平成15年度 宅地建物取引主任者資格試験 問5

Aは, B所有の建物に抵当権を設定し, その旨の登記をした。Bは, その抵当権設定登記後に, この建物をCに賃貸した。Cは, この契約時に, 賃料の6カ月分相当額の300万円の敷金を預託した。この場合, 民法の規定及び判例によれば, 次の記述のうち正しいものはどれか。

解答・解説

正解: 4. Aが物上代位権を行使して, BのCに対する賃料債権を差し押さえた後, 賃貸借契約が終了し建物を明け渡した場合, Aは, 当該賃料債権について敷金が充当される限度において物上代位権を行使することはできない。

本問は、抵当権に基づく物上代位権(民法304条、372条)の行使に関する判例知識を問う問題です。

正解の根拠

選択肢4が正しい記述です。
判例(最判平14.3.28)によれば、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえた後であっても、賃貸借契約が終了し目的物が明け渡されたときは、未払賃料債権は敷金の充当によりその限度で当然に消滅します。したがって、抵当権者は敷金が充当される限度において物上代位権を行使することはできません。

各選択肢の解説

  • 1. 誤り
    判例(最判平10.1.30)によれば、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら当該債権を差し押さえることによって、物上代位権を行使することができます。したがって、「差し押さえることはできない」とする本記述は誤りです。

  • 2. 誤り
    判例(最判平10.3.26)によれば、抵当権者は、一般債権者による差押え命令が第三債務者(賃借人)に送達された後であっても、第三債務者が弁済する前であれば、自ら賃料債権を差し押さえて物上代位権を行使することができます。したがって、「差し押さえることはできない」とする本記述は誤りです。

  • 3. 誤り
    判例(最判平13.3.13)によれば、賃借人が抵当権設定登記より前に賃貸人に対して取得していた債権(自働債権)を有している場合、相殺の期待が抵当権の効力に優先して保護されます。したがって、抵当権者が物上代位による差押えをした後であっても、賃借人はその自働債権と賃料債権とを相殺することができます。したがって、「相殺することはできない」とする本記述は誤りです。

  • 4. 正しい
    上記「正解の根拠」で述べたとおり、明渡しにより未払賃料は敷金の充当により当然に消滅するため、その限度で物上代位権の行使はできなくなります。

Spineチーム