平成28年度 管理業務主任者試験 問3
民法・その他の法令時効
消滅時効及び除斥期間に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
解答・解説
正解: 3. 管理組合から請け負った工事に関する施工業者の報酬請求権は、工事に着手した時から3年間行使しないときは消滅する。
正解は 3 です。工事の施工を業とする者の工事に関する債権の短期消滅時効(3年)は、出題当時の民法第170条により「工事が終了した時」から起算するため、「工事に着手した時から3年間」とする選択肢3の記述が誤りです。
本問は2020年4月施行の民法改正前の規定(出題当時の民法)で解説します。現行法での扱いは末尾にまとめます。
各選択肢の解説
- 選択肢1(正しい):詐欺による意思表示の取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様です(民法第126条)。
- 選択肢2(正しい):管理組合の組合員に対する管理費等の支払請求権は、年又はこれより短い時期によって定めた金銭の給付を目的とする定期給付債権にあたり(最判平成16年4月23日)、5年間行使しないときは消滅します(民法第169条)。消滅時効は、各期の支払期限(権利を行使することができる時)から進行します(民法第166条第1項)。
- 選択肢3(誤り):工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権は3年間行使しないときは消滅しますが、その時効は工事が終了した時から起算します(民法第170条第2号・同条ただし書)。「工事に着手した時から」とする点が誤りです。
- 選択肢4(正しい):不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅し、不法行為の時から20年を経過したときも同様です(民法第724条)。判例は、後段の20年を除斥期間と解しています(最判平成元年12月21日)。
現行法での扱い(2026年4月1日時点)
2020年4月施行の民法改正で、職業別の短期消滅時効(旧第170条など)と定期給付債権の短期消滅時効(旧第169条)は廃止され、債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効によって消滅することになりました(民法第166条第1項)。不法行為による損害賠償請求権の20年も消滅時効の期間として定められ(民法第724条第2号)、人の生命又は身体を害する不法行為では「知った時から」の期間が5年間に延びています(民法第724条の2)。取消権の期間(民法第126条)は変わっていません。現行法でも「工事に着手した時から3年間」で消滅するとはいえないため、選択肢3が誤りであることに変わりはありません。