「制限行為能力」の過去問(権利関係・12問)
1. この分野は何か
年齢や精神上の障害などにより、自分ひとりで不利益なく契約等の判断をすることが難しい人を「制限行為能力者」と呼びます。本分野では、これらの方々を保護するため、一定の取引行為について保護者(法定代理人など)の同意を要求したり、単独で行った不当な契約を後から取消したりできるルールについて定めています。
2. 学習のポイント
制限行為能力者は、保護の必要性が高い順に「成年被後見人」「未成年者」「被保佐人」「被補助人」の4つに分類されます。学習の際は、以下の違いを比較表などで整理することが最も重要です。
- 保護者の権限の違い:保護者(親権者や後見人など)が、本人の代わりに契約を結ぶ「代理権」、本人の契約に賛成する「同意権」、後から契約をなかったことにする「取消権」、事後的に認める「追認権」をそれぞれ持っているかどうかが問われます。
- 特に注意すべきは「同意権」:成年被後見人の保護者(成年後見人)には、同意権がありません。なぜなら、成年被後見人は判断能力が常に欠けているため、同意を与えても一人で正しく契約を完了させることが難しいからです。したがって、成年後見人が同意を与えて本人が行った行為であっても、取り消すことができます。
3. 実際の出題のされ方
宅建試験ではほぼ毎年、問2〜3あたりで出題される定番分野です。令和5年(2023年)問8では未成年者の契約について、令和4年(2022年)問3では制限行為能力者全般の基本ルールについて問われました。
問題文では「制限行為能力者が単独で行った行為は有効か、取り消せるか」というストレートな問いが多く、さらに「相手方からの催告」に対する確答がない場合の扱い(追認とみなされるか、取消しとみなされるか)など、相手方保護のルールも頻出です。
4. 間違えやすいところ
日用品の購入
食料品の購入などの「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は、判断能力が常に欠けている成年被後見人であっても単独で行うことができ、取り消すことはできません(民法9条ただし書)。被保佐人についても、13条1項ただし書がこの9条ただし書を引いて同じ扱いにしています。被補助人の場合は、同意を要する行為として定められるのが13条1項の行為の一部に限られるため(17条1項ただし書)、結果として日常生活に関する行為はそこから外れます。
注意したいのは、未成年者にはこの例外規定がないことです(民法5条)。未成年者の日用品の購入が取り消せないのは、法定代理人が処分を許した財産(お小遣いなど)で買った場合(5条3項)といった別の理由によります。「制限行為能力者なら日用品はいつでも取り消せない」とまとめてしまうと、未成年者を絡めた選択肢で足をすくわれます。
営業を許された未成年者
親などの法定代理人から「一種又は数種の営業」を許された未成年者は、その営業に関する行為については成年者と同一の行為能力を有します。したがって、その営業に関する行為は親の同意がなくても有効であり、取り消すことはできません。
詐術(だまして契約した場合)
制限行為能力者が、自分が「行為能力者である」と相手方をだまして(詐術を用いて)契約した場合、その行為は取り消すことができなくなります(民法21条)。「私は成年者です」と偽るのは詐術の典型例です。
一方、制限行為能力者であることを黙っていただけでは、それだけで詐術にはあたりません。ただし判例は、黙秘であっても他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたと認められるときは詐術にあたるとしています(最判昭44.2.13)。「黙秘=常に詐術ではない」と覚えると誤りになります。
- 2023年度(R5) 問8 未成年者Aが、法定代理人Bの同意を得ずに、Cから甲建物を買い受ける契約(以下この問において「本件売買契約」という。)を締…
- 2022年度(R4) 問3 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2021(R3)12月 問3 成年後見人が、成年被後見人を代理して行う次に掲げる法律行為のうち、民法の規定によれば、家庭裁判所の許可を得なければ代理し…
- 2021(R3)10月 問5 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2016年度(H28) 問2 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2014年度(H26) 問9 後見人制度に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。…
- 2013年度(H25) 問2 未成年者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2010年度(H22) 問1 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。…
- 2008年度(H20) 問1 行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。…
- 2005年度(H17) 問1 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2003年度(H15) 問1 意思無能力者又は制限能力者に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいものはどれか。…
- 1990年度(H2) 問4 A所有の土地が, AからB, Bから善意無過失のCへと売り渡され, 移転登記もなされている。この場合, 民法の規定によれ…