令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅱ 問2 進捗の差異による遅延の把握と対応策・ばん回策の立案(論述)
マネジメント進捗管理
学習ガイド
プロジェクトを所定の期日に完了させるための、スケジュールの管理を論じる午後II問題です。設問アでプロジェクトの特徴と目標、スケジュールの管理の仕組みを示します。設問イでは、その仕組みで把握した進捗の差異と、完了期日に遅延が生じると判断した根拠を書き、差異の発生原因に対する対応策と、遅れを取り戻すばん回策を分けて述べます。設問ウでは両策の実施状況と評価、今後の改善点をまとめます。
この記事で押さえる論点
- 評価指標に基づき、進捗の差異からプロジェクト完了期日への遅延リスクを判断する根拠を説明できる
- 進捗差異の発生原因を特定し、それを根本から取り除く対応策を述べられる
- ステークホルダの承認を得ることを視野に入れた、現実的で具体的な遅延のばん回策を説明できる
- 対応策とばん回策の実施結果を定量・定性の両面から評価し、今後の課題を述べられる
出題情報
- 出題
- 2021(R3)秋 プロジェクトマネージャ 午後II 問2
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
プロジェクトマネージャ(PM)には,プロジェクトの計画時にプロジェクト全体のスケジュールを作成し,プロジェクトの実行中はプロジェクトが所定の期日に完了するようにスケジュールの管理を適切に実施することが求められる。
本問は,プロジェクトの実行中,スケジュールの管理の仕組みを通じて把握した,プロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせると判断した進捗の差異の状況,判断した根拠,差異の発生原因に対する対応策,遅延に対するばん回策について具体的に論述することを求めている。論述を通じて,PMとして有すべきスケジュールの管理に関する知識,経験,実践能力などを評価する。
全問に共通して,自らの経験に基づいて具体的に論述できているものが多かった。一方で,各設問には論述を求める項目が複数あるが,対応していない項目のある論述,どの項目に対する解答なのか判然としない論述が見受けられた。また,論述の主題がプロジェクトチームのマネジメントやスケジュールの管理であるにもかかわらず,内容が主題から外れて他のマネジメントプロセスに偏った論述となったり,システムの開発状況やプロジェクトの作業状況の説明に終始したりしている論述も見受けられた。プロジェクトマネージャとしての役割や立場を意識した論述を心掛けてほしい。
問2では,スケジュールの管理の仕組みを通じて把握した,プロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせると判断した進捗の差異の状況,判断した根拠,差異の発生原因に対する対応策,遅延に対するばん回策について,具体的な論述を期待した。経験に基づき具体的に論述できているものが多かった。一方で,スケジュールの管理の仕組みを通じて把握したものではない遅延やプロジェクトの完了期日に対してではない遅延についての論述や,EVM(Earned Value Management)の理解不足に基づく論述も見受けられた。プロジェクトマネージャにとって,スケジュールの管理は正しく身に付けなければならない重要な知識・スキルの一つであるので,理解を深めてほしい。
問題本文
システム開発プロジェクトにおけるスケジュールの管理について
プロジェクトマネージャ(PM)には,プロジェクトの計画時にシステム開発プロジェクト全体のスケジュールを作成した上で,プロジェクトが所定の期日に完了するように,スケジュールの管理を適切に実施することが求められる。
PMは,スケジュールの管理において一定期間内に投入したコストや資源,成果物の出来高と品質などを評価し,承認済みのスケジュールベースラインに対する現在の進捗の実績を確認する。そして,進捗の差異を監視し,差異の状況に応じて適切な処置をとる。
PMは,このようなスケジュールの管理の仕組みで把握した進捗の差異がプロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせると判断した場合,差異の発生原因を明確にし,発生原因に対する対応策,続いて,遅延に対するばん回策を立案し,それぞれ実施する。
なお,これらを立案する場合にプロジェクト計画の変更が必要となるとき,変更についてステークホルダの承認を得ることが必要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。
設問と解答・解説
設問ア
あなたが携わったシステム開発プロジェクトにおけるプロジェクトの特徴と目標,スケジュールの管理の概要について,800字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: プロジェクトの特徴と目標、スケジュールの管理の概要が、自身の経験に基づいて極めて具体的に記述されており、全体的なスケジュール管理の意図や客観的な仕組みが明確に伝わる。
- 9点: プロジェクトの特徴と目標、スケジュールの管理の概要が記述されているが、やや抽象的、または一つの要素が欠けている。
- 0点: 白紙、題意外(スケジュールの管理を題材としていない)、または要素の大半が欠けている。
- 17点: 各テーマが論理的に整理されており、プロジェクトの背景からスケジュール管理の手法へとスムーズに繋がっている。
- 9点: 記述の順序や構成にやや飛躍や重複があるが、全体の文意は理解できる。
- 0点: 論理構成が破綻しており、各テーマのつながりが不明確である。
解説
この設問は、自身が経験したシステム開発プロジェクトを題材に、論述の前提となるプロジェクトの概要を説明するものです。プロジェクトマネージャ(PM)の視点から、どのようなプロジェクトであったか、そしてどのようなスケジュール管理を実施したかを明確に示す必要があります。
求められる論述内容
