令和2年度 宅地建物取引士資格試験 問6

権利関係意思表示・錯誤

この問題は2020(R2)10月に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・表組みの調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。

解答・解説を読む

正解: 選択肢3

正解の根拠

本問は、改正民法における 錯誤による意思表示の取消し(民法第95条) に関する問題です。
正解は 3 です。

意思表示は、以下の錯誤に基づくもので、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして 重要なものであるとき は、原則として取り消すことができます。

  1. 表示の錯誤(意思表示に対応する意思を欠く錯誤)
  2. 動機の錯誤(表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤)

ただし、動機の錯誤の場合は、その事情が法律行為の基礎とされていることが 表示されていたとき に限り、取り消すことができます。
また、表意者に 重大な過失 があった場合は原則として取り消すことができませんが、例外として以下のいずれかに該当する場合は取り消しが可能です。

  • 相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき(相手方の悪意・重過失
  • 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき(共通錯誤

選択肢3では、「贋作であるので」という形で動機が 表示 されており、かつ、相手方Bも同様に贋作だと思い込んでいた(共通錯誤)ため、仮に表意者Aに過失があったとしても、Aは錯誤による取消しを主張することができます。

各選択肢の解説

  • 1. 誤り
    Aは「100万円で売却するつもり」で「10万円で売却する」と言っており、表示の錯誤 に該当します。しかし、Aには 重大な過失 があり、相手方Bは「過失なく」信じている(善意無過失)ため、例外事由には当たらず、Aは錯誤による取消しをすることができません。

  • 2. 誤り
    Aは壺の真の価値について勘違いをしており、動機の錯誤 に該当します。しかし、Aは「手元にお金がないので」と言っただけで、価値に対する錯誤(10万円程度だと思い込んだこと)は法律行為の基礎として相手方に 表示されていません。したがって、錯誤による取消しをすることはできません。

  • 3. 正しい
    Aは絵画を贋作だと思い込んでおり(動機の錯誤)、Bに対し「贋作であるので」とその事情を 表示 しています。さらに、Bも同様に贋作だと思い込んでおり、共通錯誤(相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合)が成立しています。共通錯誤の場合は取り消しが認められるため、Aは錯誤による取消しをすることができます。

  • 4. 誤り
    Aの計算間違いにより表示を誤ったケースであり、Aには 重大な過失 があります。相手方BはAの錯誤について「過失なく知らなかった」ため、例外事由である「相手方の悪意・重過失」や「共通錯誤」に該当しません。したがって、Aは錯誤による取消しをすることができません。