令和2年度 管理業務主任者試験 問4

マンションにおいて不法行為が発生した場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

解答・解説

正解: 3. マンション丙において、区分所有者Gが所有し、現に居住している専有部分に設置又は保存に瑕疵かしがあり、それにより他人に損害が発生した場合には、当該瑕疵が丙の建築工事を請負った施工会社Hの過失によるものであっても、Gは損害賠償責任を免れない。

正解は 3 です。

本問は、マンションにおいて発生した不法行為(注文者責任、不法行為に基づく損害賠償債務の履行遅滞、土地工作物責任、責任能力と監督義務者の責任)に関する民法・区分所有法の規定および判例の理解を問う問題です。

専有部分の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その専有部分の所有者は土地の工作物等の占有者及び所有者の責任(土地工作物責任)を負います(民法717条1項)。所有者の責任は無過失責任であるため、瑕疵が施工会社の過失によるものであっても、所有者Gは損害賠償責任を免れません(損害の原因について他に責任を負う者があるときは、Gは後に施工会社Hに対して求償権を行使することができます(民法717条3項))。

各選択肢の解説

  • 1:誤り
    請負人がその仕事について第三者に加えた損害については、注文者は、原則として賠償の責任を負いません(民法716条本文)。ただし、注文または指図についてその注文者に過失があったときは責任を負いますが(同条ただし書)、本肢では管理組合Aの注文または指図に過失があったとはされていないため、Aは損害賠償責任を負いません(施工会社Bが使用者責任(民法715条)、従業員Cが一般不法行為責任(民法709条)を負います)。
  • 2:誤り
    判例(最判昭37.9.4)によれば、不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者からの催告(請求)を待たず、損害発生と同時に(不法行為の時から)当然に履行遅滞となります。したがって、「請求した時点で履行遅滞になる」とする点が誤りです。
  • 3:正しい
    土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は被害者に対してその損害を賠償する責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません(民法717条1項)。区分所有者Gは専有部分の所有者かつ占有者であり、所有者の責任は無過失責任であるため、施工会社Hの過失による瑕疵であってもGは損害賠償責任を免れません。
  • 4:誤り
    未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いません(民法712条)。一般に責任能力が認められる年齢は12歳前後とされており、17歳の子Jには責任能力が認められます。したがって、被害者KはJ自身に対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求することができます(なお、責任能力がある場合、監督義務者Iは原則として民法714条の責任を負いませんが、監督義務者自身の過失と結果との間に相当因果関係が認められれば民法709条に基づき請求できる場合があります)。