- プロジェクトの特徴と目標: 開発するシステムの規模、対象業務、ステークホルダの状況など、スケジュール遅延のリスクに関連するプロジェクト固有の特徴と、達成すべき目標を具体的に記述します。
- スケジュールの管理の概要: 計画時に策定したスケジュールベースラインに対し、プロジェクト実行中にどのように進捗を測定し、管理したか(例:EVMを用いたコスト・資源・成果物の出来高の定期的な評価)を記述します。
高得点のポイント
- プロジェクトの目標や特徴が、後続の設問(遅延の発生やばん回策)の伏線として論理的に機能していること。
- スケジュールの管理について、単なる進捗のヒアリングだけでなく、一定期間内に投入したコストや資源、成果物の出来高と品質などを客観的に評価する具体的な「仕組み」を構築・運用していたことが示されていること。
- 文字数制限(800字以内)を遵守し、簡潔かつ過不足なくまとめられていること。
設問イ
設問アで述べたスケジュールの管理の仕組みで把握した,プロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせると判断した進捗の差異の状況,及び判断した根拠は何か。また,差異の発生原因に対する対応策と遅延に対するばん回策はどのようなものか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 差異の状況、判断根拠、対応策、ばん回策の全てが、事前のスケジュール管理の仕組み(EVM等)に基づくものとして具体的に記述されており、プロジェクトの完了期日に対する遅延であることが明確である。
- 9点: 要求された項目について記述されているが、一部がスケジュールの管理の仕組みから外れている、あるいはプロジェクト完了期日に対する遅延であることの明確さに欠ける。
- 0点: スケジュール管理(EVM等)の理解不足が見られる、または仕組みを通じて把握したものではない遅延について論述されている。
- 16点: 差異の根拠と発生原因が論理的に結びついており、立案された対応策・ばん回策が現実的で遅延を確実に解消できる十分な説得力を持っている。
- 8点: 原因分析や対応策・ばん回策の展開にやや飛躍が見られるが、一定の説得力は保たれている。
- 0点: 根拠と原因、対応策の間に論理的なつながりがなく、ばん回策としての実効性に乏しい。
解説
この設問は、論文の中核となる部分であり、設問アで提示したスケジュール管理の仕組みによって発見された遅延の兆候と、それに対するPMとしての具体的なアクションを問うものです。
求められる論述内容
- 進捗の差異の状況と判断した根拠: 単なる遅延ではなく、「設問アで述べたスケジュールの管理の仕組みで把握した」状況であることが必須です。成果物の出来高や投入コストの差異などから、「プロジェクトの完了期日に対して遅延を生じさせる」と判断した客観的な根拠を明確にします。
- 発生原因に対する対応策: なぜその差異が生じたのか(例:要員のスキル不足、要件変更の頻発など)原因を特定し、それを根本から解決する対応策を記述します。
- 遅延に対するばん回策: 既に出遅れてしまったスケジュールを取り戻すため、プロジェクト計画の変更やステークホルダの承認も視野に入れた、具体的なリカバリプラン(クリティカルパス上の作業の短縮など)を記述します。
高得点のポイント
- スケジュールの管理の仕組みの活用: 日常の偶発的なトラブルではなく、構築した管理プロセス(EVMなどの定量的な評価指標)を通じて遅延を検知していることが論理的に説明されていること。
- 遅延対象の明確化: 単なる中間マイルストーンの遅延ではなく、「プロジェクトの完了期日に対して」遅延を生じさせるという致命的な影響度を持つ差異であることが示されていること。
- 対応策とばん回策の分離と妥当性: 原因を取り除く「対応策」と、遅れたスケジュールを取り戻す「ばん回策」が明確に区別されており、かつPMの権限において現実的で実行可能な計画として立案されていること。
- 文字数制限(800字以上1,600字以内)を満たし、具体例を交えて説得力を持たせていること。
設問ウ
設問イで述べた対応策とばん回策の実施状況及び評価と,今後の改善点について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 施策の実施状況が具体的に記述され、客観的な評価に基づいた本質的な今後の改善点が導き出されており、極めて説得力がある。
- 9点: 実施状況と評価、改善点が記述されているが、評価が主観的であったり、改善点がやや一般論にとどまっている。
- 0点: 実施状況や評価が抽象的で不十分であり、今後の改善点との関連性が薄い。
- 16点: 設問イで記述した施策の内容を正確に踏まえ、実施状況から評価、改善点に至るプロセスが矛盾なく論理的に構成されている。
- 8点: 前問との繋がりは概ね保たれているが、論理の展開にやや飛躍や説明不足の箇所がある。
- 0点: 設問イの記述内容と矛盾しているか、論理のつながりが破綻している。
解説
この設問では、立案した対応策・ばん回策を実行した結果とその振り返りを通じて、PMとしての評価・改善能力を問います。
求められる論述内容
- 実施状況及び評価: 設問イで立案した対応策とばん回策を実際にどのように実行し、ステークホルダとの調整をどう行ったかを記述します。さらに、その結果としてスケジュール遅延が計画通りに解消できたのか、立案した施策は適切であったかを客観的に評価します。
- 今後の改善点: プロジェクトの完了、あるいは今回の一連の対応を踏まえ、スケジュール管理の仕組み自体やPMとしての立ち回りについて、将来のプロジェクトに活かすべき改善点を考察します。
高得点のポイント
- 設問イで述べた施策と一貫性のある実施状況が記述されており、ステークホルダの承認などのプロセスも適切に踏まれていること。
- 評価が単なる「うまくいった」という主観的な感想ではなく、定量的な指標や事実に基づいた客観的なものになっていること。
- 今後の改善点が一般論に終始せず、今回の事象から得られた教訓として、実践的かつ具体的な知見へと昇華されていること。
- 文字数制限(600字以上1,200字以内)を満たしていること。