平成28年度 管理業務主任者試験 問10
管理委託契約・管理実務滞納管理費の回収
マンションの管理費の滞納に関する次の記述のうち、民法、民事訴訟法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。
解答・解説
正解: 2. 滞納者に対して、普通郵便による督促をした場合、その後6箇月以内に裁判上の請求をすれば、普通郵便が滞納者に到達した時に、管理費債権の消滅時効が中断したこととなる。
正解は 2 です。
民法上の催告(裁判外の請求)には方式の制限がなく、実務上は証拠を残すために内容証明郵便を用いるのが一般的ですが、普通郵便や口頭による督促であっても法的な効力は生じます。催告をした後、6箇月以内に裁判上の請求(訴訟の提起や支払督促の申立てなど)をすれば、催告(普通郵便)が滞納者に到達した時に時効中断の効力が生じます(出題当時の民法第153条)。
各選択肢の解説
- 1:誤り
民事訴訟法上の少額訴訟制度を利用できるのは、訴訟の目的の価額(訴額)が60万円以下の金銭の支払いを求める訴えに限られます(民事訴訟法第368条第1項)。140万円は簡易裁判所の事物管轄の上限額であり、少額訴訟制度の上限額ではありません。 - 2:正しい
民法第153条(改正前民法)の規定により、催告は6箇月以内に裁判上の請求等をすることで時効中断の効力を生じます。催告の方法に制限はないため、普通郵便が到達した時点で効力が発生します。 - 3:誤り
管理費等を負担するのは区分所有者(貸主)です(区分所有法第19条)。占有者(賃借人)は、建物等の使用方法について区分所有者が規約・集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負うにとどまり(同法第46条第2項)、管理費の支払義務を負いません。したがって、管理組合は賃借人に対して滞納管理費の支払いを求める訴えを提起することはできません。 - 4:誤り
訴えの取下げがなされると、訴訟は初めから係属していなかったものとみなされますが、本案について終局判決があった後に取り下げた場合でなければ、同一の訴えを再び提起することができます(民事訴訟法第262条)。本肢では終局判決の前に訴えを取り下げているため、再訴が禁止されることはありません。
現行法での扱い(2026年4月1日時点)
2020年4月施行の民法改正で、時効の「中断」は「完成猶予」と「更新」に改められました。催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は時効が完成しない(完成猶予)だけで(民法第150条第1項)、その間に裁判上の請求をすると、その手続が終わるまで時効の完成が猶予され、確定判決等によって権利が確定した時から新たに時効が進行します(更新。民法第147条)。現行法では、催告が到達した時に時効が「中断した」とはいえないため、選択肢2の記述は正しいとはいえず、本問の正解をそのまま当てはめることはできません。