IPA 技術経営・イノベーション — 頻出論点と過去問

頻出論点

1. この分野は何か

研究開発で生まれた技術やアイデアは、製品開発・事業化・市場への普及という段階を経て初めて企業の収益に結びつきます。研究の成果を実用化して事業として軌道に乗せるまでの過程には、段階ごとの障壁や市場浸透の壁が存在します。その壁を越えるために、社外の知恵や資金を取り込む仕組みや、将来の技術の見通しを立てる手法が使われています。

2. 実際の出題のされ方

新しい技術や製品が開発から市場への定着までにぶつかる壁と、新しい事業を起こす手法は、名前と定義を答えさせる形で問われます。たとえば、イノベータ理論の特定の消費者グループやグループ間の隔たりを表す用語、未来の目標時点から逆算して今の行動を考える手法、技術経営に直接の責任をもつ役職を、ITパスポートでは用語として選ばせています。技術ロードマップ・特許ポートフォリオ・ベンチャーキャピタルについて適切な記述を選ぶ問題と、仮説に基づく最小限の製品で検証を繰り返す手法の名前、特許などの知財の情報を経営の判断に使う取組の名前を選ぶ問題もあります。

用語の定義だけでなく、具体的な手法の特徴や段階の位置付けを区別させる問いも出されています。応用情報技術者の午前では、研究・開発・事業化・産業化の各段階の間にある障壁の名称を選ぶ問題や、イノベータ理論の5つの区分のうちどこにキャズムが存在するかを選ぶ問題が出題されました。あわせて、フィージビリティスタディ、バックキャスティング、オープンイノベーション、技術のSカーブの説明を選ぶ問題や、企業と大学との共同研究に関する記述を選ぶ問題も出されています。

手法の具体的なプロセスを問う問題や、事例への当てはめ、グラフを読み取らせる問題もあります。ITストラテジストの午前IIでは、デザイン思考のプロセスに関する説明を選ぶ問題や、4つの取り組みの中からプロダクトイノベーションの具体例を選ぶ問題、複数回のアンケートで予測の分布が収束していくグラフを示して技術予測の手法名を選ばせる問題が出題されました。また、ITストラテジストとエンベデッドシステムスペシャリストの午前IIでは、技術経営における死の谷などの障壁の意味を他の課題と区別させる問題も出ています。

3. 学習のポイント

研究開発から事業化に至る過程の壁と、事業化された製品が市場に広がる過程の壁は、生じる場所が別です。前者には段階の境目ごとに名前があり、開発に成功した製品を事業として成り立たせるまでの壁を死の谷と呼びます。後者の壁のうち、新しいもの好きの少数の客から、実績を確かめて買う多数の客へ移るところにある深い溝がキャズムです。

新規事業の進め方の手法は、いつ何を確かめるかに特徴があります。事業を始める前に成り立つかを調べ尽くすやり方もあれば、始めてから小さく試して直すやり方もあり、計画の起点を今に置くか将来に置くかによっても別の名前が付いています。

社外の力を借りる仕組みは、知恵や技術を持ち寄るのか、成長に必要なお金を出してもらうのかで、組む相手も、相手が受け取る見返りも別のものになります。

4. 間違えやすいところ

技術のSカーブの説明を選ぶ問題では、新技術に対する世の中の期待度の変化を黎明期や流行期、反動期などの段階に分けて表したものとする誤答肢がありました。新しい技術への世の中の期待が高まって冷め、やがて落ち着くまでを描いた曲線は、ハイプ・サイクルと呼ばれます。

似た課題が起きた際に素早く対処できるよう、過去の事例と解決法をデータベースに蓄えておく手法を、デザイン思考の説明とした誤答肢がありました。組織内の経験や知識を記録・共有して業務に再利用する仕組みはナレッジマネジメントの取り組みに当たります。

企業と大学との共同研究に関する記述を選ぶ問題では、企業側の要望を取り入れて共同研究そのものを行う組織として各大学にTLOが置かれているとする誤答肢がありました。TLO(技術移転機関)は大学の研究成果を特許化して企業へライセンス供与する仲介組織であり、研究活動を直接実施する機関ではありません。

特許ポートフォリオについて述べたものとして、特許を持つ複数の企業どうしが互いの権利の利用を認め合うこととする誤答肢がありました。権利者どうしで互いの特許技術を使う権利を認め合う取り決めはクロスライセンスに該当します。

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