令和7年度 管理業務主任者試験 問1
次の事例のうち、民法の規定によれば、善良な管理者としての注意義務まで求められないものはどれか。
解答・解説
正解: 4. Aが、同居していたAの父Bが生前所有していた家屋甲にBの死亡後も継続居住しているが相続は放棄している。この場合における、相続人又は相続財産の清算人に引き渡すまでのAの甲についての注意義務。
正解は 4 です。
民法上の注意義務には、取引上一般的に要求される注意義務である善良な管理者の注意義務(善管注意義務)と、それよりも軽減された注意義務である自己の財産におけるのと同一の注意(民法940条1項)などがあります。
選択肢4の事例は相続の放棄をした者による相続財産の保存義務に関するものであり、民法940条1項により、相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならないと定められています。したがって、善管注意義務までは求められません。
各選択肢の解説
1:善管注意義務が求められる
義務なく他人のために事務の管理を始めた場合(事務管理)にあたります。管理者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって事務管理をしなければならず(民法697条1項)、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたとき(緊急事務管理)に限って、悪意又は重大な過失があるのでなければ損害賠償の責任を負わないとされています(民法698条)。このため、緊急事務管理に当たらない事務管理では、管理者は善良な管理者の注意をもって管理する義務を負うと解されています。留守宅に届いた宅配品を預かる行為は急迫の危害を免れさせるためのものではないため、善管注意義務が求められます。2:善管注意義務が求められる
他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置する場合(留置権の行使)にあたります。留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければなりません(民法298条1項)。3:善管注意義務が求められる
法律行為(移転登録手続)を委託する委任契約(民法643条)および、それに付随して特定物の引渡しを受け保管する関係にあたります。受任者は、有償・無償を問わず、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。また、特定物の引渡しを目的とする債務を負う者も、引渡しまで善管注意義務を負います(民法400条)。4:善管注意義務まで求められない(正解)
相続の放棄をした者が現に占有している相続財産については、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存すれば足ります(民法940条1項)。