令和元年度 管理業務主任者試験問題 問3
民法・その他の法令不法行為
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
解答・解説
正解: 3. 被害者に対する加害行為とその加害行為の前から存在した当該被害者の疾患がともに原因となり損害が発生した場合において、加害者にその損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、その加害行為の前から存在した当該被害者の疾患を考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
正解は 3 です。
不法行為における損害賠償請求において、被害者の素因(既往症や体質など)が損害の発生や拡大に寄与した場合、過失相殺の規定(民法722条2項)を類推適用して賠償額を減額できるかが問題となります。判例(最判平4.6.25)は、被害者に対する加害行為と、加害行為の前から存在した被害者の疾患がともに原因となって損害が発生した場合、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は民法722条2項の規定を類推適用し、被害者の疾患を考慮して損害賠償の額を定めることができるとしています。したがって、選択肢3は正しい記述です。
各選択肢の解説
- 1:誤り
不法行為によって生じた債権を受働債権とする相殺は、被害者に現実の弁済を受けさせるため、および報復的な不法行為の誘発を防ぐために禁止されています(民法509条)。しかし、これは加害者側からの相殺を禁止する趣旨であり、被害者側が自らの不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権として、加害者の反対債権と相殺することは妨げられません。 - 2:誤り
土地の工作物責任(民法717条1項)において、一次的に責任を負う占有者は、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは免責されます(過失責任)。しかし、占有者が免責された場合に二次的に責任を負う所有者は、無過失責任を負うため、必要な注意をしたときであっても損害賠償責任を免れることはできません。 - 3:正しい
上記の通り、判例は被害者の既往の疾患について過失相殺の類推適用を認めており、損害賠償額の算定にあたって疾患を考慮することができるとしています。 - 4:誤り
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合(非財産的損害、すなわち精神的損害に対する慰謝料)においても、損害の賠償をしなければなりません(民法711条)。したがって、被害者の父母は固有の慰謝料請求権を有します。