「債権総論」の過去問(権利関係・43問)
1. この分野は何か
人と人との間の約束(契約など)によって生じる、「ある人が特定の人に対して一定の行為を要求する権利」を債権といいます(要求される側の義務を債務といいます)。本分野では、約束が守られなかった場合(債務不履行)のペナルティや、複数の人で一緒に借金を背負う場合(連帯債務)、お互いの借金を帳消しにする方法(相殺)、債権を他人に譲り渡す方法(債権譲渡)などを学びます。
2. 学習のポイント
- 債務不履行の2つのパターン:約束の期日に遅れる「履行遅滞」と、約束を果たすことが不可能になる「履行不能」があります。どちらの場合も、債権者は損害賠償を請求したり、契約を解除したりすることができます。
- 連帯債務の絶対効と相対効:連帯債務者の一人に生じた事由(例えば、A・B・Cの連帯債務で、Aが借金を全額返済した等)が、他の連帯債務者にも影響を及ぼす場合(絶対効)と、影響を及ぼさず他の人は引き続き責任を負う場合(相対効)を区別して覚えることが重要です。2020年の民法改正で「絶対効」となる事由が大幅に減りました(相殺、更改、混同、弁済など)。
- 相殺の要件と禁止:お互いが同種の債権(お金など)を持っており、少なくとも自分から相手に請求する側の債権(自働債権)の支払時期がきている(弁済期にある)場合に相殺が可能です。自分が払う側の債権(受働債権)は、期限の利益を放棄して先に払ってしまえばよいので、弁済期が来ていなくても相殺できます(民法505条1項・136条2項)。「双方の弁済期の到来が必要」と覚えると誤ります。ただし、悪意による不法行為の損害賠償債権など、相殺が禁止されているケースを覚える必要があります。
3. 実際の出題のされ方
宅建試験では、債務不履行、連帯債務、保証、債権譲渡、相殺の中から、毎年2問程度が出題されます。特に連帯債務と保証(連帯保証)の違いを問う問題や、相殺ができるかできないかを判断させる事例問題が頻出です。
「AはBに対して100万円の債権を有しており、BもAに対して100万円の債権を有している。Aから相殺できるか?」といった事例で、どちらの債権が不法行為によるものか、どちらが時効にかかっているか等で結論が変わる論点がよく狙われます。
4. 間違えやすいところ
債務不履行による損害賠償(帰責事由)
債務不履行によって損害賠償を請求するためには、原則として「債務者の責めに帰すべき事由(故意や過失など)」が必要です。不可抗力で履行不能になった場合は損害賠償請求はできません。(※ただし、金銭債務の場合は不可抗力であっても免責されず、常に損害賠償責任を負います)
相殺の「自働債権」と「受働債権」
相殺の問題を解く際は、相殺を「する側」の債権を自働債権、相殺を「される側」の債権を受働債権といいます。
「悪意による不法行為に基づく損害賠償債権」は、被害者保護のため「受働債権」として相殺することは禁止されています(加害者から「慰謝料の代わりに俺の借金をチャラにしろ」とは言えない)。しかし、被害者の方から「自働債権」として相殺することは可能です(被害者が「慰謝料をもらう代わりに私がそっちに借りてるお金をチャラにする」と言うのは自由)。
- 2025年度(R7) 問4 AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)にお…
- 2024年度(R6) 問5 履行遅滞に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2024年度(R6) 問9 承諾に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。…
- 2023年度(R5) 問4 AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している場合において、民法の規定及び…
- 2021(R3)10月 問6 売買代金債権(以下この問において「債権」という。)の譲渡(令和3年7月1日に譲渡契約が行われたもの)に関する次の記述のう…
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- 2020(R2)12月 問4 債務不履行に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、債務は令和2年4月1日以降に…
- 2019年度(R1) 問 7 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された場合におけるBのAに対する代金債務(以下「本件代金債務」という。)に…
- 2018年度(H30) 問7 債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2018年度(H30) 問 9 Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約…
- 2016年度(H28) 問1 次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。…
- 2016年度(H28) 問5 Aが、Bに対する債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2015年度(H27) 問1 次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。…
- 2014年度(H26) 問1 次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。…
- 2014年度(H26) 問5 債権譲渡に関する次の1から4までの記述のうち、下記判決文によれば、正しいものはどれか。 (判決文) 民法は、原則として債…
- 2013年度(H25) 問6 A銀行のBに対する貸付債権1,500万円につき、CがBの委託を受けて全額について連帯保証をし、D及びEは物上保証人として…
- 2012年度(H24) 問8 債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2011年度(H23) 問5 AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合における次の記述のうち、民法の規定…
- 2011年度(H23) 問6 Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しい…
- 2010年度(H22) 問6 両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務の不履行によって生ずる損害賠償請求権に関する次の記述の…
- 2010年度(H22) 問 7 民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の…
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- 2008年度(H20) 問8 弁済に関する次の1から4までの記述のうち、判決文及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 借地上の建…
- 2007年度(H19) 問9 債権の譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2006年度(H18) 問8 AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、…
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- 2004年度(H16) 問4 共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について, 平成16年9月1日に売買代金3,000万円(うち, 手付金20…
- 2004年度(H16) 問8 Aは, B所有の建物を賃借し, 毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し…
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- 2002年度(H14) 問7 AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって, AがBに対して, 損害賠償請求をする場合に関する次の記述…
- 2000年度(H12) 問6 Aが, Bに対して有する金銭債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っているもの…
- 2000年度(H12) 問9 Aが, Bに対する金銭債務について, 代物弁済をする場合に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいも…
- 1999年度(H11) 問5 Aが, Bに対して不動産を売却し, 所有権移転登記及び引渡しをした場合のBの代金の弁済に関する次の記述のうち, 民法の規…
- 1997年度(H9) 問5 Aが, AのBに対する金銭債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っているものは…
- 1997年度(H9) 問7 不当利得に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいものはどれか。…
- 1995年度(H7) 問5 債権者代位権に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っているものはどれか。…
- 1995年度(H7) 問8 AがBに対して100万円の金銭債権, BがAに対して100万円の同種の債権を有する場合の相殺(AB間に特約はないものとす…
- 1994年度(H6) 問5 AのBに対する債務について、CがAの連帯保証人となるとともに、Aの所有地にBの抵当権を設定し、その登記をしたが、その後A…
- 1993年度(H5) 問5 AがBからBのCに対する貸金債権の譲渡を受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはど…
- 1993年度(H5) 問6 AのBからの借入金100万円の弁済に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 1991年度(H3) 問9 AのBに対する貸金に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っているものはどれか。…
- 1990年度(H2) 問2 債務不履行による損害賠償に関する次の記述のうち, 民法の規定によれば, 誤っているものはどれか。…
- 1990年度(H2) 問3 AのBに対する貸金(返済の時期は定めていない。)に関する次の記述のうち, 民法の規定によれば, 誤っているものはどれか。…