平成28年度 管理業務主任者試験 問40
複合用途型の甲マンションにおいて、Aが区分所有する居住用の専有部分をBに、Cが区分所有する事務所用の専有部分をDに、それぞれが賃貸する契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、いずれの賃貸借契約も、定期建物賃貸借契約ではないものとする。
解答・解説
正解: 1. AB間の賃貸借契約において、一定期間賃料を増額しない旨の特約は有効である。
正解は 1 です。
借地借家法32条1項ただし書により、建物の借賃(賃料)について一定の期間増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うこととされており、この特約は有効です(賃借人にとって不利な特約ではないため、強行規定に反しません)。
各選択肢の解説
- 1:正しい
普通建物賃貸借契約において、一定期間賃料を増額しない旨の特約は、借地借家法32条1項ただし書により有効です。なお、反対に「一定期間賃料を減額しない旨の特約」は、賃借人に不利となるため無効となります(定期建物賃貸借契約を除く)。 - 2:誤り
賃貸借の目的物である建物が譲渡された場合、賃借人が建物の引渡しを受けて対抗要件(借地借家法31条1項)を備えていれば、賃貸人たる地位は賃借人の承諾(同意)を要することなく、当然に譲受人(新所有者)に移転します(出題当時は明文の規定が無く、判例による。最判昭和46年4月23日ほか)。 - 3:誤り
建物の賃貸人(A)による解約の申入れには正当事由が必要であり(借地借家法28条)、この規定に反して賃借人(B)に不利な特約は無効となります(同法30条)。したがって、「正当の事由の有無を問わず解約できる」とする特約のうち、賃貸人Aからの解約に関する部分は賃借人Bに不利であるため無効です。 - 4:誤り
借地借家法は「建物の賃貸借」に適用されます(同法1条)。居住用に限らず、事業用(事務所や店舗など)の建物賃貸借であっても、一時使用目的の賃貸借(同法40条)に該当しない限り借地借家法が適用されます。
現行法での扱い(2026年4月1日時点)
2020年4月施行の民法改正で、この判例の考え方が明文化されました。賃貸借の対抗要件を備えた不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転し(民法第605条の2第1項)、賃借人の承諾は要しません。ただし、譲受人が賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するには、所有権の移転の登記が必要です(同条第3項)。選択肢2が誤りであることに変わりはありません。