平成28年度 管理業務主任者試験 問2
マンションの管理組合A(以下、本問において「A」という。)の管理者B(以下、本問において「B」という。)が、その職務に関し、C会社(以下、本問において「C」という。)との間で取引行為(以下、本問において「本件取引行為」という。)をする場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
解答・解説
正解: 2. 第三者DがBに詐欺を行い、これによりBが本件取引行為に係る意思表示をした場合、Cがその事実を知っていたときに限り、Aはその意思表示を取り消すことができる。
正解は 2 です。
マンションの管理者は、管理組合(区分所有者全員)の代理人としての地位を有し、その職務に関する取引行為には民法の代理に関する規定が適用されます(建物の区分所有等に関する法律第26条第2項)。なお、本問は民法改正(2020年4月施行)前の規定に基づいています。
代理人であるBが第三者Dから詐欺を受けて意思表示をした場合、その意思表示の瑕疵の有無は代理人Bを基準に判断されます(民法第101条第1項)。そして、第三者による詐欺の場合、相手方Cがその事実を知っていたとき(悪意のとき)に限り、本人である管理組合Aはその意思表示を取り消すことができます(改正前民法第96条第2項)。したがって、選択肢2が正しい記述です。
各選択肢の解説
- 1:誤り
意思表示の要素に錯誤があった場合、出題当時の民法第95条の規定により、その意思表示は「取り消すことができる」のではなく「無効」となります(表意者に重大な過失があったときは、表意者は自らその無効を主張することができません)。代理人がした意思表示に錯誤があったかどうかは、代理人Bについて判断します(民法第101条第1項)。 - 2:正しい
上記の通り、代理人Bが第三者Dから詐欺を受けた場合、相手方Cがその事実を知っていたときに限り、本人Aはその意思表示を取り消すことができます。 - 3:誤り
代理権の消滅事由として規定されているのは、代理人の「死亡」「破産手続開始の決定」「後見開始の審判」です(民法第111条第1項第2号)。補助開始の審判(および保佐開始の審判)を受けても代理権は消滅しないため、Bがした本件取引行為は有効に効力を生じます。 - 4:誤り
Bが管理者を解任された場合、Bの代理権は消滅しますが、代理権消滅後にした行為であっても、相手方Cがその解任の事実を知らず(善意)、かつ知らなかったことにつき過失がなかった(無過失)ときは、代理権消滅後の表見代理(民法第112条)が成立し、本人Aに対して本件取引行為の効力が生じます。
現行法での扱い(2026年4月1日時点)
2020年4月施行の民法改正で、錯誤による意思表示は「無効」から「取り消すことができる」ものに改められました。錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであることが必要で、錯誤が表意者の重大な過失によるときは、相手方が錯誤を知っていた場合などを除いて取り消すことができません(民法第95条第1項・第3項)。また、第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消すことができるとされました(民法第96条第2項)。このため現行法では、選択肢1は要件を満たせば正しい記述となり、相手方が知っていたときに「限り」とする選択肢2は誤りとなるので、出題当時の正解をそのまま当てはめることはできません。