「不法行為」の過去問(権利関係・21問)

1. この分野は何か

故意(わざと)または過失(不注意)によって他人の権利や利益を侵害し、損害を与えることを「不法行為」といいます。契約関係にない赤の他人同士で発生したトラブル(交通事故など)を解決し、被害者に損害賠償をさせるための基本ルールです。また、従業員が仕事中に起こした事故について会社が責任を負う「使用者責任」などの特殊ルールも学びます。

2. 学習のポイント

  • 損害賠償請求権の消滅時効:不法行為による損害賠償請求権は、原則として「被害者が損害および加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」で消滅時効にかかります。ただし、「人の生命・身体の侵害(ケガなど)」による損害賠償の場合は、被害者保護のため「知った時から5年」に延長されています(2020年民法改正)。
  • 過失相殺:被害者側にも不注意(過失)があった場合、裁判所は損害賠償の額を減らすことができます。債務不履行の場合は「過失相殺しなければならない(必要的)」ですが、不法行為の場合は「過失相殺することができる(任意的)」にとどまるという違いが重要です。
  • 使用者責任:従業員(被用者)が「事業の執行について」他人に損害を与えた場合、雇い主(使用者)も連帯して損害賠償責任を負います。被害者は、従業員と会社の両方に全額請求できます。会社が被害者に賠償した場合、会社は従業員に対して求償(立て替えた分を払えと請求)できますが、全額ではなく「信義則上相当と認められる限度」に限られます。

3. 実際の出題のされ方

宅建試験では頻出の分野です。「使用者責任(会社と従業員)」と「工作物責任(建物の欠陥)」の事例問題がよく出題されます。

「建物の壁が崩れて通行人がケガをした」という工作物責任のケースでは、まず占有者(借りている人)が責任を負いますが、占有者が「自分はしっかり管理していて過失がない」と証明できた場合は、所有者(貸主・大家)が責任を負います。そして、この所有者の責任は「無過失責任(過失がなくても絶対に責任を逃れられない)」である点がひっかけとしてよく出題されます。

4. 間違えやすいところ

胎児の権利能力
民法上、人は「生まれた時」から権利を持ちます。しかし、不法行為に基づく損害賠償請求(例えば、父親が交通事故で亡くなったことに対する慰謝料請求など)に関しては、胎児は「すでに生まれたものとみなす」という例外があり、権利を行使できます。

精神的苦痛(慰謝料)の請求
不法行為の損害賠償には、財産的損害だけでなく精神的苦痛に対する慰謝料も含まれます。他人の物を壊しただけでも、状況によっては慰謝料の請求が認められます。

相殺の禁止
「悪意(積極的に危害を加えようとする意図)による不法行為」や「人の生命・身体への不法行為」を行った加害者は、その損害賠償債務を「自分から相殺(受働債権として相殺)」することはできません。被害者から相殺を主張することは可能です。

  1. 2021(R3)10月 問8 Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵(かし)があったため、令和3年7月1日に甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした場合(…
  2. 2020(R2)12月 問1 不法行為(令和2年4月1日以降に行われたもの)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか…
  3. 2019年度(R1) 問4 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
  4. 2016年度(H28) 問7 AがBから賃借する甲建物に、運送会社Cに雇用されているDが居眠り運転するトラックが突っ込んで甲建物の一部が損壊した場合(…
  5. 2016年度(H28) 問9 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 契約の一方当事者が…
  6. 2014年度(H26) 問6 Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関する次の記述…
  7. 2014年度(H26) 問8 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
  8. 2013年度(H25) 問9 Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所…
  9. 2012年度(H24) 問9 Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いて…
  10. 2011年度(H23) 問 9 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、明らかに誤っているものはどれか。 (判決文) 売買の目的…
  11. 2008年度(H20) 問11 Aが故意又は過失によりBの権利を侵害し、これによってBに損害が生じた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれ…
  12. 2007年度(H19) 問5 不法行為による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
  13. 2006年度(H18) 問11 事業者Aが雇用している従業員Bが行った不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
  14. 2005年度(H17) 問11 Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後こ…
  15. 2002年度(H14) 問11 Aの被用者Bと, Cの被用者Dが, A及びCの事業の執行につき, 共同してEに対し不法行為をし, A, B, C及びDが…
  16. 2001年度(H13) 問10 甲建物の占有者である(所有者ではない。)Aは, 甲建物の壁が今にも剥離しそうであると分かっていたのに, 甲建物の所有者に…
  17. 2000年度(H12) 問8 Aが, その過失によってB所有の建物を取り壊し, Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のう…
  18. 1999年度(H11) 問9 Aの被用者Bが, Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし, CからAに対し損害賠償の請求がされた場合のA…
  19. 1996年度(H8) 問6 AがBとの請負契約によりBに建物を建築させてその所有者となり, その後Cに売却した。Cはこの建物をDに賃貸し, Dが建物…
  20. 1994年度(H6) 問7 Aは, 宅地建物取引業者Bに媒介を依頼して, 土地を買ったが, Bの社員Cの虚偽の説明によって, 損害を受けた。この場合…
  21. 1992年度(H4) 問9 不法行為に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいものはどれか。…