令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午後II 問1 新技術導入に向けた概念実証(PoC)の実施と適用判断(論述)
学習ガイド
未経験の新技術を実際の業務に適用する前に、概念実証(PoC)で実現可能性や効果を見極める実践を論じる問題です。新技術の適用目的とPoCでの検証仮説、具体的な検証方法と工夫、そして結果に基づく業務適用の判断理由を問われます。設問アで対象業務と技術適用の目的を整理し、設問イでは検証仮説とそれを確かめるための検証手法や工夫を記述します。設問ウでは得られた結果をもとに、効果とリスクの両面から導入の可否を判断した根拠を論理的に組み立てます。
この記事で押さえる論点
- 新技術を導入する業務の課題と、PoCで検証すべき仮説の立て方を説明できる
- 仮説を正確に検証するためのPoCシステムの構築と、精度を高める検証の工夫を述べられる
- PoCで得られた検証結果と、そこから業務への適用可否を効果やリスクから総合的に判断した理由を説明できる
出題情報
- 出題
- 2022(R4)春 システムアーキテクト 午後II 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
IoT,ビッグデータやAIなどに代表される新技術が次々に登場しており,業務の効率化や品質向上を目的として,今まで使用したことがない技術を適用することが多くなっている。その際,その新技術を業務に適用する前に概念実証(PoC)を実施し,実現可能性や効果などを確認することが重要となる。システムアーキテクトは,仮説を立て,その仮説を検証するための情報システムを構築し,この情報システムを用いた仮説の検証方法を立案し,検証を行う。本問は,新技術を業務に適用するに当たり,PoCを実施し,その結果から業務への適用可否を判断することについて具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な,業務と情報システムを見直す能力及び経験を評価する。
問1では,多くの論述で,検証の方法,工夫した内容について具体的に論述しており,実際に検証に携わった経験がうかがえた。一方で,仮説やPoCの内容を明確に述べていない論述も見受けられた。また,PoCの結果そのものの評価はおおむね論述できていたが,業務への適用可否の判断理由が曖昧な論述が散見された。システムアーキテクトは,情報システムに新技術を適用する際の仮説を明確に設定し,その仮説の検証方法を立案して検証作業を行い,業務への適用可否を判断することが求められる。設定した仮説を検証するための検証方法を事前に確立した上で検証作業を行い,適切に業務への適用可否を判断できるよう心掛けてほしい。
問題本文
概念実証(PoC)を活用した情報システム開発について
近年,IoT,ビッグデータ,AIなどに代表される新技術が登場しており,業務の効率化や品質向上を目的として,今まで使用したことがない技術を適用することが多くなっている。その際,その新技術を業務に適用する前に概念実証(PoC)を実施し,実現可能性や効果などを確認することが重要となる。システムアーキテクトは,仮説を立て,その仮説を検証するための情報システムを構築し,この情報システムを用いた仮説の検証方法を立案し,検証を行う。
例えば,製造業の製品外観検査業務で,外観検査員と同等の精度の検査を AIによって実現できるという仮説を立てた場合,実際に検査工程で用いる検査画像データ収集システムの画像データを利用して,次のような作業を行い効果を検証する。
- 傷や付着物などの外観上の欠陥が存在する画像データと欠陥が存在しない画像データを収集し,外観検査員が行った合否判定結果を付与し,AIに学習させる。
- 製品の外観検査を AIに実施させ,外観検査員の検査結果と照合して,AIの検査精度を測定する。
- AIが判定を誤ったデータに関して再度 AIに学習させ,検査精度を高めていく。
このとき,高い精度で判断できる経験豊富な外観検査員を参加させる,画像データの撮影条件を変更する,などの工夫をする。
検証結果を踏まえて,その技術の業務への適用可否を,効果やリスクなどから総合的に判断する。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。
設問と解答・解説
設問ア
あなたが PoCを実施した情報システム開発において,どのような業務に,どのような目的で,どのような技術を適用しようとしたか。業務の概要,情報システムの概要とともに,800字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 17点: 業務の概要、目的、適用しようとした新技術、情報システムの概要のすべてが過不足なく具体的に記載されている。
- 13点: 概ね記載されているが、一部の項目に関する記述の具体性にやや欠ける。
- 8点: 記載はあるものの、業務や適用技術の概要が不明確で不十分である。
