内容)3点
  • 3点: f、g、j の3つ全てを過不足なく答えている(順不同。大文字小文字は問わない)。
  • 1点: f・g・j のうち一部だけ、または余分なポートを含む。
  • 0点: それ以外。

解説

  • 穴埋め ア について。
  • 問題文に「ア から受信したフレームにはCoS値がマーキングされているので,CoS値に対応したDSCP値を…マーキングする」とある。
  • CoS値のマーキングを行うのは、ITELが接続された「L2SW01,L2SW02及びL2SW1」からL3SW(L3SW0またはL3SW1)への上り方向のトラフィックである。
  • 【図2 電話サービス導入後のネットワーク構成】を参照すると、本社のL2SW01はL3SW0のポートfに、L2SW02はL3SW0のポートgに接続されている。
  • また、営業所のL2SW1はL3SW1のポートjに接続されている。
  • これらのポート(f, g, j)から受信したフレームには、レイヤ2の優先制御によってTCIにCoS値が設定されているため、L3SWにおいてその値を参照し、レイヤ3のDSCP値にマッピング(再定義)する処理が必要となる。
  • したがって、ア には「f, g, j」が入る。(解答順不同)

高得点のポイント

  • 図2の構成および本文の記述から、レイヤ2でCoS値がマーキングされてL3SWに入力されるポートを適切にすべて抜き出せていること。
(5)配点 3点

本文中の ア,イ に入れるポートを,図2中のa〜jの中から全て答えよ。(空欄イについて)

模範解答

a

b

c

d

e

採点基準

正確性(内容)3点
  • 3点: a、b、c、d、e の5つ全てを過不足なく答えている(順不同)。
  • 1点: 一部だけ、または余分なポート(f・g・h・i・j)を含む。
  • 0点: それ以外。

解説

  • 穴埋め イ について。
  • 問題文に「イ から受信したパケットは,音声パケット,eLNサーバのパケット…,その他のデータパケット…の3種類に分類し,対応するDSCP値をマーキングする」とある。
  • 空欄アの対象となったポート(f, g, j)以外からL3SWに入力されるトラフィックは、CoS値がマーキングされていないため、L3SWにおいてパケットの種別(IPアドレス等)に基づいて分類し、直接DSCP値を付与する必要がある。
  • この分類・マーキングが必要となるのは、L3SW0において外部ネットワークやサーバ室からトラフィックを受信する入力ポートである。
  • 【図2 電話サービス導入後のネットワーク構成】において、L3SW0のポートのうち、fとg(L2SW接続)およびh(広域イーサ網接続)以外のポートを確認する。なお、hとiについては他拠点のL3SWが、ア(f・g・j)又はイ(a〜e)のポートで受信した時点で既にDSCP値をマーキングしているので、広域イーサ網側のh・iで再分類する必要がない。
  • 対象となるのは、L3SW0のポート a(IPsecルータ接続)、b(FW接続)、c, d, e(サーバ室接続。それぞれファイルサーバ、業務サーバ、eLNサーバ)である。
  • したがって、イ には「a, b, c, d, e」が入る。(解答順不同)

高得点のポイント

  • 図2の構成および本文の記述から、CoS値がマーキングされておらず、L3SWで直接IPアドレス等の条件に基づいて分類・マーキングを行うべきポートを適切にすべて抜き出せていること。
(6)配点 3点

本文中の下線④について,eLNパケットをDパケットと異なるキュー2に入れる目的を,35字以内で述べよ。

模範解答

DパケットによるeLNパケット転送への影響を少なくするため

採点基準

知識・理解度(内容)2点
  • 2点: eLNパケットとDパケットを別のキューに分けることで、Dパケット(その他のデータ)がeLNパケットの転送に与える影響を小さくする(eLNパケットの帯域75%を確保する)ことを目的として述べている。
  • 1点: キューを分ける・優先するとは言うが、何から何を守るのかが不明確。
  • 0点: 目的を逆に述べる(eLNの影響からDを守る、など)、または音声の保護だけを述べる。
論理性(構造)1点
  • 1点: Dパケットによる帯域圧迫からeLNパケットを保護するという目的を、論理的かつ簡潔に記述できている。
  • 0点: 論理的な記述になっていない。

解説

  • 下線④「eLNパケットをキュー2,Dパケットをキュー3に入れる」について。
  • 問題文〔電話サービスで発生した問題と対策〕において、音声パケットの遅延や廃棄を引き起こした根本原因は「eLNサーバからS基礎コースの動画パケットが大量に送信されたこと」であった。
  • L3SWでのレイヤ3優先制御において、最優先のキュー1には音声パケットが割り当てられる。残りのトラフィックについて、キュー2には「重み比率75%」、キュー3には「重み比率25%」のWRR(Weighted Round Robin)が設定されている。
  • 大量の通信帯域を必要とするeLNパケット(動画パケット)をキュー2に、その他のDパケットをキュー3に分離することで、Dパケットの通信量が増大した場合でも、動画配信に必要な帯域(75%)を確保し、互いの転送への悪影響を軽減することができる。
  • したがって、「DパケットによるeLNパケット転送への影響を少なくするため」などが目的となる。

高得点のポイント

  • WRRによる重み付け設定の意図と、帯域保証の仕組みを正確に理解していること。
  • その他のデータパケット(Dパケット)が、大容量を占めるeLNパケットの転送(動画再生など)に悪影響を及ぼさないように分離して帯域を確保する目的であることが示されていること。
  • 制限字数(35字以内)を遵守していること。

設問4(1)の正答率は,平均的であった。レイヤ2の優先制御に利用されるCoS値がフレーム中のVLANタグ内のTCIに設定されることから,タグVLANが必須になることを,よく理解してほしい。(2)は,正答率が低かった。L3SW0の内部ルータに生成されるVLANインタフェースは,L3SW0の物理ポートに設定されるVLANと論理的に接続される構成になることをよく理解してほしい。

Spineチーム