IPA 稼働率・信頼性指標 — 頻出論点と過去問

頻出論点

1. この分野は何か

どの装置もいつかは止まります。止まる頻度と直るまでの時間から、システムが使える状態にある時間の割合(稼働率)を数字で見積もり、構成どうしを比べる分野です。個々の装置の故障しにくさや復旧の速さを表す指標の意味と、複数の装置を直列や並列に組み合わせたときに全体の稼働率がどう変化するかの関係を押さえます。

2. 実際の出題のされ方

直列・並列の基本構成における稼働率の計算が、ITパスポートで出題されています。並列構成で目標の稼働率を満たすために最低限必要な装置の台数を求める問題や、並列のWebサーバ群と直列のデータベースサーバを組み合わせた構成の稼働率を計算する問題があります。

応用情報技術者の午前では、直列と並列を組み合わせた構成図の稼働率を比較したり、装置単体の稼働率 xx とシステム全体の稼働率の関係を表すグラフを選ばせたりする問題がよく出ます。また、MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修復時間)の定義や関係式 α=MTBF/(MTBF+MTTR)\alpha = \text{MTBF} / (\text{MTBF} + \text{MTTR}) の性質を問う問題、2台の装置のうち片方だけが稼働している確率の計算、アクティブスタンバイ構成で切替時間をシステムの停止時間とみなして稼働率を算出する問題も見られます。

より踏み込んだ信頼性指標の計算や変化の判定は、ITサービスマネージャやエンベデッドシステムスペシャリストの午前IIで問われます。MTBFとMTTRがともに同じ倍率になったときの稼働率の変化や、サブシステムを直列結合したときのシステム全体のMTBF・MTTRの組合せ、指数関数のグラフを用いた一定時間経過後の非故障台数の算出、与えられた定義式に基づく稼働品質率の比較が出題されています。

通信回線の冗長化や障害対策と指標の対応は、ネットワークスペシャリストやシステムアーキテクトの午前IIで出題されています。通信回線を二重化した際の追加回線の稼働率の逆算や、障害対策の施策がMTBFとMTTRのどちらの改善に寄与するかの判定が問われています。

バスタブ曲線の偶発故障期間の特徴を選ぶ問題は、ITストラテジストの午前IIで出ています。

3. 学習のポイント

直列接続と並列接続の稼働率の計算式は、システムが稼働するための条件から区別します。稼働率 R1,R2R_1, R_2 の装置2台を直列につないだ場合は、両方とも稼働している必要があるため R1×R2R_1 \times R_2 となります。並列につないだ場合は、少なくとも1台が稼働していればよいため、1から両方とも故障する確率を引いて 1−(1−R1)(1−R2)1 - (1 - R_1)(1 - R_2) で求めます。複合構成の大小比較やグラフ選択では、構成図のブロックごとに式を立てて全体の稼働率を xx の多項式で表し、x=0.5x = 0.5 や x=0.9x = 0.9 などの具体的な数値を代入して直線 y=xy = x より上にあるか下にあるかを確かめると確実です。

次に、MTBFとMTTRの意味と関係式を整理します。
稼働率=MTBFMTBF+MTTR\text{稼働率} = \frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF} + \text{MTTR}}
MTBFは修理を終えて動き出してから次に故障するまでの平均時間であり、故障やシステム停止そのものを起こりにくくする施策によって長くなります。一方、MTTRは故障発生から復旧までの平均修復時間であり、原因の特定や復旧の作業を速める施策によって短くなります。また、稼働率の式の逆数をとると MTTRMTBF=1α−1\frac{\text{MTTR}}{\text{MTBF}} = \frac{1}{\alpha} - 1 と変形できるため、稼働率 α\alpha はMTBFとMTTRの比だけで決まります。MTBFとMTTRに同じ数を掛けても、分母と分子で約分されて稼働率は変わりません。

さらに、条件付きのモデル計算を押さえておきます。

  • アクティブスタンバイ構成(二重障害なし): 現用系が故障しても待機系へ切り替わる間だけシステムが止まるため、システム全体の停止時間はサーバ単体のMTTRではなく「フェールオーバーに要する時間」として稼働率を計算します。
  • 直列結合システムのMTBFとMTTR: 同じ装置を直列につなぐと、どれか1つが故障すれば全体が止まるので、故障の回数は台数分に増え、全体のMTBFは短くなります。同時に故障しない前提なら、1回の停止で直す装置は1台なので、MTTRは1台のときと変わりません。
  • バスタブ曲線と指数分布: 機器の故障率は、導入直後に高く次第に下がる「初期故障期間」、時間によらずほぼ一定となる「偶発故障期間」、経年劣化で再び増加する「摩耗故障期間」の3つに分けられます。偶発故障期間のように故障発生率 λ\lambda(回/秒)が一定のとき、稼働時間 tt(秒)の単位を揃えて λt\lambda t を求めれば、信頼度関数 exp⁡(−λt)\exp(-\lambda t) から故障せずに残る割合を読み取ることができます。

4. 間違えやすいところ

定義や式の形に関するひっかけとして、MTBFとMTTRの役割を入れ替えた選択肢や、無意味な差の式を作る選択肢があります。実際の問題では「MTTR は, システムの故障が回復した時点から次に故障が起きるまでの平均時間を表す」と逆の説明をしたり、「MTBF−MTTRMTBF - MTTR は, システムが正常であった時間を表す」としたりする誤答肢が出ています。また、MTBFとMTTRがともに同じ倍率になったときに、その倍率を稼働率にも掛けてしまう選択肢や、その2乗にする選択肢があります。

施策と指標の対応では、システムを止めない仕組みと早く復旧させる仕組みの混同に注意が必要です。たとえば、フォールトマスクをMTTRを縮める施策とする誤答肢がありますが、障害の影響を隠して稼働を続けさせるフォールトマスクはMTBFの向上に寄与します。逆に、再試行(リトライ)についてMTBFの向上だけでなくMTTRの短縮にもつながるとする誤答肢もありますが、再試行は一時的なエラーによる停止を防ぐものであり修理時間を縮めるものではありません。

確率や構成の計算では、求められている事象や部分計算の取り違えに気をつけます。

  • Webサーバ2台(並列)とDBサーバ1台(直列)の構成で、並列部分だけの稼働率や、すべてを直列として掛け合わせた値が選択肢にあります。
  • 2台の装置のうち「いずれか一方が稼働していて,他方が故障している確率」を求める問題では、Aが稼働・Bが故障のケースと、Aが故障・Bが稼働のケースの2つを足し合わせる必要がありますが、片方のケースだけを計算した値や両方稼働する確率が誤答肢として並んでいます。

稼働率・信頼性指標の理解度チェック

稼働率・信頼性指標の過去問一覧

稼働率・信頼性指標の用語

システム構成のほかの論点

信頼性設計の考え方24問 システム構成方式・冗長化28問 性能評価・キャパシティ32問