- 4点: 記述が著しく不足しているか、要求された項目の一部しか記載されていない。
- 0点: 記述がないか、設問の要求と無関係である。
- 17点: 業務課題と目的、適用技術の関係が論理的に一貫して説明されており、情報の構造が整理されている。
- 13点: おおむね論理的であるが、一部の文脈や関係性の説明がやや不明瞭である。
- 8点: 論理構成にやや無理があり、文脈の繋がりに乏しい箇所がある。
- 4点: 論理構成に大きな破綻が見られ、全体的な意味が読み取りづらい。
- 0点: 論理性が全くなく、文章として成立していない。
解説
本設問は、IoTやAIといった新技術を業務に適用するにあたり、対象となる業務と目的、適用する技術の概要について具体的に論述するものです。
高得点のポイント
- 業務と情報システムの概要: 現状の業務がどのようなもので、どのような課題を抱えているかを明確に記述していること。
- 目的と技術の適合性: 課題解決の目的に対して、選定した新技術(IoT、ビッグデータ、AIなど)がなぜ有効であるかが論理的に説明されていること。
- 全体として、システムアーキテクトの視点から、新技術の適用によって得られる効果を視野に入れたシステム像が描けていること。
設問イ
設問アで述べた情報システム開発で,どのような PoCを実施したか。設定した仮説,検証方法及び工夫とともに,800字以上 1,600字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 16点: 実施したPoCの内容、設定した仮説、検証方法、工夫のすべてが過不足なく具体的に記述されている。
- 12点: ほとんど記述されているが、一部の項目(例えば工夫の内容など)がやや抽象的である。
- 8点: 記述はあるが、仮説やPoCの内容が全体的に不明確である。
- 4点: 主要な要求項目が欠落しており、具体性に欠ける。
- 0点: 記述がないか、設問の要求と無関係である。
- 17点: 仮説を検証するための手法や工夫が実経験に基づいており、非常に説得力のある論述となっている。
- 13点: おおむね説得力があるが、一部の工夫や検証方法の妥当性について論拠がやや弱い。
- 8点: 仮説と検証方法の対応付けが弱く、説得力に欠ける。
- 4点: 検証のためのアプローチが不適切であり、説得力が著しく乏しい。
- 0点: 考察が全く見られないか、論旨が破綻している。
解説
本設問は、設問アで提示した情報システム開発において実施した概念実証(PoC)の具体的な内容(仮説、検証方法、工夫)を論述するものです。
高得点のポイント
- 仮説の明確化: 新技術を適用することで「どのような効果が得られるか」「どこまでの精度が出せるか」といった具体的な仮説が設定されていること。
- 検証方法の具体性: 仮説を検証するために構築した情報システムやデータの収集方法、検証手順が具体的に示されていること。
- 工夫点: 「高い精度で判断できる熟練者を参加させる」「環境条件を調整する」など、自身の経験に基づいた独自の視点や工夫が具体的に論じられていること。
設問ウ
設問イで述べた PoCからどのような検証結果を得たか。その結果から,業務への適用可否をどのように判断したか。判断した理由とともに,600字以上 1,200字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準
- 16点: PoCから得た検証結果、適用可否の判断、その理由が過不足なく具体的に記述されている。
- 12点: 概ね記述されているが、検証結果または判断の理由に関する詳細度がやや足りない。
- 8点: 記述はあるものの、結果または適用可否の判断理由が曖昧である。
- 4点: 検証結果や判断の記述が大きく不足している。
- 0点: 記述がないか、設問の要求を満たしていない。
- 17点: 検証結果と適用可否の判断理由が論理的に密接に結びついており、効果やリスク等を含め総合的・妥当な判断ができている。
- 13点: 概ね妥当であるが、効果とリスクの総合的な視点での理由付けがやや弱い。
- 8点: 検証結果と判断の結びつきが不自然、または判断理由に説得力が欠ける。
- 4点: 判断理由が単なる感想に留まっており、考察の深さが著しく不足している。
- 0点: 妥当な判断・理由付けが全くなされていない。
解説
本設問は、実施したPoCの結果と、それに基づいた業務への適用可否の総合的な判断について論述するものです。
高得点のポイント
- 検証結果の提示: PoCによって得られた結果が、客観的かつ具体的に示されていること。
- 適用可否の判断: 単なる成功・失敗ではなく、検証結果に基づく業務への適用可否の結論が明確に下されていること。
- 判断理由の妥当性: 効果やリスク(コスト、運用負荷、精度の限界など)の観点から総合的に評価できており、判断の理由が論理的に結びついて説得力を持って記述されていること。